2011年9月30日金曜日

イグノーベル賞

今年もイグノーベル賞の授賞式の季節がやってきました。
わさび臭で火災知らせる装置にイグ・ノーベル賞
わさびで覚醒に成功=5年連続で日本人—イグ・ノーベル賞

と、日本ではわさびが話題ですが、個人的には生物学賞がヒットです。
「ある種の甲虫は、ある種のオーストラリア産ビール瓶と交尾しようとする」
"a certain kind of beetle mates with a certain kind of Australian beer bottle"
1983-84年に発表された研究成果が評価されたようです。
四半世紀前の報告ですから、もちろんそれから大いに発展しているのでしょうね。原因物質が特定されているかもしれません。

元サイトは以下。
Winners of the Ig® Nobel Prize

2011年9月29日木曜日

鱈のゲノム

タイセイヨウマダラ(大西洋真鱈, Atlantic cod, Gadus morhua)のゲノムが公開されました。側棘鰭上目に属する硬骨魚としては初めてのゲノムです。

The genome sequence of Atlantic cod reveals a unique immune system
Star B, Nederbragt AJ, Jentoft S, Grimholt U, Malmstrøm M, Gregers TF, Rounge TB, Paulsen J, Solbakken MH, Sharma A, Wetten OF, Lanzén A, Winer R, Knight J, Vogel JH, Aken B, Andersen O, Lagesen K, Tooming-Klunderud A, Edvardsen RB, Tina KG, Espelund M, Nepal C, Previti C, Karlsen BO, Moum T, Skage M, Berg PR, Gjøen T, Kuhl H, Thorsen J, Malde K, Reinhardt R, Du L, Johansen SD, Searle S, Lien S, Nilsen F, Jonassen I, Omholt SW, Stenseth NC, Jakobsen KS.
Nature. 2011 Aug 10;477(7363):207-10. doi: 10.1038/nature10342.

タイセイヨウマダラでは他の脊椎動物と異なり、免疫系の遺伝子であるMHC II、CD4、invariant chain (Ii)が失われている代わりに、MHC IとToll-like receptorが多様化してその機能を補っているようです。

2月の学会のSpeaker list

来年2月24日からの"Genomic Impact of Eukaryotic Transposable Elements"の学会の確定講演者のリストです。

Program

PDFファイル

最新の論文の正式版PDFファイルができましたのでリンクを貼ります。
以下のアブストラクトのページの右側から飛んでください。
Families of transposable elements, population structure and the origin of species.
Jurka J, Bao W, Kojima KK
Biology Direct 2011; 6:44. Epub 2011 Sep 19.

2011年9月28日水曜日

恐竜の羽毛

琥珀に恐竜の羽毛11点 進化の過程はっきり カナダ

原著は以下。
A Diverse Assemblage of Late Cretaceous Dinosaur and Bird Feathers from Canadian Amber
McKellar RC, Chatterton BD, Wolfe AP, Currie PJ.
Science. 2011 Sep 16;333(6049):1619-22.

琥珀の中に閉じ込められた羽毛の解析。原羽毛と呼べる恐竜の原始的な羽毛や、より進化した鳥類の羽毛を報告している。後期白亜紀には、飛ぶのに適した羽毛や、海に潜るのに適した羽毛を持った鳥類が進化したことがわかった。

2011年9月27日火曜日

ホーミングエンドヌクレアーゼI-CreIの標的認識

論文メモ。
Context dependence between subdomains in the DNA binding interface of the I-CreI homing endonuclease
Grizot S, Duclert A, Thomas S, Duchateau P, Pâques F.
Nucleic Acids Res. 2011 Aug 1;39(14):6124-36. Epub 2011 Apr 10.

