2012年12月26日水曜日

アリハチのミュラー型擬態

毒を持つ動物同士がお互いに似た姿になった形の擬態をミュラー型擬態と呼びます。一方、無毒の種が有毒の種に擬態する場合はベイツ型擬態と呼ばれます。捕食者がより速く学習して、その種を忌避するようになることが、ミュラー型擬態のメリットです。

Repeated evolution in overlapping mimicry rings among North American velvet ants
Wilson JS, Williams KA, Forister ML, von Dohlen CD, Pitts JP.
Nat Commun. 2012 Dec 11;3:1272. doi: 10.1038/ncomms2275.
PMID: 23232402 [PubMed - in process]

この論文では北米産のアリハチの仲間を解析し、65種ものDasymutilla属のアリハチ類が6つの互いに形態のよく似たグループに分けられる事、この形態の類似性が並行進化した事を明らかにしています。ちなみにアリハチ類はアリとは異なり針を持っています。

2012年12月24日月曜日

2種類のウイルスの協調

RNAウイルスは、RNA polymeraseの複製の際の高いエラー率により、速く進化します。麻疹ウイルスはエンベロープタンパク質をコードするRNAウイルスです。エンベロープタンパク質はウイルス粒子の外側の膜と細胞膜とを融合させ、ウイルスを細胞内に侵入させる役割を持っています。

Cooperation between different RNA virus genomes produces a new phenotype
Shirogane Y, Watanabe S, Yanagi Y.
Nat Commun. 2012 Dec 4;3:1235. doi: 10.1038/ncomms2252.
PMID: 23212364 [PubMed - in process]

組換えによりエンベロープタンパク質の機能を破壊した麻疹ウイルスをしばらく継代するとやがて膜融合の機能を回復した変異ウイルスが自然に発生しました。意外な事に、これらの変異ウイルスは2つのRNAを同じウイルス粒子中に含んでいました。1つは野生型のエンベロープタンパク質を持ち、もう一つはタンパク質の機能を破壊されたエンベロープタンパク質をコードしていました。それぞれ単独では細胞膜を融合させることができないものの、2つ同時だと効率よく膜融合を起こす事ができました。これは別種のウイルスの協調と呼べる現象で、もしかするとウイルスの進化において重要な役割を果たして来たのかもしれません。

2012年12月22日土曜日

ディアトリマ

新生代初期の恐鳥類ディアトリマが実は草食性だったかも?という話。

Giant Flightless Bird Was Probably Vegetarian

2012年12月21日金曜日

Onychodictyon ferox

lobopodと呼ばれる、葉状肢を持つ生物群は、節足動物の姉妹群、祖先群と考えられており、進化を考える上で重要な研究対象です。この論文では、新種のカンブリア紀のlobopod、Onychodictyon feroxの詳細な頭部構造を報告しています。節足動物やその近縁群の進化では、頭部の附属肢や顎の構造が相同かどうかが大きな焦点となっています。

Cambrian lobopodians and extant onychophorans provide new insights into early cephalization in Panarthropoda
Ou Q, Shu D, Mayer G.
Nat Commun. 2012 Dec 11;3:1261. doi: 10.1038/ncomms2272.
PMID: 23232391 [PubMed - in process]

2012年12月18日火曜日

二次共生藻の核ゲノム

二次共生藻類とは一次共生により成立した真核藻類(緑藻、紅藻、灰色藻)が更に別の真核生物の細胞内に共生して成立した藻類のことです。二次共生藻類の内の2グループ、クリプト藻とクロララクニオン藻は二次共生の際に細胞内共生した藻類の核nucleomorphが1Mb以下と非常に小さいながらも残っています。

Algal genomes reveal evolutionary mosaicism and the fate of nucleomorphs
Curtis BA, Tanifuji G, Burki F, Gruber A, Irimia M, Maruyama S, Arias MC, Ball SG, Gile GH, Hirakawa Y, Hopkins JF, Kuo A, Rensing SA, Schmutz J, Symeonidi A, Elias M, Eveleigh RJ, Herman EK, Klute MJ, Nakayama T, Oborník M, Reyes-Prieto A, Armbrust EV, Aves SJ, Beiko RG, Coutinho P, Dacks JB, Durnford DG, Fast NM, Green BR, Grisdale CJ, Hempel F, Henrissat B, Höppner MP, Ishida K, Kim E, Kořený L, Kroth PG, Liu Y, Malik SB, Maier UG, McRose D, Mock T, Neilson JA, Onodera NT, Poole AM, Pritham EJ, Richards TA, Rocap G, Roy SW, Sarai C, Schaack S, Shirato S, Slamovits CH, Spencer DF, Suzuki S, Worden AZ, Zauner S, Barry K, Bell C, Bharti AK, Crow JA, Grimwood J, Kramer R, Lindquist E, Lucas S, Salamov A, McFadden GI, Lane CE, Keeling PJ, Gray MW, Grigoriev IV, Archibald JM.
Nature. 2012 Dec 6;492(7427):59-65. doi: 10.1038/nature11681. Epub 2012 Nov 28.
PMID: 23201678 [PubMed - in process]

この論文では、クリプト藻のGuillardia thetaとクロララクニオン藻のBigelowiella natansの各ゲノムを報告しています。細胞内輸送システムは非常に複雑で、核由来、nucleomorph由来、の両方の遺伝子が混ざり合ってミトコンドリア、細胞質、色素体、共生藻の細胞質への輸送をコントロールしています。また、ミトコンドリアから核への遺伝子移行はまだ起こっていますが、色素体から核、nucleomorphから核への遺伝子移行は起こっておらず、これがまだnucleomorphが残っていることの説明になりそうです。

2012年12月17日月曜日

ヒタキの種分化をゲノムレベルで解析

遂に種分化をゲノムレベルで解析できる時代が来たようです。

以下の論文では、2種のヒタキ類collared flycatcher Ficedula albicollisとpied flycatcher
Ficedula hypoleucaのゲノムを読んで、種分化の過程を考察しています。

The genomic landscape of species divergence in Ficedula flycatchers
Ellegren H, Smeds L, Burri R, Olason PI, Backström N, Kawakami T, Künstner A, Mäkinen H, Nadachowska-Brzyska K, Qvarnström A, Uebbing S, Wolf JB.
Nature. 2012 Nov 29;491(7426):756-60. doi: 10.1038/nature11584. Epub 2012 Oct 24.
PMID: 23103876 [PubMed - in process]

2012年12月10日月曜日

レトロウイルスの復活

Resurrection of endogenous retroviruses in antibody-deficient mice
Young GR, Eksmond U, Salcedo R, Alexopoulou L, Stoye JP, Kassiotis G.
Nature. 2012 Nov 29;491(7426):774-8. doi: 10.1038/nature11599. Epub 2012 Oct 24.
PMID: 23103862 [PubMed - in process]

マウスの系統C57BL/6 (B6)のゲノムには複製可能な内在性murine leukaemia viruses (MLVs)は存在しない。しかし、抗体産生に欠陥のあるマウスでは、組換えにより偶然複製可能なMLVが出現することが明らかになった。更にはこのMLVはマウスにリンパ腫も引き起こす。このMLVの組換えによる活性化は、腸内細菌を減らしたり無くしたりすることで抑制できる。つまり、腸内細菌とマウスとの相互作用が刺激となって、細胞内で壊れたMLV同士の組み換えが誘発され、結果として癌を引き起こすという関係が示唆されている。

ちなみに、
MLVはガンマレトロウイルスに属しており、ガンマレトロウイルスが内在化したものはendogenous retrovirus 1 (ERV1)と呼ばれています。

2012年12月7日金曜日

大麦小麦

パンコムギ(Triticum aestivum)とオオムギ(Hordeum vulgare)のゲノムがNatureに報告されています。コムギオオムギともにゲノムサイズが大きく、重要な作物でありながらゲノム解析が遅れていました。オオムギのゲノムサイズは半数体あたり5.1GBだそうです。オオムギのゲノムの8割はなんらかの反復配列で構成されています。その3/4はLTRレトロトランスポゾンとのこと。オオムギは2倍体ですが、コムギは過去の交雑により似た染色体が6本ずつ存在する疑似6倍体で合計サイズはなんと17GB。やはりゲノムの8割程度が反復配列だそうです。

Analysis of the bread wheat genome using whole-genome shotgun sequencing
Brenchley R, Spannagl M, Pfeifer M, Barker GL, D'Amore R, Allen AM, McKenzie N, Kramer M, Kerhornou A, Bolser D, Kay S, Waite D, Trick M, Bancroft I, Gu Y, Huo N, Luo MC, Sehgal S, Gill B, Kianian S, Anderson O, Kersey P, Dvorak J, McCombie WR, Hall A, Mayer KF, Edwards KJ, Bevan MW, Hall N.
Nature. 2012 Nov 29;491(7426):705-10. doi: 10.1038/nature11650.
PMID: 23192148 [PubMed - in process]


A physical, genetic and functional sequence assembly of the barley genome
International Barley Genome Sequencing Consortium, Mayer KF, Waugh R, Brown JW, Schulman A, Langridge P, Platzer M, Fincher GB, Muehlbauer GJ, Sato K, Close TJ, Wise RP, Stein N.
Nature. 2012 Nov 29;491(7426):711-6. doi: 10.1038/nature11543. Epub 2012 Oct 17.
PMID: 23075845 [PubMed - in process]

2012年12月5日水曜日

CpG decayによる転写因子結合配列の形成

CpGはシトシンメチル化を受けている事が多いため、CからTへの置換を起こしやすいことが知られています。これはCpG decayと呼ばれ、ヒトでは最も多い塩基置換です。この論文の著者らは以前AluにCpG decayが起こる事でp53結合配列ができる事を報告しています.以下の論文では、Oct4、NANOG、c-Mycが結合するプロモーター領域では、CpG decayにより結合配列が作られる場合が他の置換に比べてはるかに多い事を示しています。

CpG deamination creates transcription factor-binding sites with high efficiency.
Zemojtel T, Kielbasa SM, Arndt PF, Behrens S, Bourque G, Vingron M.
Genome Biol Evol. 2011;3:1304-11. Epub 2011 Oct 19.
PMID: 22016335 [PubMed - indexed for MEDLINE] Free PMC Article

2012年12月4日火曜日

論文のインパクトと投稿過程

生物学系の923の雑誌で投稿、掲載と論文のインパクトの関係を調べた研究がScienceに掲載されました。これによると、75%の論文は最初に投稿された雑誌に掲載されている一方で、インパクトの高いジャーナルに出版される論文は他の雑誌に最初に投稿された論文が比較的多いことがわかりました。また、最初に投稿した雑誌と違う雑誌に再投稿された論文は、最初に投稿した雑誌に掲載された論文に比べてより引用回数が多い傾向があり、異なる雑誌コミュニティー(?)に再投稿された論文は逆に引用数が少ない傾向があったそうです。

査読にしっかり対応している論文は質が高くなる事を示しているようです。

Flows of Research Manuscripts Among Scientific Journals Reveal Hidden Submission Patterns.
Calcagno V, Demoinet E, Gollner K, Guidi L, Ruths D, de Mazancourt C.
Science. 2012 Nov 23;338(6110):1065-9. doi: 10.1126/science.1227833. Epub 2012 Oct 11.
PMID: 23065906 [PubMed - in process]

2012年12月3日月曜日

Mendeley

5年以上にわたってiPapersを愛用してきたのですが、ウェブ検索が壊れてしまったのを機に、別の文献管理ソフトを試してみる事にしました.少しウェブサーチをして見つけて来たのが以下のMendeleyです。

Mendeley

インストールは簡単.ダウンロードしてドラッグアンドドロップでApplication folderに移動。以上。

まず、これまで使っていたiPapersに入れてあった論文を取り込みました。EndNoteなどと違い専用の取り込み手段はiPapers用には用意されていないようだったので、iPapers/iPapers paper/PubMedフォルダ内のファイルを全選択して取り込んでみました。1663件。

まず、昔の論文はうまく情報を拾えないようです。特にスキャンしただけの古い論文(1980年代のNucleic Acids Resなど)は取り込めていません。Journal of Bacteriology, Journal of Virology, Molecular and Cellular Biologyなどは情報が自動では取り込めず、PubMed IDを個別に入力して情報を取ってくる必要があります。

2012年11月30日金曜日

逆向きAluは翻訳効率を低下させる

Inverted Alu dsRNA structures do not affect localization but can alter translation efficiency of human mRNAs independent of RNA editing
Capshew CR, Dusenbury KL, Hundley HA.
Nucleic Acids Res. 2012 Sep 1;40(17):8637-45. Epub 2012 Jun 25.
PMID: 22735697 [PubMed - in process] Free PMC Article

ヒトのSINEとして最も多く存在するAluのかなりの割合はmRNAの一部として転写される。そのため、逆向きのAluがmRNA上で二本鎖を形成する例はおそらく大量に存在すると考えられる。この論文は、このような逆向きAluが二本鎖を形成しているmRNAの翻訳効率は低下するが、それはイノシンの有無とは無関係であることを報告している。イノシンは二本鎖RNA中のアデニンをAdenosine deaminases acting on RNA (ADARs)が脱アミノ化する現象(RNA editing)によりできる。

2012年11月29日木曜日

バクテリオファージの転移酵素MuAの結晶構造

バクテリオファージMuのコードする転移酵素MuAとバクテリオファージのDNA、標的となるDNAの結合した状態での結晶構造が報告されています。結晶構造なので論文の詳細を見ないと詳しい事はわかりませんが、要約では、構造の知られている他の転移酵素との比較から、転移酵素に共通する特徴であるトランスに触媒する機構や標的DNAを曲げるなどの特徴は並行進化によるものであることが示唆されたとされています。

The Mu transpososome structure sheds light on DDE recombinase evolution
Montaño SP, Pigli YZ, Rice PA.
Nature. 2012 Nov 15;491(7424):413-7. doi: 10.1038/nature11602. Epub 2012 Nov 7.
PMID: 23135398 [PubMed - in process]

2012年11月28日水曜日

鱗翅目昆虫間でのMarinerの水平伝播

DNA配列の種間移動は水平伝播と呼ばれ、真核生物ではそのほとんどは転移因子の配列です。しかし転移因子の中でも種類によって水平伝播の頻度には大きな違いがあり、non-LTR retrotransposonでは報告そのものが非常に少ない状況です。実際古い報告例の多くは実際には水平伝播ではなく、パラログに相当する関係を誤解したものです。
この論文の著者のグループは以前non-LTR retrotransposonの一種CR1が、カイコBombyx moriとシジミチョウのMaculineaのそう古くない祖先同士で水平伝播したと報告しています。この論文では、同じ2種を解析し、DNA transposonのMarinerが同様に水平伝播している事を示しています。著者らの目的はDNA transposonがnon-LTR retrotransposonを水平伝播させるベクターとして働いているという仮説を証明する事なので、この論文はその第1歩ということになります。

Vertical Evolution and Horizontal Transfer of CR1 Non-LTR Retrotransposons and Tc1/mariner DNA Transposons in Lepidoptera Species
Sormacheva I, Smyshlyaev G, Mayorov V, Blinov A, Novikov A, Novikova O.
Mol Biol Evol. 2012 Dec;29(12):3685-702. doi: 10.1093/molbev/mss181. Epub 2012 Jul 23.
PMID: 22826456 [PubMed - in process]

2012年11月27日火曜日

鳥類の多様化

Natureに鳥類の多様化を時空間的に解析した論文が載っていました。

The global diversity of birds in space and time
Jetz W, Thomas GH, Joy JB, Hartmann K, Mooers AO.
Nature. 2012 Nov 15;491(7424):444-8. doi: 10.1038/nature11631. Epub 2012 Oct 31.
PMID: 23123857 [PubMed - in process]

約5000万年前から現在にかけて鳥類は多様化の度合いを増加させている。これは鳴禽類、水鳥、カモメ、キツツキなどのグループが多様化してきていることによる。過去においては様々な鳥類の系統で急速な多様化が見られる。地理的には緯度の差は重要ではなく、大陸によって異なった多様化の度合いを示す。

2012年11月26日月曜日

フタコブラクダのゲノム

ユーラシア大陸産のラクダの仲間、フタコブラクダのゲノムが報告されました。ラクダの仲間では、他に南米産のリャマのゲノムが読まれています。ラクダの仲間は、鯨偶蹄類の中では最も早くに分岐したと考えられるグループで、鯨偶蹄類はその後、ブタの仲間、クジラとカバの仲間、そして最後にウシの仲間が分岐したと考えられています。その分岐時期は5500−6000万年前と推測されました。速く進化している遺伝子には、代謝系の遺伝子が多く見られ、この種の乾燥や絶食への強い耐性との関係がありそうです。反復配列については、他の哺乳類と同様の傾向を示しています。

