2012年12月24日月曜日

2種類のウイルスの協調

RNAウイルスは、RNA polymeraseの複製の際の高いエラー率により、速く進化します。麻疹ウイルスはエンベロープタンパク質をコードするRNAウイルスです。エンベロープタンパク質はウイルス粒子の外側の膜と細胞膜とを融合させ、ウイルスを細胞内に侵入させる役割を持っています。

Cooperation between different RNA virus genomes produces a new phenotype
Shirogane Y, Watanabe S, Yanagi Y.
Nat Commun. 2012 Dec 4;3:1235. doi: 10.1038/ncomms2252.
PMID: 23212364 [PubMed - in process]

組換えによりエンベロープタンパク質の機能を破壊した麻疹ウイルスをしばらく継代するとやがて膜融合の機能を回復した変異ウイルスが自然に発生しました。意外な事に、これらの変異ウイルスは2つのRNAを同じウイルス粒子中に含んでいました。1つは野生型のエンベロープタンパク質を持ち、もう一つはタンパク質の機能を破壊されたエンベロープタンパク質をコードしていました。それぞれ単独では細胞膜を融合させることができないものの、2つ同時だと効率よく膜融合を起こす事ができました。これは別種のウイルスの協調と呼べる現象で、もしかするとウイルスの進化において重要な役割を果たして来たのかもしれません。

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