ホーミングエンドヌクレアーゼは利己的な遺伝子の一種で、ゲノム中の特定の配列を切断し、そこに自身のコピーを修復機構に依存して挿入されることで集団中のコピー数を増やす。比較的短い配列を認識する制限酵素と異なり、比較的長い配列を認識するため、制限酵素と相補する形での遺伝子工学での応用が期待されている。ただし標的配列は通常ゲノム中に1コピーしかなく、そのままでの応用は困難である。従って、人為的に新しい標的配列を切断する酵素を作り出す必要があるが、そのためには、どのようにしてDNAを認識するのかについての理解が必要である。
この論文では、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼI-CreIのDNA結合領域にアミノ酸置換を体系的に導入して、その変化を調べている。その結果、3つの領域に分かれるDNA結合領域のそれぞれの領域をまたいだ相互作用はあまり強い影響を持たないことが明らかとなった。従って、新しい標的配列を認識する酵素を開発するためには、それぞれの領域を個別に改変したものを組み合わせることが可能であると考えられる。

2011年9月26日月曜日

ノーベル賞予想

毎年恒例のThomson-Reutersのノーベル賞受賞予想が発表されました。毎年追加されていく形式のようです。

2011 Predictions

新たに、医学生理学賞の候補者となったのは、

Robert L. Coffman, Timothy R. Mosmann
「2種類のT細胞TH1とTH2の発見」

Brian J. Druker, Nicholas B. Lydon, Charles L. Sawyers
「慢性リンパ腫の治療薬としてのimatinibとdasatinibの開発」

Robert S. Langer, Joseph P. Vacanti
「組織エンジニアリングと再生医療への貢献」

Jacques F. A. P. Miller,
「T細胞とB細胞の同定と胸腺の機能の発見」

日本人で医学生理学賞の候補になっているのは以下の人々。

Shinya Yamanaka(山中 伸弥)
「iPS細胞の開発」
Seiji Ogawa (小川 誠二)
「fMRIの基礎技術の開発」
Shizuo Akira (審良 静男)
「Toll-like receptorと自然免疫の研究」
Yasutomi Nishizuka (西塚 泰美)故人
「Protein Kinase Cの発見」

2011年9月25日日曜日

首長竜

首長竜は胎生だった? 化石から胎児

中生代の水棲爬虫類では胎生のものが多く知られている。しかし、首長竜の仲間(プレシオサウルス類)では胎生の証拠は得られていなかった。今回、幼生がおなかにいる首長竜の化石が見つかった。これは首長竜が胎生であったことを示していると考えるのが最も利にかなっている。

中生代の水棲爬虫類としては、首長竜(プレシオサウルス類)の他、海トカゲ(モササウルス類)、魚竜(イクチオサウルス類)、ワニ、カメなどが知られている。三畳紀後期に現れ白亜紀末まで栄えた首長竜は鰭竜類(Sauropterygia)に属し、鰭竜類は、ヘビ・トカゲ類の姉妹群である。海トカゲはオオトカゲやヘビに近縁な有鱗類(Squamata)であり、魚竜は双弓類(Diapsida)の古くに分岐したグループで、現生の全ての爬虫類・鳥類の姉妹群である。

原論文は以下。
Viviparity and K-Selected Life History in a Mesozoic Marine Plesiosaur (Reptilia, Sauropterygia)
O'Keefe FR, Chiappe LM.
Science. 2011 Aug 12;333(6044):870-3.

2011年9月24日土曜日

SpongeBob

(9/22)人気アニメ「スポンジ・ボブ」は幼児にはまだ早い?

アメリカではスポンジ・ボブは大人気だそうです。スポンジが主人公で海の生き物を題材にしたアニメです。スポンジは海綿ですから海の生き物ですよね。最近IKEAに行った際も子供達がかじりつきで見ていました。少し見ただけですが、結構下品で、親が見せたくないアニメだというのも頷けました。
これで見せない理由が一つ増えたようです。

2011年9月23日金曜日

擬態を維持する超遺伝子

Chromosomal rearrangements maintain a polymorphic supergene controlling butterfly mimicry
Joron M, Frezal L, Jones RT, Chamberlain NL, Lee SF, Haag CR, Whibley A, Becuwe M, Baxter SW, Ferguson L, Wilkinson PA, Salazar C, Davidson C, Clark R, Quail MA, Beasley H, Glithero R, Lloyd C, Sims S, Jones MC, Rogers J, Jiggins CD, ffrench-Constant RH.
Nature. 2011 Aug 14;477(7363):203-6. doi: 10.1038/nature10341.