Genome sequences of wild and domestic bactrian camels
The Bactrian Camels Genome Sequencing and Analysis Consortium, Jirimutu, Wang Z, Ding G, Chen G, Sun Y, Sun Z, Zhang H, Wang L, Hasi S, Zhang Y, Li J, Shi Y, Xu Z, He C, Yu S, Li S, Zhang W, Batmunkh M, Ts B, Narenbatu, Unierhu, Bat-Ireedui S, Gao H, Baysgalan B, Li Q, Jia Z, Turigenbayila, Subudenggerile, Narenmanduhu, Wang Z, Wang J, Pan L, Chen Y, Ganerdene Y, Dabxilt, Erdemt, Altansha, Altansukh, Liu T, Cao M, Aruuntsever, Bayart, Hosblig, He F, Zha-Ti A, Zheng G, Qiu F, Sun Z, Zhao L, Zhao W, Liu B, Li C, Chen Y, Tang X, Guo C, Liu W, Ming L, Temuulen, Cui A, Li Y, Gao J, Li J, Wurentaodi, Niu S, Sun T, Zhai Z, Zhang M, Chen C, Baldan T, Bayaer T, Li Y, Meng H.
Nat Commun. 2012 Nov 13;3:1202. doi: 10.1038/ncomms2192.
PMID: 23149746 [PubMed - as supplied by publisher]

2012年11月20日火曜日

ブタゲノム

ブタのゲノムが解読されました。これによるとブタでは免疫系と嗅覚系で進化が早く、特に嗅覚受容体の数は知られている中で最多だそうです。この嗅覚受容体がトリュフを見つけるのに役立っているんですね。

Analyses of pig genomes provide insight into porcine demography and evolution

2012年11月19日月曜日

Aluの挿入によるテナガザルの系統解析

テナガザル類は小型類人猿とも呼ばれ、我々大型類人猿(ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン)の姉妹群にあたります。テナガザル類は600から1000万年前に急速に分化したため、系統関係が未だ曖昧なままでした。現在、テナガザル類は4属に分類されています。SymphalangusHylobatesNomascusHoolockです。以下の論文では、SINEの1種Aluの挿入を指標にした系統解析によって、Symphalangusが最も早くに分岐し、その次にHylobates、最後にNomascusHoolockが分岐した事が示されています。

An Alu-Based Phylogeny of Gibbons (Hylobatidae)
Meyer TJ, McLain AT, Oldenburg JM, Faulk C, Bourgeois MG, Conlin EM, Mootnick AR, de Jong PJ, Roos C, Carbone L, Batzer MA.
Mol Biol Evol. 2012 Nov;29(11):3441-50. doi: 10.1093/molbev/mss149. Epub 2012 Jun 7.
PMID: 22683814 [PubMed - in process]

2012年11月16日金曜日

ES細胞/iPS細胞から卵子

ES細胞/iPS細胞から精子を作る方法は既に報告されていると記憶していますが、今回卵子を作る事にも成功したそうです。

Offspring from Oocytes Derived from in Vitro Primordial Germ Cell–Like Cells in Mice
Hayashi K, Ogushi S, Kurimoto K, Shimamoto S, Ohta H, Saitou M.
Science. 2012 Oct 4. [Epub ahead of print]

マウスの雌由来のES細胞あるいはiPS細胞から始原生殖細胞を作り、雌の生殖器の体細胞と混ぜ合わせると、X染色体不活化、インプリントの消去、シストの形成が見られた。これをマウスの卵巣の位置に移植すると、卵子が形成された。この卵子を体外で成熟させ、体外受精して次世代を作る事に成功した。

2012年11月15日木曜日

Repbase Reports 12 (11)

Repbase Reportsの今年第11号が出版されました。今号では、真菌類のBlumeria graminisの転移因子および反復配列を報告しています。

Repbase Reports Volume 12, Issue 11

Repbase ReportsはGIRIが発行している、真核生物の反復配列を報告するオンラインの科学雑誌です。配列、分類と簡単な特徴の報告だけですが、反復配列の一次情報源として論文でも引用されています。Repbase Reportsに掲載された配列は、反復配列データベースであるRepbase Updateに収録され、配布されます。学術研究者はユーザー登録することでどちらも無料で閲覧できます。

2012年11月14日水曜日

寄生植物のゲノム

ハマウツボ科はキクに比較的近縁な双子葉植物で、ナンバンギセルなど全て寄生性の植物からなる分類群です。ハマウツボの仲間数種のゲノム解読から、寄生植物のゲノムは寄生でない近縁な植物に比べて、反復配列の割合が多い事がわかったそうです。

Next-generation sequencing reveals the impact of repetitive DNA across phylogenetically closely related genomes of orobanchaceae.
Piednoël M, Aberer AJ, Schneeweiss GM, Macas J, Novak P, Gundlach H, Temsch EM, Renner SS.
Mol Biol Evol. 2012 Nov;29(11):3601-11. doi: 10.1093/molbev/mss168. Epub 2012 Jun 21.
PMID: 22723303 [PubMed - in process]

2012年11月12日月曜日

Babesia microtiのゲノム

Babesia microtiのゲノム配列が、寄生性のApicomplexaとしては最小の核ゲノムとして報告されています。Apicomplexaはマラリア原虫(Plasmodium)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)などの寄生性の単細胞生物を含む生物群です。

Sequencing of the smallest Apicomplexan genome from the human pathogen Babesia microti
Cornillot E, Hadj-Kaddour K, Dassouli A, Noel B, Ranwez V, Vacherie B, Augagneur Y, Brès V, Duclos A, Randazzo S, Carcy B, Debierre-Grockiego F, Delbecq S, Moubri-Ménage K, Shams-Eldin H, Usmani-Brown S, Bringaud F, Wincker P, Vivarès CP, Schwarz RT, Schetters TP, Krause PJ, Gorenflot A, Berry V, Barbe V, Ben Mamoun C.
Nucleic Acids Res. 2012 Oct 1;40(18):9102-9114. Epub 2012 Jul 24.
PMID: 22833609 [PubMed - as supplied by publisher] Free PMC Article

染色体は3本でゲノムサイズは6.5MB。Apicomplexaとしては例外的に、ミトコンドリアゲノムは環状だそうです。

2012年11月7日水曜日

肺魚のnon-LTR retrotransposon

陸上脊椎動物とシーラカンス、肺魚の3グループの系統関係についてはまだ明確な結論は出ていません。また肺魚はある種のサンショウウオと並んで最も巨大なゲノムを持つ脊椎動物であり、その点でも興味深い生物です。以下の論文では、ゲノムサイズに主題をおいて、オーストラリア産肺魚ゲノムの転移因子を解析しています。

Evolution of the Australian Lungfish (Neoceratodus forsteri) Genome: A Major Role for CR1 and L2 LINE Elements
Metcalfe CJ, Filée J, Germon I, Joss J, Casane D.
Mol Biol Evol. 2012 Nov;29(11):3529-39. doi: 10.1093/molbev/mss159. Epub 2012 Jun 24.
PMID: 22734051 [PubMed - in process]

ゲノムライブラリーを作って反復配列を解析したところ、ゲノムの4割程度が反復配列であろうと推測された。その多くはCR1とL2の2グループのnon-LTR retrotransposonであった。CR1は最近増幅されたと見られ、一方L2はもっと古くに増幅の時期があったことがわかった。著者らはゲノムの大部分は古くに転移した転移因子に由来すると考え、その増幅の時期が3億5千万年前から2億年前で、その後配列があまり除去されなかったことが肺魚のゲノムサイズが大きい理由であろうと考えている。

2012年11月6日火曜日

Repbase Reports 12 (10)

Repbase Reportsの今年第10号が出版されました。今号では、動物から、ニシツメガエルXenopus tropicalis、グリーンアノールAnolis carolinensis、ギボシムシSaccoglossus kowalevskii、イソギンチャクNematostella vectensis、真菌類からSerpula lacrymansMelampsora larici-populinaPuccinia graminis の転移因子および反復配列を報告しています。

また、哺乳類に広く保存された反復配列も多数報告しています。これらの多くはおそらく転移因子由来ですが、エンハンサー等として機能している可能性があります。

Repbase Reports Volume 12, Issue 10

Repbase ReportsはGIRIが発行している、真核生物の反復配列を報告するオンラインの科学雑誌です。配列、分類と簡単な特徴の報告だけですが、反復配列の一次情報源として論文でも引用されています。Repbase Reportsに掲載された配列は、反復配列データベースであるRepbase Updateに収録され、配布されます。学術研究者はユーザー登録することでどちらも無料で閲覧できます。

2012年11月5日月曜日

稲作の起源

栽培稲の起源については、japonicaとindicaの起源が独立ではないかという疑問を含めて、まだまだ未解明の部分が多くあります。最近Natureに掲載された論文によると、japonica種は中国南部珠江流域で野生の稲Oryza rufipogonが作物化されて生まれ、indica種は東南アジアから南アジアでjaponica種と野生の稲が交雑して誕生したとされています。
この論文では、446地域から採集した野生の稲Oryza rufipogonと1083系統の栽培稲の品種のゲノムを解析して55のselective sweepをみつけたことから、上記のような結論に至っています。

A map of rice genome variation reveals the origin of cultivated rice
Huang X, Kurata N, Wei X, Wang ZX, Wang A, Zhao Q, Zhao Y, Liu K, Lu H, Li W, Guo Y, Lu Y, Zhou C, Fan D, Weng Q, Zhu C, Huang T, Zhang L, Wang Y, Feng L, Furuumi H, Kubo T, Miyabayashi T, Yuan X, Xu Q, Dong G, Zhan Q, Li C, Fujiyama A, Toyoda A, Lu T, Feng Q, Qian Q, Li J, Han B.
Nature. 2012 Oct 25;490(7421):497-501. doi: 10.1038/nature11532. Epub 2012 Oct 3.
PMID: 23034647 [PubMed - in process]

ちなみに珠江の河口の両側が香港とマカオだそうです。

2012年10月24日水曜日

The Greatest Show on Earth

レンスキーらの実験の紹介と順番が逆になったが、リチャードドーキンスの最近の著書「進化の存在証明」を読み終えたので感想。原題は「The Greatest Show on Earth - The Evidence for Evolution」。進化論を信じない人があまりに多いのを嘆いて書かれた本なので、基本的には詳細に何故進化が真実と考えられるのかを丁寧に解説している。

アメリカでは実に4割の人が進化を信じていないという。これまではなんて頑迷なキリスト教徒たちなのだろうと思っていたのだが、どうやら違うらしいことがこの本を読んでいるうちにわかった。これらの人たちのほとんどは単に基本的な科学の知識がないだけなのだ。そして一部の進化を理解していながら感情的に受けつけない人たちが彼らを洗脳すべくエセ科学を振りかざしている。そういう構図のようだ。今年は大統領選の年なのでこういう問題は一層悩ましいものである。

2012年10月23日火曜日

レンスキーらの進化実験

最近読み終わった「進化の存在証明」で紹介されていたレンスキーらの実験の、続報が出ていました。紹介されていた研究は、12系統の大腸菌をひたすら継代し続けるというものです。グルコースを添加した培地で維持し続けると、よりその環境で増殖に適した変異を持った個体が増殖することになります。そしてすぐに上限に達するのですが、あるとき、
とても濃い密度まで増加できる株が出現しました。その後の研究でこれは培地にpH調整のために添加されていたクエン酸をエネルギー源として利用できるように進化したためであることがわかりました。

Genomic analysis of a key innovation in an experimental Escherichia coli population
Blount ZD, Barrick JE, Davidson CJ, Lenski RE.
Nature. 2012 Sep 27;489(7417):513-8. doi: 10.1038/nature11514. Epub 2012 Sep 19.
PMID: 22992527 [PubMed - in process]

さて、今回の報告では、これらの株の継代中のゲノム配列の変化を調べています。クエン酸を利用できるようになるよりも10000継代も前から培養液中では3種類の遺伝子型が共存しており、その内の1つでタンデム遺伝子重複が起こり、クエン酸トランスポーターの遺伝子が発現するようになったということがわかりました。

2012年10月19日金曜日

イタチの内在性レンチウイルス

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのレンチウイルスは長らく内在性レトロウイルスにはならないと考えられてきたが、近年になって、ウサギやサルから内在性レンチウイルスが見つかって来ている。

Endogenous Lentiviral Elements in the Weasel Family (Mustelidae)
Han GZ, Worobey M.
Mol Biol Evol. 2012 Oct;29(10):2905-8. Epub 2012 Apr 20.
PMID: 22522310 [PubMed - in process]

この論文ではイタチから新規の内在性レンチウイルスMustelidae endogenous lentivirus [MELV]を報告している。イタチ類の中でも、カワウソ亜科 Lutrinaeとイタチ亜科 MustelinaeではMELVが見つかったが、テンの仲間Martinaeでは見つからなかった。このことから、MELVがイタチ類のゲノムに挿入されたのは、1180万年前から880万年前ごろと推定された。

2012年10月18日木曜日

mutator変異と転移因子の競合関係

真核生物の転移因子を扱っている私にとってはMutatorというと植物のトランスポゾンなのですが、原核生物ではDNA修復系の変異の名前ですね。

Competition between Transposable Elements and Mutator Genes in Bacteria
Fehér T, Bogos B, Méhi O, Fekete G, Csörgo B, Kovács K, Pósfai G, Papp B, Hurst LD, Pál C.
Mol Biol Evol. 2012 Oct;29(10):3153-9. Epub 2012 Apr 23.
PMID: 22527906 [PubMed - in process]

mutator変異と転移因子はどちらも突然変異率を上げる。この論文では、転移因子を全て除いた大腸菌にIS1を導入し、その挙動を調べている。確かにIS1は突然変異率を増加させ、時折全く異なった表現型を示す株を作るが、その適応進化における効果はmutatorに比べると小さかった。そしてmutator変異は転移因子の増殖を抑える効果があった。従ってmutator変異と転移因子は変異誘発系として競合関係にあると言える。

2012年10月17日水曜日

自尊心のある人ならば

改めて、先日読んだ遺伝子重複による進化から、とても気に入った言葉を引用したい。

基礎科学に携わる研究者で自尊心のある人ならば誰でもが望むように、次世代の生物学者の考え方に影響を与えたいと思うならば、実験データの単なる生産者であるという水準から抜きんでて、新しい概念を明確に提示する者とならねばならない

日本語版への序にある言葉なのだが、正に至言。

2012年10月16日火曜日

遺伝子重複による進化

タイトルは和訳版のタイトル。大野乾の代表的な著書の1つ「Evolution by Gene Duplication」。原著の発表が1970年だからもう42年前の作品で、遺伝子重複、特に全ゲノム重複が生物進化に重要であることを唱えた論文である。2R仮説を話すときには常に引用する論文で、実際論文で引用したこともあるので、読むべきだとは思っていたのだが、古い論文はなかなか読むモチベーションがわかない(また手に入りにくい)、こともあって先延ばしにしてきた。

以降要約ではなくただの感想。
2R仮説の基となっている論文だが、この本自体で仮説提示されているのは、「爬虫類の誕生以前までに脊椎動物は1回以上の全ゲノム重複を起こしている」というもので、「脊椎動物の祖先で2回のゲノム重複が起きた」というものではない。つまり2R仮説を引用する場合にはこの論文だけを引用するのでは不十分。

もう一点気になったのは、ゲノムのDNA量の差異の原因を全て直列重複に帰そうとしている点。これは現在では、直列重複が寄与している部分はごくわずかで、実際には転移因子が関わっている事が明らかである。従って転移因子の関与は大野以降に明らかになってきた事柄だということだ。

にしても情報が少ない時点での推論はいろんな想像が膨らんで楽しそう。情報が増えた今でもこういうわくわくするテーマがあるはずで、それを見つけるのは一生モノの仕事なのだろうと思う。

2012年10月15日月曜日

牡蠣(カキ)ゲノム

二枚貝の一種マガキ(Crassostrea gigas)のゲノムが解読されました。アコヤガイ(Pinctada fucata)に次ぐ軟体動物のゲノム解読です。

The oyster genome reveals stress adaptation and complexity of shell formation
Zhang G, Fang X, Guo X, Li L, Luo R, Xu F, Yang P, Zhang L, Wang X, Qi H, Xiong Z, Que H, Xie Y, Holland PW, Paps J, Zhu Y, Wu F, Chen Y, Wang J, Peng C, Meng J, Yang L, Liu J, Wen B, Zhang N, Huang Z, Zhu Q, Feng Y, Mount A, Hedgecock D, Xu Z, Liu Y, Domazet-Lošo T, Du Y, Sun X, Zhang S, Liu B, Cheng P, Jiang X, Li J, Fan D, Wang W, Fu W, Wang T, Wang B, Zhang J, Peng Z, Li Y, Li N, Wang J, Chen M, He Y, Tan F, Song X, Zheng Q, Huang R, Yang H, Du X, Chen L, Yang M, Gaffney PM, Wang S, Luo L, She Z, Ming Y, Huang W, Zhang S, Huang B, Zhang Y, Qu T, Ni P, Miao G, Wang J, Wang Q, Steinberg CE, Wang H, Li N, Qian L, Zhang G, Li Y, Yang H, Liu X, Wang J, Yin Y, Wang J.
Nature. 2012 Sep 19;490(7418):49-54. doi: 10.1038/nature11413. Epub 2012 Sep 19.
PMID: 22992520 [PubMed - in process]