Supergene(超遺伝子)はひとかたまりの遺伝子の集まりであり、組み換えにより分離しない。擬態する蝶の一種であるHeliconius numataでは2つの多型が維持されている。この多型の遺伝子座Pには、色彩に関与する、少なくとも2つの遺伝子が、400kbほどの間隔で18個以上の遺伝子を挟んで位置している。この2つの遺伝子の間では、近縁種では組み換えが起こるが、この種では全く組み換えが起こらないように抑制されている。機構は不明だが、このように複数の遺伝子があたかも1つの遺伝子のように振る舞うことで、大きな形態的差異をもたらす多型が維持されているらしい。

Heliconius numataのGoogle画像検索結果

Heliconius numataは南米原産のドクチョウ。

2011年9月22日木曜日

Biology Direct

Biology Directはユニークな雑誌です。

Impact Factorは3.74とそれほど高くありませんが、独特の取り組みをしています。それは、peer reviewの過程が全て公開されるというものです。Reviewerの名前も公表され、コメントとそれに対する著者らの返答まで全て公開されています。このため、頭の悪いコメントをしたり、難癖をつけたりすると恥をかくことになります。

個人的には、reviewerとしてコメントをしたり、著者としてそれに対して返答するための教材として、この雑誌は大変有用だと思っています。というのはその辺りのやり方は、共著の論文で先達に学ぶしか通常は方法がなく、体系的な方法が教えられるわけではありません。どうしても身近な人の真似になります。そこで、全く別のやり方を学ぶにはBiology Directが参考になります。

2011年9月21日水曜日

転移因子と種分化の関係

共著の論文がBiology Directから出版されました。ボスが筆頭著者です。私はデータの解析でお手伝いしました。

Families of transposable elements, population structure and the origin of species.
Jurka J, Bao W, Kojima KK
Biology Direct 2011; 6:44. Epub 2011 Sep 19.

転移因子には種特異的なものが多く見られ、しかも大量に蓄積している事がわかっていました。つまり、転移因子の増殖と種分化には相関関係があることが示されていました。ここから、転移因子の増殖が新しい遺伝子や遺伝子調節領域を作ることで種分化が引き起こされるのだと言う仮説が提示されていました。

今回の仮説は全く逆で、種分化の過程で有効集団サイズの縮小が起こり、遺伝的浮動が起こりやすくなる事で転移因子が固定されるというものです。転移因子の転移はほとんどの場合、有害か弱有害なので、大集団では淘汰圧により失われて行きます。一方、小さな集団では遺伝的浮動により確率的に固定される割合が増えます。周辺種分化では大集団から小集団が分離し、そこから新しい種が派生するので、この仮説とよく合致します。

考えてみるとごく自然な発想で、これまで誰も公表していないのが不思議なくらいです。

2011年9月20日火曜日

Googleにturkey vulture

今朝Googleの敷地内で2羽のTurkey vulture(ヒメコンドルCathartes aura)が留まっているのを発見。始めはカラスだと思ったけれど、頭が赤かったのでわかりました。
AlvisoやAlum Rockでは見たことがあったけれど、こんな間近に来ているのを見たのは初めて。交通事故死した動物の臭いに惹きつけられてきたのでしょうね。

カメラを持ってなかったので写真はありません。

2011年9月19日月曜日

ジュラ紀の哺乳類

論文メモ。
A Jurassic eutherian mammal and divergence of marsupials and placentals
Luo ZX, Yuan CX, Meng QJ, Ji Q.
Nature. 2011 Aug 24;476(7361):442-5. doi: 10.1038/nature10291.

ジュラ紀1億6千万年前に生息した真獣類(有胎盤類)の化石の報告。有袋類と真獣類の分岐がそれ以前におこっていた事を示す証拠となる。2グループの分岐年代はTIME TREEの結果では1億5600万年前なので、相当初期の真獣類の化石と言えるだろう。

2011年9月18日日曜日

ネコに惹かれるネズミ

スタンフォード大学の広報から。

Parasite uses the power of sexual attraction to trick rats into becoming cat food

Toxoplasmaに感染したラットはネコに対する恐怖心が薄れることが知られている。Toxoplasmaの有性生殖はネコ科の動物の腸内でのみ起き、無性生殖はネコ科を含む幅広い哺乳類や鳥類で行われる。したがってネコ科動物が終宿主、その他の動物は中間宿主である。


通常のラットはネコの尿に忌避反応を起こす。しかし感染したラットはより多くの時間をその付近で過ごす。Toxoplasmaはラットの脳に寄生するが、中でも海馬に好んで寄生する。生来の忌避反応をもたらす神経がネコの尿に反応する程度は、寄生により低下し、その近傍にある性的魅力に対する反応を促す神経が活性化される。
実際に性的魅力を感じているのかはまだ明瞭ではないが、何らかの形でToxoplasmaが宿主の環境応答に影響を与えているのは確かなようだ。そしてそれはラットがネコに食べられることを通してToxoplasmaが最終宿主のネコに移動するために役立っている。

Predator Cat Odors Activate Sexual Arousal Pathways in Brains of Toxoplasma gondii Infected Rats OPEN ACCESS
House PK, Vyas A, Sapolsky R.
PLoS One. 2011;6(8):e23277. Epub 2011 Aug 17.

2011年9月17日土曜日

Puccinia striiformesゲノム

重要な小麦の病原菌Puccinia striiformesのゲノムを次世代シーケンサーで解読した共同研究がPLoS ONEから出版されました。私は反復配列の探索と同定を担当しました。

Cantu D, Govindarajulu M, Kozik A, Wang M, Chen X, Kojima KK, Jurka J, Michelmore RW, Dubcovsky J.
Next generation sequencing provides rapid access to the genes of wheat stripe rust.
PLoS ONE, 2011; 6(8):e24230. Epub 2011 Aug 31.

MuDR superfamilyに属する新しいグループとしてMuDRFを、
Tc1/Mariner superfamilyに属する新しいグループとしてSaganを報告しています。

Pucciniaのうち、3種類は小麦の病原菌として重要な菌類です。
Puccinia striiformes:wheat stripe rust
Puccinia triticina:wheat leaf rust
Puccinia graminis:wheat stem rust
ややこしいですね。

2011年9月16日金曜日

ホームページ一新

ホームページ:小島生物学御研究室の構成を一新しました。まだ構成だけですが、これから少しずつ新しい項目を追加していく予定です。まずは、利己的遺伝因子の紹介から始めたいと思っています。

2011年9月15日木曜日

石炭紀の巨大昆虫

ナショナルジオグラフィックのニュースから。
古代の昆虫、巨大化の謎に新説

石炭紀にはメガニウラなどの巨大昆虫が生息していたことが知られている。これらの巨大昆虫の生息はこの時代に酸素濃度が30%程度と非常に高く、呼吸によるエネルギー産生の効率が非常に良かったことによると考えられてきた。しかし、この話では、むしろこの高すぎる酸素濃度から身を守るために昆虫は巨大化したという説が紹介されている。

研究でわかったことは、「カワゲラの幼虫は地上で暮らす成虫よりも酸素の変動の影響を受けやすい 」ということ。昆虫の成虫は気管により呼吸に必要な酸素を体内に取り込む。体表にある気門を開閉することで体内に取り込む酸素の量をコントロールしている。一方幼虫は体表全体から酸素を吸収する。酸素量の制御ができないため、対策として体積に占める体表の割合を下げる必要がある。すなわち、体サイズの増加である。体積は長さの3乗、面積は長さの二乗に比例するため、体サイズが増大するほど体積に占める体表面積は小さくなる。従って、「酸素濃度が高い時代には巨大な幼虫が増え、それに伴って巨大な成虫が増えることになった」というのが今回の説である。

カワゲラの幼虫は水中に生息する。一方、陸上昆虫の幼虫は気管を持っている。気管が複雑になりすぎると気管の表面のクチクラごと脱皮する際に失敗する可能性が増える。これが昆虫の巨大化の上限を決めているらしい。

Can oxygen set thermal limits in an insect and drive gigantism? OPEN ACCESS
Verberk WC, Bilton DT.
PLoS One. 2011;6(7):e22610. Epub 2011 Jul 27.

2011年9月14日水曜日

瀬藤さんのブログ

七夕ミーティングで招待講演されていた浜松医科大学の瀬藤さんの研究室のHPとブログを見つけたのでリンク。
細胞生物学研究室
瀬藤のブログ

懇親会で少しだけお話ししました。

2011年9月13日火曜日

New journal "Mobile Genetic Elements"

知り合いのラボの最近の論文を見ていて発見しました。Mobile DNAに引き続きこんな雑誌まで創刊されていたとは...

Mobile Genetic Elements

最初の1年間は購読料も掲載料も無料だそうです。
Mobile DNAも創刊されて間もないのに、似た雑誌を次々作ってどうするつもりなのでしょう??