転移因子についてはあまりたいしたことは書いてないですね。

2012年10月13日土曜日

森口氏

先日からニュースで盛んに取り上げられていますが、遂にNatureとScienceのwebsiteにもニュース記事が出ています。

Stem-cell transplant claims debunked (Nature)
Breakthrough Stem Cell Results Called Into Question (Science)

これまでに報道された内容を見る限りでは、とても杜撰な作り話に見えます。共著者についても気になるところはあるのですが、事実関係が明らかになるまではコメントは控えます。

2012年10月12日金曜日

やっぱりヒ素はリンの代わりにはならないらしい

2年ほど前に大きな話題になったヒ素をリンの代わりに使う生物の話。発表当初から懐疑的な見方が出ていましたが、最近Scienceに反証記事が出ました。

GFAJ-1 is an arsenate-resistant, phosphate-dependent organism.
Erb TJ, Kiefer P, Hattendorf B, Günther D, Vorholt JA.
Science. 2012 Jul 27;337(6093):467-70. Epub 2012 Jul 8.
PMID: 22773139 [PubMed - indexed for MEDLINE]

Absence of detectable arsenate in DNA from arsenate-grown GFAJ-1 cells.
Reaves ML, Sinha S, Rabinowitz JD, Kruglyak L, Redfield RJ.
Science. 2012 Jul 27;337(6093):470-3. Epub 2012 Jul 8.
PMID: 22773140 [PubMed - indexed for MEDLINE]

どちらの論文でも、ヒ素はDNA中に取り込まれてはいないという結果を示しています。解析の詳細は専門外なのでわかりませんが、どうやらGFAJ-1はヒ素に非常に耐性の高い生物ではあるけれどもヒ素をリンの代わりにDNAに取り込むというのは間違いのようですね。

2012年10月11日木曜日

2012年ノーベル化学賞

2012年のノーベル化学賞はRobert J. Lefkowitz氏とBrian K. Kobilka氏に贈られることが決まりました。受賞理由は
"for studies of G-protein–coupled receptors"
(Gタンパク質共役型受容体の研究により)

Lefkowitz氏はGタンパク質共役型受容体の分子を発見し、Kobilka氏はその1つβ-adrenergic receptor遺伝子を同定しました。現在ではGタンパク質共役型受容体ファミリーという巨大な遺伝子ファミリーが、細胞間シグナル伝達に大きな役割を果たしている事が明らかになりました。

The Nobel Prize in Chemistry 2012

Gタンパク質については、既に1994年にAlfred Goodman Gilman氏とMartin Rodbell氏がノーベル医学生理学賞を受賞しています。あれ?と思ったのですが、Gilman氏とRodbell氏が受賞したのはGタンパク質そのものの研究により、今回の受賞はGタンパク質共役型受容体についての研究によってでした。

2012年10月10日水曜日

2012年ノーベル医学生理学賞

2012年ノーベル医学生理学賞がJohn Bertrand Gurdon氏と山中伸弥氏に授与されることが決まりました。受賞理由は、
"for the discovery that mature cells can be reprogrammed to become pluripotent"
(多能化するよう成熟細胞を再プログラムできることの発見により)

Gurdonは核を取り除いた受精卵にカエルの腸上皮細胞の核を移植する実験により、分化した細胞の核にも多能性が維持されていることを明らかにしたことが、山中は4つの遺伝子を導入して体細胞から多能性幹細胞を生成する技術を確立したことが評価されての受賞です。

The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2012

受賞は実際のところ時間の問題だと思っていましたが、主要な成果からたった6年での受賞というのは確かに早い。1998年にRNA干渉を発見したAndrew Zachary Fire氏とCraig Cameron Mello氏がノーベル賞を受賞したのは2006年で、そのときも非常に早い受賞だと思ったのを思い出します。科学の発展が加速度的に速くなっているのも痛感せざるを得ません。

2012年10月9日火曜日

マウス胚の全ゲノムメチル化地図

哺乳類の派生初期には大規模なメチル化の変化が見られる事が知られています。父親由来のゲノムは受精後メチルシトシンが減少し、杯盤胞の時期にメチル化の程度は最低になると考えられています。

A unique regulatory phase of DNA methylation in the early mammalian embryo
Smith ZD, Chan MM, Mikkelsen TS, Gu H, Gnirke A, Regev A, Meissner A.
Nature. 2012 Mar 28;484(7394):339-44. doi: 10.1038/nature10960.
PMID: 22456710 [PubMed - indexed for MEDLINE]

この論文ではマウス胚の全ゲノムメチル化地図を作製し、受精から着床までのパターン変化を解析しています。未受精卵の段階で既に大規模な低メチル化が起こっていました。ここで特に低メチル化されていたのはLINE1とLTRレトロトランスポゾンでした。
父親由来母親由来でメチル化のパターンが異なる領域はdifferentially methylated regions (DMRs)と呼ばれています。母親由来(卵)のDMRにはCpGアイランドが多く、この領域は初期胚でDMRが維持され、徐々にメチル化の差は失われて行きます.一方で父親由来(精子)のDMRは遺伝子間領域が多く、杯盤胞以降では過メチル化されました。

インプリンティングはおそらく転移因子のメチル化に由来しています。このようなパターン変化がどのようにして生まれたのか興味深いです。

2012年10月8日月曜日

Repbase Reports Volume 12, Issue 9

Repbase Reportsの今年第9号が9/22に出版されました。今号では、ショウジョウバエ6種(Drosophila ananassaeDrosophila rhopaloaDrosophila takahashiiDrosophila yakubaDrosophila virilisDrosophila willistoni)、ミツバチApis mellifera、ユウレイボヤCiona savignyi、珊瑚の仲間のコユビミドリイシAcropora digitiferaの転移因子を報告しています。

Repbase Reports Volume 12, Issue 9

Repbase ReportsはGIRIが発行している、真核生物の反復配列を報告するオンラインの科学雑誌です。配列、分類と簡単な特徴の報告だけですが、反復配列の一次情報源として論文でも引用されています。Repbase Reportsに掲載された配列は、反復配列データベースであるRepbase Updateに収録され、配布されます。学術研究者はユーザー登録することでどちらも無料で閲覧できます。

2012年10月6日土曜日

Complete Genomics

我々の研究所から、グーグルを挟んだ反対側にある企業Complete GenomicsがBGIに買収されるという話がNatureに載っていました。

China buys US sequencing firm

記事によるとComplete Genomicsはヒトゲノムの解読に特化した配列解読サービスを提供していて、その強みは間違いの少なさだそうです。間違いは1千万塩基に1つだとか。そのレベルだと父親由来と母親由来のハプロタイプが区別できます。今後は医療現場で個人のゲノムの完全解読が普及すると見込まれているので期待は大きいのですが、今のビジネスモデルでは成功しているとは言い難く、今回の買収に至ったようです。目下のところシーケンサーはIlluminaの独断場になっているのでComplete Genomicsの技術は市場から退場してしまうのは望ましくなく、今回の買収は好感されているそうです。目下のComplete Genomicsの技術の問題点はシーケンスに2-3ヶ月もかかるという点で、医療用途には魅力的ではありません。今後はBGIの支援を受けながら技術を改善させていくことが期待されています。

で、先日本社の看板を見てきました。臨海公園Shoreline@Mountain View Parkに行く途中に見えました。

2012年10月5日金曜日

酵母の性決定遺伝子座

少なくとも出芽酵母の仲間の性決定遺伝子座は利己的遺伝子に由来します。トランスポゾンとホーミングエンドヌクレアーゼが遺伝子化されたことが既に示されています。

Unidirectional Evolutionary Transitions in Fungal Mating Systems and the Role of Transposable Elements
Gioti A, Mushegian AA, Strandberg R, Stajich JE, Johannesson H.
Mol Biol Evol. 2012 Oct;29(10):3215-26. Epub 2012 May 15.
PMID: 22593224 [PubMed - in process]

菌類で性を決定している座位はmating-type (mat) locusと呼ばれている。この論文ではアカパンカビの自家受精する4種としない1種のmat座の配列を決定して、既知の配列と比較している。自家受精しないものは共通の遺伝子配置を持っていたので、自家受精しないものが祖先型、自家受精するものはそれぞれしないものから派生したと考えられた。自家受精するものはアカパンカビ属で少なくとも4回独立に進化し、その内3回は半数体ゲノムに両方のmat座の配列が載る事で起こった事がわかった。このmat座の移動はもしかすると異なる位置のトランスポゾン間での組換えで起こったのかもしれない。

2012年10月4日木曜日

ウシ亜科内のBov-Bの転移

要約だけでは内容がよくわからない...けれどとりあえずメモ。

Activity of Ancient RTE Retroposons during the Evolution of Cows, Spiral-Horned Antelopes, and Nilgais (Bovinae)
Nilsson MA, Klassert D, Bertelsen MF, Hallström BM, Janke A.
Mol Biol Evol. 2012 Oct;29(10):2885-8. Epub 2012 Jun 11.
PMID: 22688946 [PubMed - in process]

レトロトランスポゾンBov-Bを用いてウシ亜科の系統解析をしている。また、Bov-B由来のSINEの活性に3つの段階あった事が示されている。

2012年10月3日水曜日

カイツブリはフラミンゴと近縁

A Universal Method for the Study of CR1 Retroposons in Nonmodel Bird Genomes
Suh A, Kriegs JO, Donnellan S, Brosius J, Schmitz J.
Mol Biol Evol. 2012 Oct;29(10):2899-903. Epub 2012 Apr 20.
PMID: 22522308 [PubMed - in process]

この論文では、CR1の挿入の有無による系統推定を非モデル生物の鳥類に適用する方法について報告されている。その例として、カイツブリのゲノムを解析し、カイツブリがフラミンゴと近縁であることを示している。また、鳥類では初めての、種内多型を示すCR1の挿入を発見している。

2012年9月26日水曜日

始新世末の大量絶滅

最近Wikipediaを見ていて初めて知ったのでメモ。

Eocene–Oligocene extinction event

白亜紀末の大絶滅は有名ですが、それ以後にも大量絶滅がありました。これは始新世(Eocene)と漸新世(Oligocene)の境界にあたる約3,400万年前に起こりました。その原因は諸説ありますが、その一つは隕石の衝突で、Popigai、Toms Canyon、Chesapeake Bayの3つのクレーターを生んだ隕石衝突が寒冷化の原因とするものです。
Popigaiクレーターは直径100km、およそ3570万年前にできたと推定されているシベリアのクレーターです。
Chesapeake Bayクレーターは直径90km、およそ3500万年前にできたと推定されるクレーターで、北米バージニア州のChesapeake Bayの一部の地形を形作っています。
Toms Canyonクレーターはおよそ3500万年前にできたと推定されているクレーターで、Chesapeake Bayクレーターから約322km離れて、北米ニュージャージー州の沖合の海底に位置します。

原因を火山の噴火に求める仮説などもありますが、何が原因にせよこの時期を境にして地球は寒冷化に向かい、氷床の形成、海面の低下などが起こり、主に海洋動物が絶滅しました。南極の氷床の形成の開始はちょうどこの時期に一致します。

2012年9月25日火曜日

gene body methylationされる遺伝子の性質

gene body methylationとはプロモーター領域ではなく、遺伝子のmRNAとして転写される領域がメチル化される現象です。これは動物でも植物でも見られる現象ですが、その役割はよくわかっていません。

The evolution of invertebrate gene body methylation.
Sarda S, Zeng J, Hunt BG, Yi SV.
Mol Biol Evol. 2012 Aug;29(8):1907-16. Epub 2012 Feb 10.
PMID: 22328716 [PubMed - in process]

この論文ではミツバチ、カイコ、ホヤ、イソギンチャクの4種の無脊椎動物のメチル化を解析し、タンパク質配列が保存されている遺伝子ほどgene body methylationが起こっている事を明らかにしています。これらの遺伝子には転写や翻訳に関わるhouse keeping geneが多く含まれていました.一方で昆虫の進化の過程でメチル化されなくなった遺伝子には、シグナル伝達や生殖に関わる遺伝子が多く含まれていました。

2012年9月20日木曜日

子宮内膜でのプロラクチンプロモーターは転移因子由来

プロラクチンは下垂体前葉から分泌されるホルモンで、乳汁合成や妊娠維持など様々な機能を制御する。また胎盤や子宮でも産生されることが知られている。

Convergent Evolution of Endometrial Prolactin Expression in Primates, Mice, and Elephants Through the Independent Recruitment of Transposable Elements
Emera D, Casola C, Lynch VJ, Wildman DE, Agnew D, Wagner GP.
Mol Biol Evol. 2012 Jan;29(1):239-47. Epub 2011 Aug 2.
PMID: 21813467 [PubMed - indexed for MEDLINE]

ヒトを含む霊長類で子宮内膜でのプロラクチン産生を制御するプロモーターは内在性レトロウイルスのMER39に由来する。しかし霊長類以外でもプロラクチンを子宮内膜で合成するものは存在する.この研究では、子宮内膜でのプロラクチン産生は哺乳類共通の特徴ではない事を明らかにしている。子宮内膜でのプロラクチン産生はウサギ、ブタ、イヌ、アルマジロでは起こらない。起こるものでも、プロラクチンの子宮内膜での合成を制御するプロモーターは霊長類、マウス、ゾウでそれぞれ異なっていた。クモザルではヒトと同じMER39、マウスでは別の内在性レトロウイルスMER77、ゾウではnon-LTRレトロトランスポゾンのL1-2_LAから派生した配列がプロモーター機能を担っていた。従って、子宮内膜でのプロラクチン産生は別々の転移因子が取り込まれてプロモーター活性を提供する事で独立に進化して来た事がわかる。

2012年9月19日水曜日

RNAウイルスが宿主から取り込むRNA

Host RNAs, including transposons, are encapsidated by a eukaryotic single-stranded RNA virus
Routh A, Domitrovic T, Johnson JE.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Feb 7;109(6):1907-12. Epub 2012 Jan 24.
PMID: 22308402 [PubMed - indexed for MEDLINE] Free PMC Article

エンベロープを持たないRNAウイルスのflock house virus (FHV)を精製し、RNAをシーケンスしたところ、その1%は宿主に由来するRNAであった。リボソームRNA、mRNA、non-coding RNAと転移因子由来のRNAが含まれていた。これらのRNAは水平伝播する可能性がある。また、医療にウイルスを利用する際には、このような宿主由来RNAの存在は無視できない問題となるだろう。

2012年9月18日火曜日

Neoavesの初期進化

Retroposon Insertion Patterns of Neoavian Birds: Strong Evidence for an Extensive Incomplete Lineage Sorting Era
Matzke A, Churakov G, Berkes P, Arms EM, Kelsey D, Brosius J, Kriegs JO, Schmitz J.
Mol Biol Evol. 2012 Jun;29(6):1497-501. Epub 2012 Jan 3.
PMID: 22319163 [PubMed - in process]

鳥類は恐竜類の一部から白亜紀に派生したと考えられています。しかし、鳥類内部の系統関係は一部を除いてあまり明らかになっていません。この論文では、レトロトランスポゾンの挿入を指標にして鳥類の系統関係を解析しています。しかし、Neoaves(現生ではダチョウの仲間、キジの仲間、カモの仲間を除いた全ての鳥類)の初期分岐については、共有する挿入相互に矛盾が見られることから、ほぼ同時期に多数の系統が分かれた事が示唆されました。
これは真獣類の3大系統間の関係とも類似していますが、鳥類の分岐の方がかなり新しいようです。

2012年9月17日月曜日

三畳紀末の大量絶滅と硫化水素汚染

Hydrogen sulphide poisoning of shallow seas following the end-Triassic extinction
Sylvain Richoz, Bas van de Schootbrugge, Jörg Pross, Wilhelm Püttmann, Tracy M. Quan, Sofie Lindström, Carmen Heunisch, Jens Fiebig, Robert Maquil, Stefan Schouten, Christoph A. Hauzenberger & Paul B. Wignall
Nature Geoscience 5, 662–667 (2012) doi:10.1038/ngeo1539

三畳紀末の大量絶滅の時期には、火山の大噴火とその後の森林火災により大気中の二酸化炭素濃度が非常に高かった事が知られています。この論文では、テチス海の浅瀬に由来する岩石を解析することで、大絶滅に続くジュラ紀初期に緑色硫黄細菌が大量増殖していた事を明らかにしています。これはこの時代に硫化水素が大気中に大量に存在していた事を示しています。また緑藻も大量に生育しており、低酸素状態であったことも示唆されます。以上からは、大量絶滅後の残存硫化水素の毒性と低酸素状態が生物相の回復を遅らせたと考えられます。

2012年9月14日金曜日

ナミハダニのゲノム

ナミハダニ(Tetranychus urticae)のゲノムが解読されました。節足動物の4大グループ(鋏角類、多足類、甲殻類、昆虫類)の内、鋏角類では初めての報告です。

鋏角類といえば、以前やっていたテロメア反復配列の研究で、昆虫型のTTAGGでも動物普遍型のTTAGGGでも線虫型のTTACGGでもないことが示唆されており、どのような構造をしているのか気になっていました。この論文では、TTAGGタイプのテロメアを持っていると書かれています。しかもTTAGGタイプのテロメア反復配列の間にTRASに似たnon-LTR retrotransposonが挿入されているそうです。カイコとその近縁種で見つかったTRASはテロメア反復配列と同じ向き、つまり(TTAGG)nの向きに挿入され、別のグループSARTは逆向き、(CCTAA)nに挿入されています。ナミハダニのTRASはカイコのTRASと同じ向きに挿入されています。TRASは系統解析から元々起源が古いことが予測されていたので順当な結果ではあります。

The genome of Tetranychus urticae reveals herbivorous pest adaptations
Grbić M, Van Leeuwen T, Clark RM, Rombauts S, Rouzé P, Grbić V, Osborne EJ, Dermauw W, Thi Ngoc PC, Ortego F, Hernández-Crespo P, Diaz I, Martinez M, Navajas M, Sucena E, Magalhães S, Nagy L, Pace RM, Djuranović S, Smagghe G, Iga M, Christiaens O, Veenstra JA, Ewer J, Villalobos RM, Hutter JL, Hudson SD, Velez M, Yi SV, Zeng J, Pires-Dasilva A, Roch F, Cazaux M, Navarro M, Zhurov V, Acevedo G, Bjelica A, Fawcett JA, Bonnet E, Martens C, Baele G, Wissler L, Sanchez-Rodriguez A, Tirry L, Blais C, Demeestere K, Henz SR, Gregory TR, Mathieu J, Verdon L, Farinelli L, Schmutz J, Lindquist E, Feyereisen R, Van de Peer Y.
Nature. 2011 Nov 23;479(7374):487-92. doi: 10.1038/nature10640.