2011年9月12日月曜日

転移因子の挿入位置を調べるツールELAN

転移因子の挿入位置の配列の特徴を調べるツールELANの論文。結果にはほとんど新規性は無いのでソフトウェアの開発がメイン。

Genome-wide analysis of mobile genetic element insertion sites
Rawal K, Ramaswamy R.
Nucleic Acids Res. 2011 Sep 1;39(16):6864-78. Epub 2011 May 23.

下のページには、ミツバチのゲノムでAlu(!)を調べた結果などあり面白い。
ELAN

2011年9月11日日曜日

最期っ屁

Wikipediaによると、スカンクが肛門傍洞腺(肛門嚢)から放出する分泌液は主に、(E)-2-butene-1-thiol, 3-methyl-1-butanethiol, and 2-quinolinemethanethiolの3つのチオールとそのアセチルチオエステルです。



チオール基は-SHで、チオール基を持つ分子は、卵の腐った臭い、温泉の硫化水素臭に似た臭いがします。チオールの1種、2-メルカプトエタノールは実験でよく使いましたが、やはり似た臭いですね。

シマスカンク

野生のスカンクを生まれて初めて目撃しました。

それは夕方の散歩の時間。Mountain Viewの海際にあるShoreline at Mountain View Parkを歩いている途中、子供時代に嗅いだ「バキュームカー」の悪臭がする場所がありました。ここはいつも水が腐ったような臭いがするため今回もそれだと思って通り過ぎたのですが、その後、よろよろと歩く黒白の獣を目撃。明らかにスカンクです。さきほどの臭いもスカンクのものだとわかりました。

体表の模様とからして、striped skunk (学名Mephitis mephitis、和名シマスカンク)と思われます。

スカンクはアメリカでは割と普通にいる哺乳類です。しかし普段は人間の前には出てこないのでこれまで見たことがなかったのですが、今回のスカンクはとてもよろよろと歩いています。おそらく先ほどの悪臭は「最期っ屁」だったのでしょう。車は通らないところなので何に撥ねられたかはわかりませんが、体表に血は見られないので内臓破裂かなにかでしょう。

最後には倒れて動けなくなってしまったスカンクを講演の管理官か野生動物の保護の仕事の人が網で捕まえて車で連れて行きました。傷が治って野生に戻れると良いのですが...



2011年9月10日土曜日

Sclerotinia sclerotiorumとBotrytis cinereaのゲノム

菌核病菌Sclerotinia sclerotiorumと灰色かび病菌Botrytis cinereaのゲノムが解読されました。どちらも子嚢菌に属し、植物病原体で農業被害をもたらします。一方で、後者に寄生されたブドウは、成分が凝集されるため甘みの強い貴腐ワインの原料になります。

両種は近縁でアミノ酸レベルで88%の類似性があるそうです。私と関係のあるところでは、Sclerotinia sclerotiorumのゲノムの7%以上が転移因子に由来するのに対して、Botrytis cinereaは1%以下しか転移因子を持っていません。

Genomic Analysis of the Necrotrophic Fungal Pathogens Sclerotinia sclerotiorum and Botrytis cinerea OPEN ACCESS
Amselem J, Cuomo CA, van Kan JA, Viaud M, Benito EP, Couloux A, Coutinho PM, de Vries RP, Dyer PS, Fillinger S, Fournier E, Gout L, Hahn M, Kohn L, Lapalu N, Plummer KM, Pradier JM, Quévillon E, Sharon A, Simon A, Ten Have A, Tudzynski B, Tudzynski P, Wincker P, Andrew M, Anthouard V, Beever RE, Beffa R, Benoit I, Bouzid O, Brault B, Chen Z, Choquer M, Collémare J, Cotton P, Danchin EG, Da Silva C, Gautier A, Giraud C, Giraud T, Gonzalez C, Grossetete S, Güldener U, Henrissat B, Howlett BJ, Kodira C, Kretschmer M, Lappartient A, Leroch M, Levis C, Mauceli E, Neuvéglise C, Oeser B, Pearson M, Poulain J, Poussereau N, Quesneville H, Rascle C, Schumacher J, Ségurens B, Sexton A, Silva E, Sirven C, Soanes DM, Talbot NJ, Templeton M, Yandava C, Yarden O, Zeng Q, Rollins JA, Lebrun MH, Dickman M.
PLoS Genet. 2011 Aug;7(8):e1002230. Epub 2011 Aug 18.