2012年9月13日木曜日

父親の年齢が子供の突然変異に及ぼす影響

Rate of de novo mutations and the importance of father’s age to disease risk
Kong A, Frigge ML, Masson G, Besenbacher S, Sulem P, Magnusson G, Gudjonsson SA, Sigurdsson A, Jonasdottir A, Jonasdottir A, Wong WS, Sigurdsson G, Walters GB, Steinberg S, Helgason H, Thorleifsson G, Gudbjartsson DF, Helgason A, Magnusson OT, Thorsteinsdottir U, Stefansson K.
Nature. 2012 Aug 23;488(7412):471-5. doi: 10.1038/nature11396.
PMID: 22914163 [PubMed - in process]

アイスランドの78組の親子のゲノムを解析したところ、受精時の父親の年齢が1歳上がるごとに新規の塩基置換が2つ増えることが示された。

脊椎動物では卵の形成に比べて精子の形成の方が遥かに多くの細胞分裂を経ます。このため、より多くの突然変異が父親からもたらされることが予測されます。これが雄駆動進化説です。上記の結果は当然といえば当然のものですが、母親側の出産年齢だけが大きく問題とされている現状に一石を投じるものでしょう。

2012年9月12日水曜日

三日熱マラリア原虫の多様性

既に数種のマラリア原虫のゲノムが読まれていますが、今回更に1種4系統の配列が報告されました。今回読まれたのは、三日熱マラリア原虫Plasmodium vivax。マラリアは現在5種に分類されるマラリア原虫、すなわち、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)、サルマラリア原虫(P. knowlesi)、によって引き起こされる感染症です。

The malaria parasite Plasmodium vivax exhibits greater genetic diversity than Plasmodium falciparum
Neafsey DE, Galinsky K, Jiang RH, Young L, Sykes SM, Saif S, Gujja S, Goldberg JM, Young S, Zeng Q, Chapman SB, Dash AP, Anvikar AR, Sutton PL, Birren BW, Escalante AA, Barnwell JW, Carlton JM.
Nat Genet. 2012 Aug 5. doi: 10.1038/ng.2373. [Epub ahead of print]
PMID: 22863733 [PubMed - as supplied by publisher]

著者らは4系統のPlasmodium vivaxのゲノム配列を読んだ。SNPでの多様性で見ると、Plasmodium vivaxの多様性はPlasmodium falciparumの2倍程度にもなった。

2012年9月11日火曜日

Repbase Reports Volume 12, Issue 8

Repbase Reportsの今年第8号が出版されました。今号では、ショウジョウバエ5種(Drosophila simulansDrosophila rhopaloaDrosophila takahashiiDrosophila persimilisDrosophila sechellia)、カイコBombyx mori、擬態の研究材料にされている蝶の一種Heliconius melpomene、霊芝Ganoderma lucidum、ギンザメの一種Callorhinchus miliiArabidopsisに近縁な耐塩性植物Eutrema parvulumの転移因子を報告しています。

Repbase Reports Volume 12, Issue 8

Repbase ReportsはGIRIが発行している、真核生物の反復配列を報告するオンラインの科学雑誌です。配列、分類と簡単な特徴の報告だけですが、反復配列の一次情報源として論文でも引用されています。Repbase Reportsに掲載された配列は、反復配列データベースであるRepbase Updateに収録され、配布されます。学術研究者はユーザー登録することでどちらも無料で閲覧できます。

2012年9月10日月曜日

2012年第11回BAS年次合同セミナー

過去2回参加しているBAS年次合同セミナーの案内を見つけたのでリンク。

2012年第11回BAS年次合同セミナーの開催と演題募集のお知らせ

会期:10月6日(土曜日)
研究発表: 午後1時から
懇親会:  午後5時頃から(懇親会のみの参加も可)
場所:UCSF-Mission Bay Campus Genentech Hall Auditorium
参加費:1人10ドル(当日集めます。懇親会費を含みます) 発表者と学生は無料

2012年8月30日木曜日

デボン紀の昆虫化石

昆虫は最も栄えている動物のグループの1つで、現在最も有力な説では、甲殻類の一群から進化したと考えられています。

A complete insect from the Late Devonian period
Garrouste R, Clément G, Nel P, Engel MS, Grandcolas P, D'Haese C, Lagebro L, Denayer J, Gueriau P, Lafaite P, Olive S, Prestianni C, Nel A.
Nature. 2012 Aug 2;488(7409):82-5. doi: 10.1038/nature11281.
PMID: 22859205 [PubMed - in process]

陸上動物の2大グループ、節足動物と脊椎動物の多様化は2段階に分かれて起こった事が知られています。シルル紀からデボン紀(4億2500万年前から3億8500万年前)と後期石炭紀(3億4500万年前から)です。この間の化石記録は欠落しています。これまでに見つかっている飛翔昆虫の化石は最も古いもので初期石炭紀でした。この論文では、後期デボン紀の昆虫化石を報告しています。この昆虫の大顎は直翅類(バッタ、ゴキブリ、ナナフシ等の不完全変態昆虫)の性質を持っており、肉食性の特徴を備えていました。これによりこの化石が欠落した時期にも既に昆虫が進化していたことが示されました。

2012年8月29日水曜日

鳥の頭蓋骨

鳥の頭蓋骨は恐竜の子供の頭蓋骨に類似しているそうです。

Birds have paedomorphic dinosaur skulls
Bhullar BA, Marugán-Lobón J, Racimo F, Bever GS, Rowe TB, Norell MA, Abzhanov A.
Nature. 2012 Jul 12;487(7406):223-6.
PMID: 22722850 [PubMed - indexed for MEDLINE]

2012年8月28日火曜日

絶滅

ニホンカワウソがレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)で絶滅扱いになりました。最後の目撃情報から33年。
九州のツキノワグマも「絶滅」です。

<ニホンカワウソ絶滅>地元関係者ら落胆

クマを見てクマだと思わない人なんていないと思うんですがね...

2012年8月27日月曜日

バナナのゲノム

バナナのゲノムが報告されました。バナナは単子葉植物の中で、穀物と姉妹群を形成するショウガ目Zingiberalesに属します。食用になっているバナナのほとんどは種が無いことからわかるようにクローンです。栽培されているバナナの半分は単一の三倍体クローン(Cavendish)に由来しています。遺伝的多様性がないため、もし病気が発生すると栽培に大打撃となります。そこで病気に対処するためにもゲノム解読が期待されていました。

The banana (Musa acuminata) genome and the evolution of monocotyledonous plants
D'Hont A, Denoeud F, Aury JM, Baurens FC, Carreel F, Garsmeur O, Noel B, Bocs S, Droc G, Rouard M, Da Silva C, Jabbari K, Cardi C, Poulain J, Souquet M, Labadie K, Jourda C, Lengellé J, Rodier-Goud M, Alberti A, Bernard M, Correa M, Ayyampalayam S, Mckain MR, Leebens-Mack J, Burgess D, Freeling M, Mbéguié-A-Mbéguié D, Chabannes M, Wicker T, Panaud O, Barbosa J, Hribova E, Heslop-Harrison P, Habas R, Rivallan R, Francois P, Poiron C, Kilian A, Burthia D, Jenny C, Bakry F, Brown S, Guignon V, Kema G, Dita M, Waalwijk C, Joseph S, Dievart A, Jaillon O, Leclercq J, Argout X, Lyons E, Almeida A, Jeridi M, Dolezel J, Roux N, Risterucci AM, Weissenbach J, Ruiz M, Glaszmann JC, Quétier F, Yahiaoui N, Wincker P.
Nature. 2012 Aug 9;488(7410):213-7.
PMID: 22801500 [PubMed - in process]

Musa acuminataのゲノムが解読され、ゲノムサイズは523MB、バナナはこれまでに3回の全ゲノム重複を起こして来た事がわかりました。転移因子はゲノム全体の半分をしめ、植物の例に漏れず、LTRレトロトランスポゾンが多く、non-LTRレトロトランスポゾンはゲノムの約5.5%、DNAトランスポゾンはたった1.3%でした。しかも他の植物に見つかるEn/Spm(CACTA)やMarinerは全く存在せず、見つかった3つのスーパーファミリー(hAT, Harbinger, MuDR (Mutator))の内、hATがほとんどを占めました。

2012年8月26日日曜日

白亜紀のヘビ

ヘビ類はトカゲ類の一群ですが、その起源は未だ不明のままです。ある説では、海洋性の爬虫類が遊泳のために四肢を失った事に由来するとされ、一方で、地中性のトカゲが足を失ったという仮説も有力です。

A transitional snake from the Late Cretaceous period of North America
Longrich NR, Bhullar BA, Gauthier JA.
Nature. 2012 Aug 9;488(7410):205-8.
PMID: 22832579 [PubMed - in process]

この論文では、以前に脊椎だけ報告されていた白亜紀のヘビ類Coniophis precedensの頭部を報告しています。このヘビはこれまで考えられて来た以上に原始的で、陸地の平原環境から見つかった事や小型であることなどは、ヘビ類が地中性のトカゲから進化した事を支持しています。

2012年8月25日土曜日

日本鳥学会の百年

東京大学総合研究博物館で「日本鳥学会の百年」と題した展覧会が開催されています。目玉は世界に3体しか無いカンムリツクシガモの剥製だそうです。

日本鳥学会の百年
 【会期】8月17日(金)~9月21日(金)
 【会場】東京大学総合研究博物館
 【開館】10:00~17:00

2012年8月24日金曜日

有袋類のXist

X染色体不活化は雌に2本あるX染色体の片方をヘテロクロマチン化して遺伝子発現を抑制し、X染色体が1本しかない雄の遺伝子発現量と同じにするメカニズムです。真獣類(有胎盤類)ではXistという長いnon-coding RNAがX染色体不活化を誘導する役割を持っています。今回有袋類で同じ働きをするnon-coding RNAが見つかり、Rsx (RNA-on-the-silent X)と名付けられました。

Rsx is a metatherian RNA with Xist-like properties in X-chromosome inactivation
Grant J, Mahadevaiah SK, Khil P, Sangrithi MN, Royo H, Duckworth J, McCarrey JR, VandeBerg JL, Renfree MB, Taylor W, Elgar G, Camerini-Otero RD, Gilchrist MJ, Turner JM.
Nature. 2012 Jul 12;487(7406):254-8.
PMID: 22722828 [PubMed - indexed for MEDLINE]

2012年8月23日木曜日

Repbase Reports Volume 12, Issue 7

Repbase Reportsの今年第7号が7/20に出版されています。この号では、ショウジョウバエ5種(Drosophila ficusphilaDrosophila kikkawaiDrosophila grimshawiDrosophila mojavensisDrosophila pseudoobscura)に加えて、ポプラPopulus trichocarpa、小麦赤錆病菌Puccinia triticinaの転移因子を報告しています。

Repbase Reports Volume 12, Issue 7

Repbase ReportsはGIRIが発行している、真核生物の反復配列を報告するオンラインの科学雑誌です。配列、分類と簡単な特徴の報告だけですが、反復配列の一次情報源として論文でも引用されています。Repbase Reportsに掲載された配列は、反復配列データベースであるRepbase Updateに収録され、配布されます。学術研究者はユーザー登録することでどちらも無料で閲覧できます。

ブログ再開します

一時帰国および学会準備等々で忙しかったので休止していましたが、ぼちぼちブログを再開します。

2012年7月14日土曜日

藤原セミナー

8月4日に藤原セミナーで口頭発表します。タイトルは、「Dada - a new superfamily of DNA transposons targeting small RNA genes」です。

Fujihara Seminar 2012

2012年7月13日金曜日

古代動物の巣穴

5億8500万年前の地層から、左右相称動物の巣穴の化石が見つかったそうです。これが事実だとすると、動物がエディアカラ紀に既に存在していた証拠になります。分子年代と化石のギャップを埋める発見ですね。

Bilaterian Burrows and Grazing Behavior at >585 Million Years Ago
Pecoits E, Konhauser KO, Aubet NR, Heaman LM, Veroslavsky G, Stern RA, Gingras MK.
Science. 2012 Jun 29;336(6089):1693-6.
PMID: 22745427 [PubMed - in process]

2012年7月12日木曜日

石炭紀の終焉とキノコの進化

石炭紀が終わったのはキノコの進化によるのかもしれませんね。光合成の進化による大気組成の変化ほどではありませんが、地球規模の気候変動の一部は生物の進化によってもたらされます。その点では人類の進化による気候変動も大きな流れの一部に過ぎないと言えるのではないでしょうか?

The Paleozoic Origin of Enzymatic Lignin Decomposition Reconstructed from 31 Fungal Genomes
Floudas D, Binder M, Riley R, Barry K, Blanchette RA, Henrissat B, Martínez AT, Otillar R, Spatafora JW, Yadav JS, Aerts A, Benoit I, Boyd A, Carlson A, Copeland A, Coutinho PM, de Vries RP, Ferreira P, Findley K, Foster B, Gaskell J, Glotzer D, Górecki P, Heitman J, Hesse C, Hori C, Igarashi K, Jurgens JA, Kallen N, Kersten P, Kohler A, Kües U, Kumar TK, Kuo A, LaButti K, Larrondo LF, Lindquist E, Ling A, Lombard V, Lucas S, Lundell T, Martin R, McLaughlin DJ, Morgenstern I, Morin E, Murat C, Nagy LG, Nolan M, Ohm RA, Patyshakuliyeva A, Rokas A, Ruiz-Dueñas FJ, Sabat G, Salamov A, Samejima M, Schmutz J, Slot JC, St John F, Stenlid J, Sun H, Sun S, Syed K, Tsang A, Wiebenga A, Young D, Pisabarro A, Eastwood DC, Martin F, Cullen D, Grigoriev IV, Hibbett DS.
Science. 2012 Jun 29;336(6089):1715-9.
PMID: 22745431 [PubMed - in process]

木材が分解されにくいのは主にリグニンの存在による。リグニンを分解できる生物はハラタケ類の白色腐朽菌(white rot fungus)に限られる。食用キノコの多く、シイタケ、ナメコ、エノキタケ、ヒラタケ、マイタケ等は白色腐朽菌である。この論文では31種の真菌類のゲノムを比較し(今回読まれたのは12種)、ハラタケ類の共通祖先でリグニンを分解するペルオキシダーゼが多様化したことを明らかにした。このリグニン分解能の獲得は、石炭紀の終わりに有機炭素の埋蔵量が急速に減少したのに対応している。

2012年7月11日水曜日

Heliconius melpomeneのゲノム

ドクチョウの仲間のHeliconius melpomeneのゲノムが報告されました。擬態の研究材料になっている南米の蝶です。種間交雑による遺伝子流入が、近縁種間で似た擬態を生む機構の1つだそうです。

Butterfly genome reveals promiscuous exchange of mimicry adaptations among species
The Heliconius Genome Consortium, Dasmahapatra KK, Walters JR, Briscoe AD, Davey JW, Whibley A, Nadeau NJ, Zimin AV, Hughes DS, Ferguson LC, Martin SH, Salazar C, Lewis JJ, Adler S, Ahn SJ, Baker DA, Baxter SW, Chamberlain NL, Chauhan R, Counterman BA, Dalmay T, Gilbert LE, Gordon K, Heckel DG, Hines HM, Hoff KJ, Holland PW, Jacquin-Joly E, Jiggins FM, Jones RT, Kapan DD, Kersey P, Lamas G, Lawson D, Mapleson D, Maroja LS, Martin A, Moxon S, Palmer WJ, Papa R, Papanicolaou A, Pauchet Y, Ray DA, Rosser N, Salzberg SL, Supple MA, Surridge A, Tenger-Trolander A, Vogel H, Wilkinson PA, Wilson D, Yorke JA, Yuan F, Balmuth AL, Eland C, Gharbi K, Thomson M, Gibbs RA, Han Y, Jayaseelan JC, Kovar C, Mathew T, Muzny DM, Ongeri F, Pu LL, Qu J, Thornton RL, Worley KC, Wu YQ, Linares M, Blaxter ML, Ffrench-Constant RH, Joron M, Kronforst MR, Mullen SP, Reed RD, Scherer SE, Richards S, Mallet J, Owen McMillan W, Jiggins CD.
Nature. 2012 May 16. doi: 10.1038/nature11041. [Epub ahead of print]
PMID: 22722851 [PubMed - as supplied by publisher]

2012年7月10日火曜日

ES細胞の中の全能性細胞群

レトロトランスポゾンの一群の内在性レトロウイルス(endogenous retrovirus)が細胞の分化全能性の制御に深く関わっていることを示唆する論文が報告されました。

Embryonic stem cell potency fluctuates with endogenous retrovirus activity
Macfarlan TS, Gifford WD, Driscoll S, Lettieri K, Rowe HM, Bonanomi D, Firth A, Singer O, Trono D, Pfaff SL.
Nature. 2012 Jun 13. doi: 10.1038/nature11244. [Epub ahead of print]
PMID: 22722858 [PubMed - as supplied by publisher]

著者らはES細胞、iPS細胞の内の一部の細胞が胚の二細胞期に似た発現パターンをすることを発見した。これらの細胞では、pluripotency proteinのOct4 (Pou5f1)、Sox2、Nanogが発現しておらず、胚だけでなく、栄養外胚葉にも分化しうる。ES細胞はどの細胞もこの全能性細胞になったり戻ったりを繰り返しており、その一部はヒストン修飾によって制御されているらしい。二細胞期に似た転写産物の多くはendogenous retrovirusのLTR内部から転写開始されており、哺乳類ではこれによって細胞運命が制御されていることを示唆している。

2012年7月6日金曜日

Repbase Reports Volume 12, Issue 6

Repbase Reportsの今年第6号が出版されました。今号では、ゲノムが読まれたショウジョウバエの内、Drosophila biarmipes, Drosophila eugracilis, Drosophila ficusphilaの転移因子を報告しています。

Repbase Reports Volume 12, Issue 6

Repbase ReportsはGIRIが発行している、真核生物の反復配列を報告するオンラインの科学雑誌です。配列、分類と簡単な特徴の報告だけですが、反復配列の一次情報源として論文でも引用されています。Repbase Reportsに掲載された配列は、反復配列データベースであるRepbase Updateに収録され、配布されます。学術研究者はユーザー登録することでどちらも無料で閲覧できます。

2012年7月1日日曜日

TOEIC

先日サンノゼのSan Jose State UniversityでTOEICを受けてきました。前回受けたのは大学の学部の時ですので、実に10年ぶりくらいです。記憶ではその際の点数は730だったはず。

さて、会場に着いてみると、受験者のほとんどはアジア系の人々。日本語が聞こえてくることも多く、どうやら受験者の過半数は日本人のよう。試験開始時間の10時になると、待合室になっていた会場からいったん追い出され、身分証をチェックして入室し直し。個人情報欄やアンケートに記入して実際にListeningの試験が始まったのは11時近くになっていました。

TOEICの内容はListeningが45分で100問。Readingが75分で100問。マークシート式。外からは工事の騒音が聞こえ、中では試験官の紙ずれの音がするというあまり快適でないListening環境は相当腹立たしく感じました。が、実際に話をする際には騒音が聞こえるわけですから、これからは雑音の中で英語を聞く練習をしたほうが良さそうです。

さて、点数は1週間で郵送されてきました。結果は970点。それなりにアメリカ暮らしが英語の学習に役立っていることが数値になりました。

ちなみに中国人の同僚はTOEICを知りませんでした。TOEFLに比べると無名のようです。

2012年6月30日土曜日

がん細胞でのL1、Aluの挿入

次世代シーケンサーでヒトのゲノムを解読し、新規のL1やAluの挿入を報告する論文が続いています。今回はScienceにがん細胞特異的な挿入を解析した研究が報告されています。がん細胞の由来による違いと、低メチル化との関係は興味を惹かれます。

Landscape of Somatic Retrotransposition in Human Cancers

がん細胞(脾臓、前立腺、卵巣、グリア細胞の癌、多発性骨髄腫)の患者から癌細胞と血液細胞のゲノムをいわゆる次世代シーケンサーで解読したところ、194個の体細胞でのL1/Alu挿入が見つかった。これらは全て上皮細胞の癌(脾臓、前立腺、卵巣)で見つかり、他の癌では見つからなかった。確認のために一部を選んでPCRをすると、TSDや5’末端の欠失などの特徴がわかり、ほとんどの挿入がL1の転移機構によることが確認できた。

遺伝子のタンパク質コード領域に挿入されている例は一つも見つからなかったが、UTRやイントロンに挿入されている例は多数見られ、実際にそれらは転写量を変化させていた。遺伝子と同じ向きの挿入の場合には顕著に転写量の減少が見られるが、逆向きの場合には統計上有意なほどの転写の減少は見られなかった.挿入されている遺伝子には、癌抑制遺伝子や細胞間接着に関わる遺伝子が多く見られた。挿入によりこれらの遺伝子が壊れた細胞は癌化の際に有利なため選択的に増殖するのだろう。

L1の挿入はゲノムの低メチル化領域に偏っている。生殖細胞系列でのL1の挿入は、精子形成時に特異的に起こる低メチル化領域に、がん細胞での挿入は癌特異的に起こる低メチル化の領域に偏っている事が確認できた。

2012年6月29日金曜日

オープンアクセス

今週号のNatureに学術雑誌のオープンアクセス化についてその費用をどのように負担して行くべきかという記事が載っています。ほとんどの研究は税金によってなされているのですから、少なくとも出資した国民には公開されてしかるべきだと思います。

Openness costs

2012年6月28日木曜日

ボノボゲノム

大型類人猿の最後の種のゲノムが解読されました。大型類人猿はいわゆるヒトを含めないヒト科の霊長類で、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンの3グループが含まれます.このうち、チンパンジー、ニシゴリラ、スマトラオランウータンのゲノムが高精度で解読され、ヒガシゴリラとボルネオオランウータンのゲノムも低精度ながら読まれています。最後がボノボ(ピグミーチンパンジー)だったわけです。

The bonobo genome compared with the chimpanzee and human genomes

2012年6月6日水曜日

トマトのゲノム

トマトのゲノムが解読されました。

The tomato genome sequence provides insights into fleshy fruit evolution
Tomato Genome Consortium.
Nature. 2012 May 30;485(7400):635-41. doi: 10.1038/nature11119.
PMID: 22660326 [PubMed - in process]

トマトは学名Solanum lycopersicum。この論文では野菜として開発されたトマトと、近縁な野生種Solanum pimpinellifoliumのゲノムを解読し、近縁種であるジャガイモのゲノムと比較しています。属名が示すようにこの3者は近縁ですが、ジャガイモは芋(地下茎)を、トマトは実を食用にするという違いがあります。トマトとジャガイモは2回の三倍体化を経ており、これらにより獲得された重複遺伝子が独自の機能を持つ事で果実の色や肉付きが生まれました。

2012年5月30日水曜日

Repbase Reports Volume 12, Issue 5

Repbase Reportsの今年第5号が出版されました。今号では、ゲノムが読まれたショウジョウバエの1種Drosophila bipectinataの転移因子を報告しています。和名はフタクシショウジョウバエらしいです。

Repbase Reports Volume 12, Issue 5

Repbase ReportsはGIRIが発行している、真核生物の反復配列を報告するオンラインの科学雑誌です。配列、分類と簡単な特徴の報告だけですが、反復配列の一次情報源として論文でも引用されています。Repbase Reportsに掲載された配列は、反復配列データベースであるRepbase Updateに収録され、配布されます。学術研究者はユーザー登録することでどちらも無料で閲覧できます。

2012年5月22日火曜日

infantile neurodegenerative disease

重要そうだが、要約を読むだけではよくわからない論文。多分いろいろと表現が下手。

Mutation in a primate-conserved retrotransposon reveals a noncoding RNA as a mediator of infantile encephalopathy
Cartault F, Munier P, Benko E, Desguerre I, Hanein S, Boddaert N, Bandiera S, Vellayoudom J, Krejbich-Trotot P, Bintner M, Hoarau JJ, Girard M, Génin E, de Lonlay P, Fourmaintraux A, Naville M, Rodriguez D, Feingold J, Renouil M, Munnich A, Westhof E, Fähling M, Lyonnet S, Henrion-Caude A.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Mar 27;109(13):4980-5. Epub 2012 Mar 12.

infantile neurodegenerative disease座の配列約400kbをシーケンスしたところ、primate-specific retrotransposonに塩基置換がみつかった。このretrotransposonはnoncoding RNAの一部として脳で転写されていた。このRNAを組織培養中でノックダウンすると神経細胞のアポトーシスが増加した。塩基置換によりヘアピンRNAが形成されるようになり、異常が生じるのだろう。

2012年5月19日土曜日

Federal Duck Stampの意匠

1年ほど前にFederal Duck Stampを紹介しました。久しぶりに気になって検索したところ、意匠の一覧を発見したので、リンクを貼ってみました。
The Duck Stamp Collection

次はCalifornia州のもの。
Duck Stamp Art 1971-Present

こういうのを見ていると欲しくなりますね。もちろんハンターとしてではなくコレクターとして。

2012年5月18日金曜日

Horsetail Fern

ソテツ、スギナの仲間は英語でHorsetail Fernと呼ばれます。Horsetailは馬の尾、Fernはシダの意味です。Muir Woodsで見かけたスギナはとてもごわごわとしていて、そのままブラシとして使えそうでした。

2012年5月17日木曜日

America the Beautiful Quarters

アメリカで最も一般的なコインはおそらくQuarterと呼ばれる25セント硬貨です。例えば路上駐車のメーターに使われるのは必ずQuarterですし、コインランドリーもカード式のものでなければQuarterを4枚から8枚入れる仕様になっています。我がアパートのランドリーもコイン式なので不便なことに、定期的に銀行へ行ってQuarterを引き出してくる必要があります。

Quarterの表の図柄は初代大統領ワシントンと決まっていますが、裏側にはいくつかのレパートリーがあります。発行枚数が膨大なので記念切手のような希少価値は全く出ませんが、ちょっとしたコレクションになります。1999年から2009年までは50州と属領の図柄のコインが発行されていましたので、これまでは基本の図柄の白頭ワシ(?)か、50州のコインを見ることがほとんどでした。

2010年からは企画が変わり、America the Beautiful Quartersと題して、各州の国立公園を1つずつ選んで裏面にするというプロジェクトが進んでいます。毎年5種類ずつ発行されるのですが、3年目にして初めてAmerica the Beautiful Quartersに当たりました。GlacierとGrand Canyonでした。

Wikipediaのサイトに細密な意匠が載っていたのでリンクを貼っておきます。
Glacier
Grand Canyon

2012年5月16日水曜日

Banana Slug

University of California, Santa CruzのシンボルにもなっているBanana Slug。Ariolimax属に属すナメクジ型の巻き貝3種の通称です。北アメリカ大陸で最大の陸生軟体動物です。
噂には聞いていてもカリフォルニアに来て2年ほど見ることが出来ずにいたのですが、Edgewood State Preserveで遂に実物を見ることが出来ました。一度わかると目に付くのか、それともこの時期が湿度が高く快適なのか一週間後にMuir Woodsでもたくさん出会えました。
ナメクジ型の、殻を失った巻き貝類は、ウミウシやアメフラシ、ナメクジなどたくさんの系統で独立に派生しています。とりわけ陸生のものは、殻を作るためのカルシウムの確保が大変なためか多くの種が殻を失ったナメクジ型になっています。
嫌いな人も多いと思います(実際私も触りたくはありません)ので下の方に貼っておきます。下の方がバナナっぽいかな?
































2012/04/08撮影。













2012/04/15撮影。

2012年5月14日月曜日

インフルエンザウイルス合成の危険性は?

昨年末なぜUS National Science Advisory Board for Biosecurity (NSABB) がH5N1インフルエンザウイルスを哺乳類の間で感染できるよう適応させた研究に関する2本の論文の、方法の部分の削除を要求したのかについての理由が述べられています。

なぜ、NSABBは論文の一部削除を勧告したのか
Q&A: Reasons for proposed redaction of flu paper

2012年5月13日日曜日

nMAT1の働き

植物のミトコンドリアや色素体のイントロンのスプライシングを媒介するタンパク質はMat(Maturase)と呼ばれます。これらはGroup II intronの逆転写酵素に由来しますが、逆転写の活性は失われており、Group II intronのスプライシングを補助する役割だけが残されています。更に、ミトコンドリアのMatが核ゲノムに転移したものはnMATと呼ばれ、4種類nMAT-1から4(最初の論文では、1a, 1b, 2a, 2b)が知られています。

少し前の知見は、本サイトにまとめてあります。
44. 成熟は他人任せ:RIR-3とnMat

nMAT1, a Nuclear-encoded Maturase involved in the trans-splicing of nad1 intron 1, is essential for mitochondrial complex I assembly and function
Keren I, Tal L, des Francs-Small CC, Araújo WL, Shevtsov S, Shaya F, Fernie AR, Small I, Ostersetzer-Biran O.
Plant J. 2012 Mar 16. doi: 10.1111/j.1365-313X.2012.04998.x. [Epub ahead of print]
PMID: 22429648 [PubMed - as supplied by publisher]

この論文の著者らはnMAT2がArabidopsisのミトコンドリアタンパク質のいくつかの遺伝子のスプライシングに関わっていることをしめしています。この論文では、nMAT-1がnad1のintron 1とnad2のintron 1、nad4のintron 2のスプライシングに関わっていることを示しています。このうち、nad1 intron1はtrans-splicing、後2者はcis-splicingです。

おそらくはnMATは全てオルガネラのgroup II intronのスプライシングにそれぞれ関わっているのでしょう。これもオルガネラから必須遺伝子が核へ移行する大きな流れの一部なのでしょう。

2012年5月12日土曜日

Muir Woods National Monument

サンフランシスコからゴールデンゲートブリッジを渡った対岸に小さな国立公園があります。Muir Woods National Monumentです。ここは、小さな自然公園ですが、世界で最も高い木Coast Redwood(Sequoia sempervirens)の林を見ることができ、アクセスが簡単な場所としてとても人気です。
Coast Redwoodはもともとはカリフォルニアの海岸沿いに普通に生えて林を作っていたのですが、その非常に優れた材質から伐採が進み、サンフランシスコ湾周辺ではMuir Woodsの谷だけが、そのアクセスの不便さから取り残されていました。Kent夫妻はその自然を守るためにこの谷を購入し、合衆国政府に寄付し、ルーズベルト大統領が National MonumentとしたことによりMuir Woods National Monumentが成立しました。Muir Woodsの名前はヨセミテ国立公園など国立公園システムの成立に尽力したJohn Muirにちなんでいます。

3度目の正直でようやく駐車することができ、数時間かけて廻ってきました。小さな公園でくるっと廻るとあっという間ですが、谷のRedwoodの林は圧巻でした。解説にもあったのですが、数本のRedwoodが中央の空き地を囲んで立っているのが良く見られます。これは中央にあった木の幹が雷などで死んだ後にその根から新しい幹が生長して巨木となったものです。一方Redwoodの小さな松ぼっくりから育った実生の割合は多くはないようです。


2012年5月11日金曜日

ホーミングエンドヌクレアーゼの標的認識

ホーミングエンドヌクレアーゼは自身の入っている配列の対立遺伝子座の配列を特異的に切断する活性を持っています。切断された対立遺伝子座には自身の配列を鋳型に修復をさせることでコピー数を増やします。進化の過程では標的の変異に対する耐性と、他の配列を切らない標的特異性の両者のバランスが重要になってきます。以下の論文では、どのように標的を認識しているのかを解析しています。

Comprehensive homing endonuclease target site specificity profiling reveals evolutionary constraints and enables genome engineering applications
Li H, Ulge UY, Hovde BT, Doyle LA, Monnat RJ Jr.
Nucleic Acids Res. 2012 Mar 1;40(6):2587-98. Epub 2011 Nov 25.
PMID: 22121229 [PubMed - in process] Free PMC Article

LAGLIDADG型のホーミングエンドヌクレアーゼであるI-CreIとI-MsoIについて、それぞれの標的DNAに1塩基ずつ置換を入れたものに対する結合と切断能を解析している。この2種のホーミングエンドヌクレアーゼはよく似た配列を認識するが、どの塩基を認識するかは全く異なっていた。

2012年5月10日木曜日

bracovirusの起源

少し古い論文ですが、フォローしていなかったのに最近気づいたので...