2011年9月9日金曜日

Albugo laibachiiのゲノム

卵菌の1種Albugo laibachiiのゲノムが報告されました。この論文では、biotrophy(寄生した宿主を殺さない寄生の形)に焦点を当てて研究をまとめています。

Gene Gain and Loss during Evolution of Obligate Parasitism in the White Rust Pathogen of Arabidopsis thaliana OPEN ACCESS
Kemen E, Gardiner A, Schultz-Larsen T, Kemen AC, Balmuth AL, Robert-Seilaniantz A, Bailey K, Holub E, Studholme DJ, Maclean D, Jones JD.
PLoS Biol. 2011 Jul;9(7):e1001094. Epub 2011 Jul 5.

2011年9月8日木曜日

Rancho San AntonioにMountain Lion

ロスアルトスヒルズでマウンテンライオン注意報

ここシリコンバレー周辺で最大の野生肉食獣はMountain Lionです。Mountain Lionは学名をPuma concolor。日本ではピューマという名前が一般的です。英名はcougarなどもありますが、この辺りでは、北アメリカ大陸最大の野生ネコ類であること、山地に生息することからMountain Lionと呼ばれています。

Aureococcus anophagefferensのゲノム

二次共生藻のペラゴ藻の1種Aureococcus anophagefferensのゲノムが報告されました。赤潮の原因となる藻類の1種です。

Niche of harmful alga Aureococcus anophagefferens revealed through ecogenomics.OPEN ACCESS
Gobler CJ, Berry DL, Dyhrman ST, Wilhelm SW, Salamov A, Lobanov AV, Zhang Y, Collier JL, Wurch LL, Kustka AB, Dill BD, Shah M, VerBerkmoes NC, Kuo A, Terry A, Pangilinan J, Lindquist EA, Lucas S, Paulsen IT, Hattenrath-Lehmann TK, Talmage SC, Walker EA, Koch F, Burson AM, Marcoval MA, Tang YZ, Lecleir GR, Coyne KJ, Berg GM, Bertrand EM, Saito MA, Gladyshev VN, Grigoriev IV.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Mar 15;108(11):4352-7. Epub 2011 Feb 23.

2011年9月7日水曜日

フカヒレ禁止法

カリフォルニアでフカヒレ禁止へ

カリフォルニア州でフカヒレの所持、販売が禁止になりそうです。Monterey Bay Aquariumもこの法律の成立を応援しているようです。

UCSC Extension in Silicon Valley

カリフォルニア大学群(University of California,UC)には10個のキャンパスがあり、カリフォルニア州に分散して位置しています。以下がそのリストで、

* カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)
* カリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis)
* カリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)
* カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)
* カリフォルニア大学マーセド校(University of California, Merced)
* カリフォルニア大学リバーサイド校(University of California, Riverside)
* カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)
* カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)
* カリフォルニア大学サンタバーバラ校(University of California, Santa Barbara)
* カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California, Santa Cruz)

シリコンバレー近郊には、バークレー校、サンフランシスコ校、サンタクルーズ校の3校があります。(サクラメント近郊のデービス校も比較的近い。)それに加えて、サンタクルーズ校の分校、UCSC Extensionがシリコンバレーの中心部サンタクララにあります。UCSC Extensionは主に社会人向けに講義を行なう教育施設で、学部生や大学院は存在しません。そのUCSC Extensionの説明会に先日行ってきました。

UCSC Extension in Silicon Valley

参加した説明会はBiotechnology and Bioinformaticsのものでしたが、UCSC Extensionの講義を受講している人数が年間1万人、そのうち、18%がPh.DまたはMDの持ち主という数値は驚きでした。講義は企業の研究者・役員や他の大学(Stanford University等)の教員が兼担しているようです。(専任の教員もいるのかもしれません。)内容もかなり本格的で、大学院としての内容のようです。いわゆる社会人向けの一般教養講座ではありません。

2011年9月6日火曜日

新しいインプリント座

論文メモ。

Novel retrotransposed imprinted locus identified at human 6p25
Zhang A, Skaar DA, Li Y, Huang D, Price TM, Murphy SK, Jirtle RL.
Nucleic Acids Res. 2011 Jul 1;39(13):5388-400. Epub 2011 Mar 18.