寄生蜂は膜翅目昆虫の中で最も大きなグループで、宿主となる昆虫の幼虫や卵の中に自身の卵を産みつけます。一部のものは、その際に、一緒にウイルス粒子のようなものを産みつける事が知られています。このウイルス粒子のようなものは、polydnavirusと呼ばれていますが、実際にはウイルスの複製に関わるタンパク質は持っておらず、ウイルスとは無関係のタンパク質をコードしています。幼虫の体内で発現したタンパク質は免疫を抑制して寄生蜂の幼虫が成長するのを助ける役割を持ちます。polydnavirusはbracovirusとichnovirusの2つに分類され、bracovirusはコマユバチ類(braconid wasps)が、ichnovirusはヒメバチ類(ichneumonid wasps)が持っています。これらのグループは膨大な種数を誇る、非常に繁栄している昆虫です。

さて、このウイルス様粒子の起源については、ウイルスが宿主の機構に取り込まれたものだと考えられてきましたが、粒子自体にウイルス由来の遺伝子が見つからない事からその起源はわかっていませんでした。以下の論文では、少なくともbracovirusの起源はnudivirusであり、約1億年前に寄生蜂のゲノムに取り込まれた事が示されました。nudivirusは節足動物に感染する二本鎖DNAウイルスで、同じく節足動物に感染するbaculovirusに近縁な事が知られています。

Polydnaviruses of braconid wasps derive from an ancestral nudivirus.
Bézier A, Annaheim M, Herbinière J, Wetterwald C, Gyapay G, Bernard-Samain S, Wincker P, Roditi I, Heller M, Belghazi M, Pfister-Wilhem R, Periquet G, Dupuy C, Huguet E, Volkoff AN, Lanzrein B, Drezen JM.
Science. 2009 Feb 13;323(5916):926-30.
PMID: 19213916 [PubMed - indexed for MEDLINE] Free Article

著者らはウイルス粒子が作られる時期の寄生蜂の卵巣のESTを3種の寄生蜂(Chelonus inanitus, Cotesia congregata, Hyposoter didymator)で作成し、どのようなウイルス様遺伝子が発現しているのかを調べました。5000配列ずつ調べたところ、前2者で発現している一部の遺伝子はbaculovirusやnudivirusの遺伝子と似ている事がわかりました。中には、RNA polymerase、DNA packagingやenvelopeのタンパク質をコードしているものも見つかりました。これらの遺伝子は蜂ゲノム中にコードされており、またタンパク質は確かにbracovirusの粒子に含まれていました。baculovirusとnudivirusに共通のものの他に、nudivirusだけがコードする遺伝子に近縁なものが見つかった事から、bracovirusはnudivirus由来であることもわかりました。よく保存された遺伝子はbracovirusを持つ寄生蜂全ての科でクローニングする事ができました。

少し前の知見は、本サイトにまとめてあります。
62. 自然界のウイルスベクター:polydnavirus

2012年5月9日水曜日

おねしょを防ぐ遺伝子

Nature highlightから。

膀胱に貯蔵できる尿の量を決めるタンパク質Connexin43の量は体内時計によって制御され、夜間に最も多くなるようになっているそうです。このため、夜間には尿をたくさん溜め込む事ができ、頻繁にトイレに行く必要がなくなるのだそうな。

Involvement of urinary bladder Connexin43 and the circadian clock in coordination of diurnal micturition rhythm
Negoro H, Kanematsu A, Doi M, Suadicani SO, Matsuo M, Imamura M, Okinami T, Nishikawa N, Oura T, Matsui S, Seo K, Tainaka M, Urabe S, Kiyokage E, Todo T, Okamura H, Tabata Y, Ogawa O.
Nat Commun. 2012 May 1;3:809. doi: 10.1038/ncomms1812.
PMID: 22549838 [PubMed - in process]

2012年5月8日火曜日

シーラカンス二題

生きた化石と言われるシーラカンスは肉鰭類の唯一の生き残りのグループです。このシーラカンスは3億8千万年前(デボン紀中期)の時点で既に現生のシーラカンスとほとんど変わらない形態を持っていた事がしられていましたが、遡って4億年前(デボン紀初期)から既にこの形態を持っていた事がわかりました。今回見つかったのは新種Euporosteus yunnanensis sp. nov.の頭骨です。

中国で最古のシーラカンス 4億年前から同じ姿

原著論文はこちら↓。
Earliest known coelacanth skull extends the range of anatomically modern coelacanths to the Early Devonian
Zhu M, Yu X, Lu J, Qiao T, Zhao W, Jia L.
Nat Commun. 2012 Apr 10;3:772. doi: 10.1038/ncomms1764.
PMID: 22491320 [PubMed - in process]


その一方で過去にはシーラカンスらしからぬ形態に進化したグループもいたようです。それはRebellatrix divaricercaと命名された2億5千万年前(三畳紀初期)の種で、前代ペルム紀末の大量絶滅で空いたニッチに進出するためにマグロのような遊泳能力を獲得したようです。現生のシーラカンスは待ち伏せ型の捕食をするように体ができていますが、Rebellatrixの体は長距離を追跡するようにできています。

新種シーラカンス、カナダで化石発見

原著論文はこちら↓。
A fork-tailed coelacanth, Rebellatrix divaricerca, gen. et sp. nov. (Actinistia, Rebellatricidae, fam. nov.), from the Lower Triassic of Western Canada


写真は東工大で撮影した現生シーラカンスLatimeria chalumnaeのプラスチネーション標本。

2012年5月7日月曜日

SVAの転移もL1が媒介する

複合型の転移因子SVA(SINE-VNTR-Alu)はAluとLTRレトロトランスポゾンの一部配列を含む構造を持ち、3'末端にpolyAを持つ事から、L1によって転移を媒介されると考えられてきましたが、証明はまだされていませんでした。この論文では、SVAが実際にL1のタンパク質の補助があって初めて転移すること、転移効率はprocessed pseudogeneに比べて12倍から300倍ほどと高く、L1のタンパク質が転移させやすい構造を持っている事が示されました。

The non-autonomous retrotransposon SVA is trans-mobilized by the human LINE-1 protein machinery
Raiz J, Damert A, Chira S, Held U, Klawitter S, Hamdorf M, Löwer J, Strätling WH, Löwer R, Schumann GG.
Nucleic Acids Res. 2012 Feb 1;40(4):1666-83. Epub 2011 Nov 3.
PMID: 22053090 [PubMed - in process] Free PMC Article

2012年5月6日日曜日

REPtron

今回紹介する論文は、IS Finderという原核生物の転移因子データベースを開発しているグループの論文です。IS FinderにはInsertion Sequence (IS)の主なグループの特徴が記載されているため、私もたびたびお世話になっています。

REPは原核生物に見られる20から40塩基程度の長さの反復配列で、通常複数が集まってBIME(bacterial interspersed mosaic element)と呼ばれる構造を取っています。このREP/BIMEの近傍にY1 transposaseの1種のTnpA-REPがコードされていることが最近明らかになり、このtransposaseがREP/BIMEの増殖を触媒していると考えられています。そこで、BIMEとTnpA-REPを含む領域をREPtronと呼ぶ事が提唱されています。TnpA-REPはIS200/IS605 familyの持つY1 transposaseと明らかに近縁です。REPは不完全なヘアピン(塩基対形成できない部分がある)を作りますが、IS200/IS605は不完全なヘアピンを両末端付近に持っています。

Structuring the bacterial genome: Y1-transposases associated with REP-BIME sequences
Ton-Hoang B, Siguier P, Quentin Y, Onillon S, Marty B, Fichant G, Chandler M.
Nucleic Acids Res. 2012 Apr 1;40(8):3596-609. Epub 2011 Dec 22.
PMID: 22199259 [PubMed - in process] Free PMC Article

この論文では、まず大腸菌と赤痢菌の多数の株でREP/BIMEを探索し、ほとんどのものがゲノム上の同じ位置にREP/BIMEとTnpA-REPをコードしていることを明らかにし、その後、TnpA-REPの生化学的な解析を行っています。大腸菌と赤痢菌ではREP/BIMEの数に増減はあるものの全て同じ位置に集まっていることから、共通祖先でREP/BIMEとTnpA-REPを獲得した後は、転移因子のように転移したりはしていないことがわかりました。生化学的な解析では、TnpA-REPがIS200/IS605のY1 transposaseと同様の特徴(一本鎖DNA結合、MgまたはMn依存的なDNA切断活性等)を持ちながら、独自の性質も持っている事を明らかにしています。例えば、IS200/IS605のY1 transposaseがIS200/IS605の片方のDNA鎖しか切断しないのに対して、TnpA-REPは両方の鎖を一本ずつ切断します。また、IS200/IS605のY1 transposaseが結合したヘアピンから常に一定の距離でDNAを切断するのに対して、TnpA-REPは頻度は低いながらも遠い位置でもDNAを切断します。
ヘアピンでは、対合しない塩基の存在が重要で、それを対合するように変えるとTnpA-REPは結合できません。また末端に保存されたGTAGも必須です。切断は必ずCTの間で起こり、周辺の塩基も切断活性にある程度影響します。また切断したDNA同士をつなぎ変える活性も確認できました。

以上から、TnpA-REPはREP/BIMEに結合して周辺でDNAを切断、組換えることによってREP/BIMEの数の増減に寄与していることが確実になりました。著者らはREPtronは転移因子ではなく、transposon domesticationの例だと考えています。自身が増殖する事無く、他の配列の増減に寄与するというと、レトロエレメントのretronなども該当します。REPtronもretronも自身の増殖には寄与しないので転移因子とは呼べませんが、利己的遺伝因子の1種ではないかと私は思います。

2012年5月4日金曜日

Wild Turkey

シチメンチョウは学名Meleagris gallopavo。キジの仲間で北米原産です。カリフォルニアにも野生のシチメンチョウが生息しており、Wild Turkeyと呼ばれています。Turkeyはトルコを意味する英語ですが、これはシチメンチョウとホロホロチョウ(Numida meleagris)との混同によるものです。ホロホロチョウはアフリカ大陸の鳥で、同様にキジの仲間で食用にされます。ホロホロチョウの種小名及びシチメンチョウの属名はホロホロチョウを意味するギリシャ語で、ギリシャ神話の英雄メレアグロスに由来します。

その野生のシチメンチョウにCoyote Lake State Parkで出会いました。
2012/04/14撮影。

2012年5月3日木曜日

California Poppy

Coyote Lake State Parkで見たCalifornia Poppyの写真を追加。

California Poppyは北はワシントン州から南はメキシコのカリフォルニア半島まで分布しています。荒れ地に咲く植物で、春に黄色から赤色、主に朱色の花を咲かせます。貧栄養の土地に咲くことから、道路脇などにも良く植えられていることからごく普通に見られる花です。

2012/04/14撮影。

2012年5月2日水曜日

Coyote Lake State Park

ギルロイにあるCoyote Lake State Parkに行ってきました。正式名称は、Coyote Lake State Harvey Bear Ranch County Park。Highway 101からGilroy Outlet Mallへの出口で出て、しばらく東に車で山を上っていくと到着です。途中は畑と牧場風景で、牛馬が草をはんでいたり、休んでいたりしている間を抜けていきます。Parkの入場料は6ドル。

カリフォルニアポピーの群落を見るのが今回の目的です。Parkは名前の通りCoyote Lakeを含む自然公園でキャンプ場がメインのアトラクションのようでした。が、我々はそれを横目にLakeの端のダムまで車で移動し、そこからTrailを通って高台へ。前日までの雨でところどころTrailがぬかるんでいましたが、1時間ほどでポピーの群落に到着。

カリフォルニアポピーは学名をEschscholzia californica。別名をゴールデンポピーと言うカリフォルニア州の州の花です。和名はハナビシソウ(花菱草)。荒れた土地に咲く花で、日の当たる岩場に群生していました。園芸植物としては庭によく植えられている花ですが、野生で、他の花と一緒に咲いている様子はやはり一見の価値あり。往復で実際には4マイルも歩いていないと思いますが、途中でWild Turkey (Meleagris gallopavo)やBlack-tailed Deer (Odocoileus hemionus columbianus)にも会えた楽しいハイキングでした。

2012年5月1日火曜日

恐竜の繁栄と衰退

一部の恐竜は6500万年前の大絶滅以前に衰退を始めていたそうです。その一部とは、ケラトプス類とハドロサウルス類で白亜紀の後期に種の多様性が低下していました。調べられた他のグループ(肉食恐竜や他の草食恐竜など)にはそのような傾向は見られなかったことから、恐竜全てについて一律の方向性を当てはめるのは間違っているという結論に達しています。
当たり前のように思えるのですが、体系的に調べられてことがなかったのでしょうね。

<草食恐竜>一部は多様性失い絶滅前に衰退 米研究チーム

Dinosaur morphological diversity and the end-Cretaceous extinction
Stephen L. Brusatte, Richard J. Butler, Albert Prieto-Márquez, Mark A. Norell
Date01 May ReferenceNat. Commun. 3 : 804 doi: 10.1038/ncomms1815 (2012)

着ぐるみパンダ

中国でパンダを野生に返すトレーニング

野生の生き物を飼育して野生に返すというのは簡単ではないんですね。でも実際どのくらい効果があるのでしょう?

2012年4月30日月曜日

Edgewood County Park

先日Highway 280沿いにあるEdgewood County Park and Natural Preserveに行ってきました。ガイド付きツアーがあるというチラシを見つけたからです。10時集合で解散したのが13時半くらいと結構長いツアーでした。
今回のツアーは植物観察がメインです。ボランティアのガイドの人はもちろん、一緒にいたツアー客も植物に造詣が深い人が多く、勉強にもなる楽しいツアーでした。公園内は丘があり割と高低差もあり、森と草原の両方があるので違う環境の植物を一カ所で見ることができました。

Countyのウェブサイト。
Edgewood Park & Natural Preserve

こちらはボランティア団体の作っているウェブサイト。ガイド付きツアーもこちらが主体で行われています。
Friends of Edgewood



2012年4月29日日曜日

アコヤガイゲノム

アコヤガイ(Pinctada fucata)のゲノムが日本のグループにより解読されました。軟体動物の初めてのゲノム報告です。軟体動物では他にPacific oyster (Crassostrea gigas)、California sea hare (Aplysia californica)、owl limpet (Lottia gigantea)のゲノム解読が進行中です。アコヤガイとPacific oysterは二枚貝、後ろの2種は巻貝の仲間です。

Draft Genome of the Pearl Oyster Pinctada fucata: A Platform for Understanding Bivalve Biology
Takeuchi T, Kawashima T, Koyanagi R, Gyoja F, Tanaka M, Ikuta T, Shoguchi E, Fujiwara M, Shinzato C, Hisata K, Fujie M, Usami T, Nagai K, Maeyama K, Okamoto K, Aoki H, Ishikawa T, Masaoka T, Fujiwara A, Endo K, Endo H, Nagasawa H, Kinoshita S, Asakawa S, Watabe S, Satoh N.
DNA Res. 2012;19(2):117-30. Epub 2012 Feb 6.
PMID: 22315334 [PubMed - in process] Free PMC Article

2012年4月26日木曜日

論文の引用動向による日本の研究機関ランキング

論文の引用動向からみる日本の研究機関ランキングを発表

によると、東京大学が1位、以下、京都大学、大阪大学、科学技術振興機構、東北大学、理化学研究所、名古屋大学、九州大学、産業技術総合研究所、北海道大学の順だそうです。論文の総被引用数順に並べたものということなので、規模の大きい研究機関ほどこの順位は高いということですね。従って世界での順位が下がるのは日本の研究の質の低下よりも、大規模な研究所が海外に出来ることの影響の方が大きいと思われます。中国などが発展すれば相対的に日本の地位が落ちるのは当然です。

ちなみに情報源は、ESSENTIAL SCIENCE INDICATORSというサービスだそうです。

2012年4月25日水曜日

昆虫食

変温(外温)動物に比べて、恒温(内温)動物がエネルギーを多く消費するのは周知の事実です。つまり、家畜(哺乳類)、家禽(鳥類)はエネルギーを多く消費する割に少ない量の肉しか生産しないということになります。また、食物連鎖の上の方にいる生き物を育てるほどエネルギー効率が悪くなります。地球上で得られる太陽エネルギーは有限ですから、植物を食べるか、さもなくば植物を食べる一次消費者の動物を食べるのが最もエネルギー効率が良い生き方です。その動物の候補の1つが昆虫です。実際、歴史的にも、イナゴ、蜂の子などの昆虫は肉や魚介を食べられない地方で貴重なタンパク質源として食べられてきました。

ゲテモノ扱いをされて敬遠されることも多いですが、人口増加に伴う食糧問題を考えると、昆虫食を真剣に考えるときが来ていると思います。

オランダで「昆虫料理本」出版、人口増加に備えたタンパク質源に

氷河期の花の再生

Nature ダイジェストの特別公開記事を見つけたのでリンク。
3万年前の花が咲いた

3万年前にリスが埋めた種子から胎座組織を取り出し組織培養することでスガワラビランジ(Silene stenophylla)を花咲かせる事に成功したそうです。

2012年4月24日火曜日

Ice Plant? or Sea Fig?

先日Marine Headlandsで見た植物は、Ice Plantだと思っていたのですが、Redwood National Parkのウェブサイトではよく似た植物がSea figとして紹介されていました。我々が見たのはどちらなのかと思い、Wikipediaで少し調べてみました。
Ice Plantは学名Carpobrotus edulis、Sea Figは学名Carpobrotus chilensis。どちらも同じ南アフリカ原産で、同じ属の近縁種です。実際カリフォルニアの海岸地帯では交雑して雑種が見られるようです。Ice Plantは花が大型で黄色や薄いピンク色、Sea Figは花がやや小さめで深紅色だそうです。
改めて我々が見た花を写真で見てみると、色はピンクなのでIce Plantのようです。大きさはというと、正確には覚えていないので明言できません。白い花もあるのですが、"White ice plant"でググって出てくる花に似ているので、どうやら白いIce Plantもあるようです。

植物分類学は専門ではないので、間違っているかもしれません。引用は自己責任でお願いします。




2012年4月19日木曜日

Coursera

以前紹介したスタンフォード大学(Stanford University)のOnline無料講義が、発展して新しくなりました。スタンフォード大学に加えて、新しく、プリンストン大学(Princeton University)、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)、ミシガン大学(University of Michigan)、ペンシルバニア大学(University of Pennsylvania)が参加して、講義の種類もぐんと増えています。

Coursera

現時点で開講が決まっている生物学系の講義としては、

Basic Behavioral Neurology, July 2012 start, 4 - 5 weeks
Fundamentals of Pharmacology, June 2012 start, 4 - 5 weeks
Introduction to Genome Science, TBA
Vaccines, June 2012 start, 4-5 weeks
が決まっています。

他にも関連するものとして、Game Theory、Statistics Oneなどが役立ちそうです。

2012年4月18日水曜日

Marine Headlands

今年は例年と違い雨が4月までずれこんでいます。雨期が始まったのも実質3月に入ってからでした。その雨の合間を縫って以前行けなかったMuir Woodsへ行ってきました。

と書きたいところだったのですが、同じ考えの人が多かったらしく駐車場に止めることが出来ませんでした。前回代わりに行ったMuir Beachにも駐車できず、結局たどり着いたのがMarine Headlands。Marine HeadlandsはちょうどSan Franciscoの対岸にある自然保護区にあります。ここには傷ついた海棲野生動物保護の施設Marine Mammal Centerやユースホステルがあります。今回は到着時間が遅かったのもあり、ハイキングを楽しんできました。

海岸沿いの丘にマツバギクの仲間の植物がちょうど花の季節を迎えており、気持ちの良い散策でした。

2012/04/07撮影。

2012年4月17日火曜日

毒をもって毒を制す:AID/APOBECは毒だった

今回は個人的に大好きなAravindのグループの研究を紹介します。彼らはタンパク質の配列比較のエキスパートで非常に遠縁の関係のタンパク質を見つけてきてその機能や進化を推定する研究に特徴があります。下の研究紹介のブログも面白いので時々読んでいます。
Research Highlights of the Aravind group


今回の論文はdeaminase-like foldというタンパク質グループの話です。deaminase-like foldは核酸やヌクレオチドの脱アミノ活性を持つタンパク質の構造で、 JAB domainなどのヌクレオチド代謝に関わるタンパク質を含むグループです。

Evolution of the deaminase fold and multiple origins of eukaryotic editing and mutagenic nucleic acid deaminases from bacterial toxin systems
Iyer LM, Zhang D, Rogozin IB, Aravind L.
Nucleic Acids Res. 2011 Dec;39(22):9473-97. Epub 2011 Sep 3.
PMID: 21890906 [PubMed - indexed for MEDLINE] Free PMC Article

著者らは精密な配列比較によってこのdeaminase-like foldを持つであろう多くのタンパク質を見つけました。新しく見つかってきたもののほとんどは遺伝子の並び等の解析からバクテリアのトキシン(毒)であろうと推測されました。トキシンは株間で阻害しあうために使われるもの、遠縁のバクテリアを阻害するものの2グループが見つかってきました。面白いのはトキシンがたびたび真核生物に取り込まれて、tRNAやmRNAの修飾に用いられていることが示唆されたことです。その中にはAID/APOBECも含まれています。AIDはimmunoglobulin遺伝子のhyper mutationに、APOBECはレトロウイルスやレトロトランスポゾンの転写産物に変異を加えてタンパク質が機能できないようにする経路で働いています。ある意味、APOBECもウイルスやトランスポゾンに対するトキシンだということですね。

2012年4月16日月曜日

Syncytinの転写抑制

以前本サイトでも紹介しましたが、霊長類の2つの遺伝子、Syncytin-1とSyncytin-2はレトロウイルスのEnv遺伝子に由来する遺伝子で、胎盤での細胞融合に働いています。しかし逆に胎盤以外の領域でこれらの遺伝子が発現すると細胞融合を引き起こし有害となります。この論文では、DNAメチル化、ヒストントリメチル化により胎盤以外の組織ではSyncytinの転写が抑制されていることを明らかにしています。


Epigenetic regulation of transcription and splicing of syncytins, fusogenic glycoproteins of retroviral origin
Trejbalová K, Blazková J, Matousková M, Kucerová D, Pecnová L, Vernerová Z, Herácek J, Hirsch I, Hejnar J.
Nucleic Acids Res. 2011 Nov 1;39(20):8728-8739. Epub 2011 Jul 19.

2012年4月15日日曜日

Zinc finger recombinase

Zinc finger nucleaseはZinc fingerに制限酵素由来のendonucleaseドメインをつないだもの、Zinc finger recombinaseはZinc fingerにserine recombinaseをつないだものです。このZinc finger recombinaseにより特定の配列を持った2つのDNA領域をつなぎ替えることができるそうです。Zinc fingerとrecombinaseの間のリンカーは短い方が特異性が高かったというのは意外でした。

Zinc-finger recombinase activities in vitro
Prorocic MM, Wenlong D, Olorunniji FJ, Akopian A, Schloetel JG, Hannigan A, McPherson AL, Stark WM.
Nucleic Acids Res. 2011 Nov;39(21):9316-28. Epub 2011 Aug 17.
PMID: 21849325 [PubMed - indexed for MEDLINE] Free PMC Article

2012年4月14日土曜日

転移因子抑制の際のpiwiの使い分け

もう半年前の話になりますが、piwiタンパク質とLINE-1(L1)の抑制に関する論文が2本同時にNatureに掲載されました。

piwiとpiRNAは雄生殖細胞で転移因子をDNAメチル化を介して抑制する機能を担っています。マウスには3種類のpiwiがあり、Miwi、Miwi2およびMiliと呼ばれています。マウスで特に活性の高い転移因子はnon-LTR retrotransposonのL1とLTR retrotransposonのIAPですので抑制の研究はこの2つが主な対象となります。

The endonuclease activity of Mili fuels piRNA amplification that silences LINE1 elements
De Fazio S, Bartonicek N, Di Giacomo M, Abreu-Goodger C, Sankar A, Funaya C, Antony C, Moreira PN, Enright AJ, O'Carroll D.
Nature. 2011 Oct 23;480(7376):259-63. doi: 10.1038/nature10547.

この論文では、Miliのエンドヌクレアーゼ活性に必須なアミノ酸を置換すると、転移因子を抑制するためのpiRNA量が低下する事を明らかにしています。このエンドヌクレアーゼに依存したpiRNAの増殖はL1の抑制には必須ですが、IAPの抑制には必要ではないことがわかりました。一方で、Miwi2の変異体ではpiRNAの量に変化は認められませんでした。

Miwi catalysis is required for piRNA amplification-independent LINE1 transposon silencing
Reuter M, Berninger P, Chuma S, Shah H, Hosokawa M, Funaya C, Antony C, Sachidanandam R, Pillai RS.
Nature. 2011 Nov 27;480(7376):264-7. doi: 10.1038/nature10672.

この論文では、残りの1つMiwiについて調べています。論文によると、Miwiのエンドヌクレアーゼ活性に必須なアミノ酸を置換した変異体マウスは不妊になり、L1の転写量が増加していました。MiwiはL1のmRNAを直接切断することが示され、この系はpiRNAの増殖を必要としないことも支持されました。

パラログの関係にあるこの3つの遺伝子はどうやら使い分けされているようですね。

2012年4月13日金曜日

テロメア特異的non-LTR retrotransposonの転写制御

モデル生物の代表格とも言えるショウジョウバエはテロメア反復配列を持っていません。その代わりに、HeT-A、TART、TAHREなどと呼ばれるnon-LTR retrotransposonが染色体末端に転移してその機能を担っています。これらの転移因子は、カイコの仲間に見られるTRAS、SARTや最近紹介した菌類のMoTeRなどとは異なり、テロメア反復配列に挿入されるのではなく染色体末端に転移するのだと考えられています。

Mechanism of the piRNA-mediated silencing of Drosophila telomeric retrotransposons
Shpiz S, Olovnikov I, Sergeeva A, Lavrov S, Abramov Y, Savitsky M, Kalmykova A.
Nucleic Acids Res. 2011 Nov 1;39(20):8703-11. Epub 2011 Jul 15.

HeT-Aのプロモータをつけた遺伝子を導入するとゲノム上のどの位置に挿入してもpiRNAの制御を受けることがわかりました。RNAi系に関わるspn-Eの変異体やpiwiのノックダウン個体ではHeT-AやTART、そしてHeT-Aのプロモータをつけた導入遺伝子の転写も増加することがわかりました。これらの個体では他の転移因子の転写も活性化していました。従って、piRNA系は通常他の転移因子同様HeT-A等のテロメア特異的non-LTR retrotransposonをも転写抑制していることになります。

どうやらHeT-A等のテロメア特異的non-LTR retrotransposonが特別扱いされているわけではないことを示しているだけのような印象ですが、もしかしたら、積極的にテロメア長の制御に寄与しているのかもしれません。

2012年4月12日木曜日

マンモス巡業中

生後約1か月のケナガマンモスの死骸が世界10都市を巡回中だそうです。名前はリューバ(Lyuba)。今は香港のデパートにいるらしいです。

赤ちゃんマンモス「リューバ」の死骸、12日から香港で一般公開

最初の公開地はシカゴで最後はロンドンだそうです。

永久凍土から発見の子マンモス、世界10都市で公開へ

今年から来年は東アジアから東南アジアを廻ります。
仔マンモス「リューバ」、巡業の旅に出る

2012年4月11日水曜日

Zinc finger nucleaseでヒトゲノムにプラスミドを挿入

以前タイトルだけチェックした論文の内容をまだ見ていなかったので連続投稿します。

Targeted plasmid integration into the human genome by an engineered zinc-finger recombinase OPEN ACCESS
Gersbach CA, Gaj T, Gordley RM, Mercer AC, Barbas CF 3rd.
Nucleic Acids Res. 2011 Sep 1;39(17):7868-78. Epub 2011 Jun 7.

著者らは以前ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いてヒトゲノムの特定の位置に目的の配列を挿入する方法を報告している。この論文では、2段階かけてゲノム上のどこにでも目的の配列を挿入する方法を報告している。まずpiggyBacを用いて、ジンクフィンガーヌクレアーゼの標的となる配列をランダムに挿入する。続いてトランスフェクションしたプラスミドをジンクフィンガーヌクレアーゼを用いてそのゲノム座位に挿入する。

どういう意味があるのかちょっと見ではわからないのですが、いろいろと応用の可能性があるのかもしれません。

2012年4月10日火曜日

Cyanophora paradoxaのゲノム

狭義の植物の仲間は3つのグループに分けられます。すなわち、緑色植物、紅色植物、そして灰色植物です。灰色植物の葉緑体(シアネレ)は他の2グループと同じ共生に由来すると考えられてきましたが、とても原始的に見えるため、独立に取り込んだ藍藻であるという異論もありました。緑色植物では陸上植物を含めて多種のゲノムが、紅色植物では紅藻のCyanidioschyzon merolaeのゲノムが解読されていましたが、今回灰色植物のゲノムも解読されました。

Cyanophora paradoxa genome elucidates origin of photosynthesis in algae and plants.
Price DC, Chan CX, Yoon HS, Yang EC, Qiu H, Weber AP, Schwacke R, Gross J, Blouin NA, Lane C, Reyes-Prieto A, Durnford DG, Neilson JA, Lang BF, Burger G, Steiner JM, Löffelhardt W, Meuser JE, Posewitz MC, Ball S, Arias MC, Henrissat B, Coutinho PM, Rensing SA, Symeonidi A, Doddapaneni H, Green BR, Rajah VD, Boore J, Bhattacharya D.
Science. 2012 Feb 17;335(6070):843-7.
PMID: 22344442 [PubMed - in process]

これによると上記3グループが藍藻を共生した共通祖先を持っていること、葉緑体からの栄養の輸送と細胞質での保存のためにクラミジア類の細菌から遺伝子を取り込んだことが示されました。

2012年4月9日月曜日

イトヨ(トゲウオ)ゲノム

イトヨ(Gasterosteus aculeatus)のゲノムが報告されました。

The genomic basis of adaptive evolution in threespine sticklebacks
Jones FC, Grabherr MG, Chan YF, Russell P, Mauceli E, Johnson J, Swofford R, Pirun M, Zody MC, White S, Birney E, Searle S, Schmutz J, Grimwood J, Dickson MC, Myers RM, Miller CT, Summers BR, Knecht AK, Brady SD, Zhang H, Pollen AA, Howes T, Amemiya C; Broad Institute Genome Sequencing Platform & Whole Genome Assembly Team, Baldwin J, Bloom T, Jaffe DB, Nicol R, Wilkinson J, Lander ES, Di Palma F, Lindblad-Toh K, Kingsley DM.
Nature. 2012 Apr 4;484(7392):55-61. doi: 10.1038/nature10944.
PMID: 22481358 [PubMed - in process]

イトヨは最終氷期以降にいろいろな湖や川に適応し成功した生物種です。このため、進化のモデルとして研究が進められています。この論文では、1個体のゲノムを詳細に解析してreferenceとした上で、海、湖、川から20個体を採集しそのゲノムを読んで比較しています。それぞれ別の環境に適応した個体群でも同じ変異を共有している場合があり、それは母集団で元々多型として存在していた変異が別々に固定されたものだとわかります。これまで報告されている並行進化の例では、タンパク質をコードする領域の変異よりも調節領域の変異の方が多く見つかりました。

2012年4月8日日曜日

羽毛を持ったティラノサウルス

A gigantic feathered dinosaur from the Lower Cretaceous of China
Xu X, Wang K, Zhang K, Ma Q, Xing L, Sullivan C, Hu D, Cheng S, Wang S.
Nature. 2012 Apr 4;484(7392):92-5. doi: 10.1038/nature10906.
PMID: 22481363 [PubMed - in process]

白亜紀前期のティラノサウルス類の新種Yutyrannus hualiが羽毛を持っていた事が報告されています。狭義のティラノサウルスの仲間ではないのですが、全長9メートルという大型の恐竜が羽毛を持っていたというのは驚きです。

図が無いとイメージしにくいのでScientific Americanの記事を引用しておきます。
There are giant feathered tyrannosaurs now… right?

2012年4月7日土曜日

Gamble Gardenの桜

パロアルトのElizabeth Gamble Gardenの桜です。去年は4月2日に見に行って満開でした。今年もほとんど変わらない時期に満開になりました。2012/04/04撮影。

2012年4月6日金曜日

冬虫夏草のゲノム

冬虫夏草の仲間Cordyceps militarisのゲノムが解読されました。グループとしては子嚢菌です。

Genome sequence of the insect pathogenic fungus Cordyceps militaris, a valued traditional Chinese medicine.
Zheng P, Xia Y, Xiao G, Xiong C, Hu X, Zhang S, Zheng H, Huang Y, Zhou Y, Wang S, Zhao GP, Liu X, St Leger RJ, Wang C.
Genome Biol. 2011 Nov 23;12(11):R116. [Epub ahead of print]

2012年4月5日木曜日

菌類で見つかったテロメア特異的non-LTR retrotransposon

特定の反復配列だけに挿入される転移因子は主にnon-LTR retrotransposonで見つかっています。中でもリボソームRNA遺伝子に挿入されるものは多数知られています。また、マイクロサテライトに挿入されるものも、マイクロサテライトの種類は様々ですが多数見つかって来ています。一方、不思議な事にテロメア反復配列に挿入されるものとしては、これまでTRASとSARTの2グループが昆虫から見つかっているだけでした。ようやく今回、別のテロメア反復配列特異的non-LTR retrotransposonが菌類で報告されました。

Telomere-targeted Retrotransposons in the Rice Blast Fungus Magnaporthe oryzae: Agents of Telomere Instability.
Starnes JH, Thornbury DW, Novikova OS, Rehmeyer CJ, Farman ML.
Genetics. 2012 Mar 23. [Epub ahead of print]
PMID: 22446319 [PubMed - as supplied by publisher]

イネいもち病菌Magnaporthe oryzaeで見つかり、MoTeRと名付けられたこのnon-LTR retrotransposonは系統的にはスプライスリーダー配列に挿入されるCRE/SLACS/CZARと近縁で、制限酵素様のエンドヌクレアーゼをコードしています。これはTRASとSARTがapurinic-like endonucleaseを持っているのと異なり、全く異なる起源であることを示しています。またCnl1を含む、より近縁な菌類のnon-LTR retrotransposonは詳細に調べるとテロメア反復配列由来の配列を両側に持っている事がわかり、これらを含めたグループがテロメア反復配列への標的特異性を持っている事が示されました。

テロメア反復配列は数が多い一方で、遺伝子ではないので挿入しても問題が起こらないという、まさに理想的な標的だと思うのですが、これまでTRASとSARTしか見つかっていないのが長らく謎でした。この研究によりようやく別のグループでもテロメアを標的とするnon-LTR retrotransposonが進化して来た事がわかりました。

2012年4月2日月曜日

Repbase Reports Volume 12, Issue 3

Repbase Reportsの今年第3号が出版されました。今号では、先月に引き続いて、大豆(Glycine max)の配列、それから2種のショウジョウバエ (Drosophila ananassae, Drosophila erecta)の転移因子、ウサギ(Oryctolagus cuniculus)の反復配列を1つ報告しています。

Repbase Reports Volume 12, Issue 3

Repbase ReportsはGIRIが発行している、真核生物の反復配列を報告するオンラインの科学雑誌です。配列、分類と簡単な特徴の報告だけですが、反復配列の一次情報源として論文でも引用されています。Repbase Reportsに掲載された配列は、反復配列データベースであるRepbase Updateに収録され、配布されます。学術研究者はユーザー登録することでどちらも無料で閲覧できます。

2012年4月1日日曜日

シーラカンスのHarbinger

タイトルは面白いが...

A living fossil in the genome of a living fossil: Harbinger transposons in the coelacanth genome
Smith JJ, Sumiyama K, Amemiya CT.
Mol Biol Evol. 2012 Mar;29(3):985-93. Epub 2011 Oct 31.
PMID: 22045999 [PubMed - in process]

シーラカンスのゲノム中からHarbingerを見つけ、その転写とエンハンサー活性を調べた論文。これまで知られていたharbi1とnaif1に加えて、tsnare1もHarbinger由来の遺伝子らしい。

2012年3月31日土曜日

昆虫ゲノム中のラブドウイルス由来配列

小島生物学御研究室でも「80. 脊椎動物ゲノムの中のRNAウイルス化石」として紹介したように、ここ1、2年の間に、ゲノムに挿入されたRNAウイルス配列が次々に見つかってきました。以下の論文もその1つで、節足動物の核ゲノム中にラブドウイルスの配列が挿入されている事を示しています。ラブドウイルスは狂犬病ウイルスを含む一本鎖RNAウイルスの仲間です。

Fossil rhabdoviral sequences integrated into arthropod genomes: ontogeny, evolution and potential functionality.
Fort P, Albertini A, Van-Hua A, Berthomieu A, Roche S, Delsuc F, Pasteur N, Capy P, Gaudin Y, Weill M.
Mol Biol Evol. 2012 Jan;29(1):381-90. Epub 2011 Sep 13.
PMID: 21917725 [PubMed - in process]

著者らはラブドウイルスの配列が節足動物のゲノムにだけ挿入されている事を報告し、その配列の詳細を解析している。そのほとんどは、Aedes aegyptiIxodes scapularisのゲノムから見つかり、一部の配列では負の淘汰圧が認められた。つまり、一部のラブドウイルス由来の配列は宿主の生存に有利に働いている可能性がある。

Aedes aegyptiは大量の転移因子を蓄積している事がわかっています。我々の仮説に従えば、このラブドウイルス由来の配列の挿入は集団サイズの縮小に伴って遺伝的浮動により蓄積された可能性があります。ただ、この論文のデータの場合には、逆転写酵素の活性が必須なので、レトロトランスポゾンの活性化に伴ってRNAウイルスの逆転写が頻繁に起こった可能性は否定できません。

2012年3月30日金曜日

ミトコンドリアでのテロメラーゼの役割

利己的遺伝因子の最古の家畜化の1つであるテロメラーゼタンパク質はテロメア反復配列の付加だけでなく、いろいろな経路に関わっていることが最近わかってきています。

Human telomerase acts as a hTR-independent reverse transcriptase in mitochondria
Sharma NK, Reyes A, Green P, Caron MJ, Bonini MG, Gordon DM, Holt IJ, Santos JH.
Nucleic Acids Res. 2012 Jan;40(2):712-25. Epub 2011 Sep 21.
PMID: 21937513 [PubMed - indexed for MEDLINE] Free PMC Article

テロメア反復配列を伸ばす役割を持つヒトのテロメラーゼのタンパク質部分(hTERT)は逆転写酵素の一種です。hTERTは核以外にミトコンドリアにも局在することが知られていましたが、その機能は不明でした。この論文では、ミトコンドリアにはテロメラーゼRNAは存在しないこと、しかしミトコンドリアにおけるhTERTの影響は逆転写酵素活性に依存していること、hTERTがミトコンドリア内でtRNAなどと結合していることを示しています。

2012年3月29日木曜日

彗星の衝突がヤンガー・ドリアス期を引き起こした?

ニュースによると1万2900年前ごろに北米大陸に彗星の衝突か空中爆発があったのが気候変動を引き起こしたという説が唱えられたようです。

縄文時代にも大規模な彗星衝突か 米などの研究チーム

北米大陸には剣歯虎やマンモスなどの大型の哺乳類が多数生息していました。しかし人類の到達と前後してこれらの大型動物たちは絶滅してしまいます。このため、人類による狩猟が大型哺乳類の絶滅の原因だという考えが長らく支配的でした。しかし、実際には、大型動物の減少は人類の到達以前から始まっていた可能性が高いことがわかってきており、今回の報告もその流れに沿ったもののようです。

Evidence from central Mexico supporting the Younger Dryas extraterrestrial impact hypothesis
Israde-Alcántara I, Bischoff JL, Domínguez-Vázquez G, Li HC, Decarli PS, Bunch TE, Wittke JH, Weaver JC, Firestone RB, West A, Kennett JP, Mercer C, Xie S, Richman EK, Kinzie CR, Wolbach WS.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Mar 5. 109 (13): E738-E747
PMID: 22392980 [PubMed - as supplied by publisher] Free Article

2012年3月28日水曜日

恐竜絶滅以前の多丘歯目哺乳類の適応放散

脊椎動物の歴史において中生代は爬虫類の時代、新生代は哺乳類の時代だとよく言われます。実際には新生代は鳥類の時代でもあるのですが、それはさておき、哺乳類の祖先は本当に中生代には恐竜のおかげで肩身の狭い思いをしていたのでしょうか?

Adaptive radiation of multituberculate mammals before the extinction of dinosaurs
Wilson GP, Evans AR, Corfe IJ, Smits PD, Fortelius M, Jernvall J.
Nature. 2012 Mar 14;483(7390):457-60. doi: 10.1038/nature10880.
PMID: 22419156 [PubMed - in process]

哺乳類は一般に恐竜が白亜紀末に絶滅した後に恐竜のくびきから解放されて多様化したと考えられています。しかし一方で哺乳類の中生代の化石には多様性が認められますを。著者らは中生代に繁栄した哺乳類のグループ多丘歯類の生態的多様性を体系的に解析しています。それによると多丘歯類の多様化は恐竜絶滅の2000万年以上前には始まっており、顎の形態から、食虫性から食植性への進化がはっきりと示されました.これらのことは哺乳類の多様化が恐竜の絶滅によって始まったのではなく、被子植物の進化によって引き起こされたのだということを示しています。

2012年3月27日火曜日

不完全な擬態

昆虫のハチ、アリに擬態している昆虫は多数存在します。ハチに擬態した虎縞模様を持つ昆虫としては、ガ、カミキリムシ、などが知られていますが、最も多くみかけるのはアブの仲間ではないでしょうか?

A comparative analysis of the evolution of imperfect mimicry
Penney HD, Hassall C, Skevington JH, Abbott KR, Sherratt TN.
Nature. 2012 Mar 21;483(7390):461-4. doi: 10.1038/nature10961.
PMID: 22437614 [PubMed - in process]

ハナアブ(hoverfly)はハチの仲間に擬態しているハエの仲間です。彼らのベイツ型擬態は完璧なものもあれば、完璧とはとても言いがたいようないい加減なものもあります。この論文では何故いい加減な擬態が成立しているのかを調べています。その答えは、ハナアブは小さくて餌としてはあまり魅力が無いため。体のサイズと擬態の完璧さは相関しており、餌として魅力的な大型の種では擬態を完璧に近づけないと捕食されてしまうらしい。

2012年3月26日月曜日

オーストラリアのメガファウナの絶滅

メガファウナとは大型動物を指し、食料を大量に消費する事から環境への影響が大きい生き物たちです。現在ではゾウがそれに当たります。有史以前、氷河期にはメガファウナが多かったのですが、人類の到達と時期をほぼ同じくしてメガファウナのほとんどは滅びてしまいました。
最近ではアメリカ大陸のメガファウナの絶滅は人類の到達が直接の原因ではないという説が主流になってきたように感じていましたが、オーストラリアのメガファウナへの人類の影響を示した論文が出版されました。

The Aftermath of Megafaunal Extinction: Ecosystem Transformation in Pleistocene Australia
Rule S, Brook BW, Haberle SG, Turney CS, Kershaw AP, Johnson CN.
Science. 2012 Mar 23;335(6075):1483-1486.
PMID: 22442481 [PubMed - as supplied by publisher]

この論文では、オーストラリアのメガファウナの絶滅が気候変動よりも人類の到達による影響が大きく、それにより熱帯雨林が草原にシフトしたことを示唆する結果を得ています。

2012年3月22日木曜日

飛べない甲虫の多様化

Nature Communicationsに掲載された甲虫類の多様化に関する論文の全文日本語訳が出ていました。

飛翔能力の退化が甲虫類の多様化を促進する

カブトムシやクワガタムシなどの仲間、甲虫類は動物の中で最も種数が多いグループです。昆虫は飛翔能力を獲得した節足動物として非常に繁栄していますが、一方で飛ぶ能力を喪失した系統が頻繁に発生しています。ノミ、シラミなどの寄生性のものはもちろん、ナナフシ、アリ、ガ、など多くのグループで飛べなくなった種が存在しています。これは空を飛ぶコストが非常に高い事に起因しています。羽根だけでなく、飛翔のための筋肉の発生、維持には大量のエネルギーを必要とするためです。
論文では飛ぶ能力を喪失した系統を含むシデムシ類を用いて、飛べないグループでは飛べるグループに比べて集団間の遺伝的距離が増加していることを示しています。飛べない事により集団間での遺伝子の交流が少なくなり、集団間で分化が起こりやすくなることを示しています。このようにして甲虫類は非常に種数が多くなったようです。

原著論文は以下。
Loss of flight promotes beetle diversification
Ikeda H, Nishikawa M, Sota T.
Nat Commun. 2012 Jan 31;3:648. doi: 10.1038/ncomms1659.
PMID: 22337126 [PubMed - in process] Free PMC Article

2012年3月19日月曜日

MER20と胎盤形成

胎盤形成にはPEG10などのBEL superfamilyのLTR retrotransposonが関わっていることが知られていましたが、hAT superfamilyのDNAトランスポゾンもリクルートされているようです。

Transposon-mediated rewiring of gene regulatory networks contributed to the evolution of pregnancy in mammals
Lynch VJ, Leclerc RD, May G, Wagner GP.
Nat Genet. 2011 Sep 25;43(11):1154-9. doi: 10.1038/ng.917.


この論文では、哺乳類の子宮内膜細胞における遺伝子調節を比較RNA-Seq法によって調べ、有胎盤類の子宮内膜細胞では1532の遺伝子が新たに発現していることを見つけている。これらの遺伝子の内、13%では転移因子MER20が200kb以内に位置していた。MER20がエンハンサー、インシュレーター、リプレッサーとしての活性を持っており、妊娠に必要な転写因子に直接結合し、プロゲステロンやcAMPに応答して遺伝子発現を協調的に調節することがわかった。これらの結果は妊娠の進化が遺伝子調節ネットワークの大規模な再構築に伴って生じた可能性を示している。

2012年3月18日日曜日

MEGA5 Mac版インストール

首都大の田村先生らが作っているMEGA5がMac OSXやLinuxに対応していることを発見しました。これまでもMEGAが相当便利なことはわかっていたのですが、Windows PCを研究に使っていないので意識的に無視していました。しかし、Macでも使えるとなると別で、早速インストールしてみました。

MEGA::Molecular Evolutionary Genetics Analysis

Mac版は実際には、Wineskinの上にWindows版を載せたものです。Wineskinは、WineというLinux系OS上でWindows用に作られたソフトウェアを動かすためのプログラムのGUIをMacOSXネイティブ風にしたもののようです。細かい話はともかく、インストールも起動も、Mac用のソフトウェアと全く変わりありませんでした。以前試してみたPublish or Perish + Wineよりも遙かに快適です。

2012年3月17日土曜日

ミクロラプトルの羽毛

4枚の翼を持つ、鳥類に近い小型恐竜Microraptorは虹色に光る羽根を持っていた可能性があるそうです。

虹色に輝く黒い羽根=1億3000万年前の小型恐竜—異性にアピール? ・米中チーム

Reconstruction of Microraptor and the evolution of iridescent plumage.
Li Q, Gao KQ, Meng Q, Clarke JA, Shawkey MD, D'Alba L, Pei R, Ellison M, Norell MA, Vinther J.
Science. 2012 Mar 9;335(6073):1215-9.
PMID: 22403389 [PubMed - in process]

鳥類の羽根が虹色に光るのは、メラニンを含んだ顆粒メラノソームが綺麗に並んでいるためです。恐竜のMicroraptorの化石を調べたところ、メラノソームの並び方が虹色に光る鳥類の羽根に似ていることがわかりました。もしかしたら、羽根は当初からセックスアピールに用いられていたのかもしれません。

2012年3月16日金曜日

Google Scholar Citations

先日必要があり、自分の論文の引用件数を調べていました。もちろん以前からGoogle Scholarで引用件数が調べられるのは知っていたのですが、統計も表示することができるということを発見しました。

そこで、自分の論文の引用件数の統計を作成して、公開してみました。
Google Scholar Citations
ウェブサイトにも修正してリンクを貼っておきました。

Google Scholarは非常に良くできた解析ツールで、On lineで見ることができる論文は全て表示されます。ただ、同じ論文が違うサイトにあったりすると二重で表示することがあります。それらはMerge機能を使って一緒にすることができます。一方、他人の論文が混ざってしまうこともありますが、こちらはDelete機能で削除できます。雑誌に掲載されるタイプの学会のAbstract(Genes and Genetic Systemsに載る遺伝学会の要旨など)もあったのですがこれらは引用されることは基本的に無いし、少なくとも生物系では論文としても認められないので削除しました。

まとめてみると順調に引用件数が増えているのがわかり少し嬉しくなりました。今のところ、引用件数は重複した論文が含まれているのはわかっているので完璧なデータではないのですが、無料で使えてこれだけの使いやすさならばとても便利です。

2012年3月15日木曜日

平ぺったい頭を持ったワニ

復元図が気に入ったのでもう一つEpoch Timesから。

‘Shieldcroc’: The Prehistoric Crocodile With a Bump On Its Head

原著論文は以下。
A new eusuchian crocodyliform with novel cranial integument and its significance for the origin and evolution of Crocodylia.
Holliday CM, Gardner NM.
PLoS One. 2012;7(1):e30471. Epub 2012 Jan 31.

9500万年前の地層から見つかったクロコダイルの仲間Aegisuchus witmeriを報告した論文です。