新規のインプリント座をFAM50B遺伝子の近傍に発見した.FAM50Bとそのアンチセンス鎖FAM50B-ASは父親由来だけ転写されていた。FAM50Bは有袋類と有胎盤類にはあるが、単孔類と鳥類からは見つからなかった。さらに、オポッサムとマウスではFAM50Bは両方の親由来で転写されていた。従ってFAM50Bはげっ歯類と分かれた後に霊長類の系統で新規にインプリント遺伝子になったと考えられる。この遺伝子の機能は不明だが、発現の異常は精巣のガンを誘発することから精子形成に重要な遺伝子であると考えられる。

2011年9月5日月曜日

スズメに近縁なオウム

論文メモ。

Mesozoic retroposons reveal parrots as the closest living relatives of passerine birds OPEN ACCESS
Suh A, Paus M, Kiefmann M, Churakov G, Franke FA, Brosius J, Kriegs JO, Schmitz J.
Nat Commun. 2011 Aug 23;2:443. doi: 10.1038/ncomms1448.

スズメ目は鳥類の半分の種を含む巨大なグループであるが、その系統的位置はこれまで明瞭ではなかった。この論文では、レトロトランスポゾンの挿入の有無により、スズメ目に最も近い現生の鳥類はオウム目であることを明らかにしている。またその次に近いのはハヤブサ目である。ちなみにいわゆる猛禽類の内、タカ類、コンドル類、フクロウ類などはハヤブサ・オウム・スズメに共通するレトロトランスポゾンの挿入を持っておらず、別系統であることも示されている。また、これまでに示されて来た系統群については多くが支持されている。(走鳥類、キジカモ類、その他の鳥類、など)

しかし、上記の系統関係は、
A phylogenomic study of birds reveals their evolutionary history.
Hackett SJ, Kimball RT, Reddy S, Bowie RC, Braun EL, Braun MJ, Chojnowski JL, Cox WA, Han KL, Harshman J, Huddleston CJ, Marks BD, Miglia KJ, Moore WS, Sheldon FH, Steadman DW, Witt CC, Yuri T.
Science. 2008 Jun 27;320(5884):1763-8.
で既にかなりの信頼性で提示されており、今回の論文はその証明という側面が強い.レトロトランスポゾンの挿入による系統関係の推定はかなり断定的なことが言えるのでその点では意味があるが、全く新規の系統関係が明らかになったわけではないところが、この論文がNature Communicationsにでた理由であろう。

ゲノム解読されたゼブラフィンチ(スズメ目)のゲノム情報をとっかかりに研究を行っているので、スズメ目のより最近の進化についての情報が多く得られている。また、解析に用いたレトロトランスポゾンはCR1とendogenous retrovirusのLTRである。

2011年9月4日日曜日

ダンスで科学を表現する

Announcing the 2011 'Dance Your Ph.D.' Contest

「あなたが科学者ならあなた以上にあなたの博士論文のことを知っている人はいません。(もしかしたら、あなたしか本当にそれを理解していないかもしれません。)では、どうやってあなたの博士研究を友人や家族に説明しますか?」

「踊ればいいじゃない?(Why not dance?)」

というのがこの「Dance Your Ph.D.」の趣旨だそうです。賞金は最高で千ドル+ブリュッセルへの渡航費。

The “Dance Your Ph.D.” Contest 2011

2011年9月2日金曜日

貝殻とイルカ

貝殻使って漁するイルカ=仲間内で広まる? —豪大学研究

文化の定義はともかくとして、集団内で広まっているのだったら興味深いですね。

Repbase Reports 11(8)

Repbase Reportsの今年第8号が公開されました。今号は4種の真菌(Puccinia graminis, Puccinia triticina, Melanopsora larici-populina, Schizophyllum commune)、ポプラ(Populus trichocarpa)、珪藻の1種(Phaeodactylum tricornutum)の転移因子を報告しています。
また、MuDR superfamilyに属するグループMuDRF、Mariner/Tc1 superfamilyに属するグループSaganの報告も簡単にしています。詳細については現在in pressの別の論文で報告しています。

Repbase Reports 2011, Volume 11, Issue 8

2011年9月1日木曜日

脊椎動物進化の3つの革新時期

論文メモ。
Three Periods of Regulatory Innovation During Vertebrate Evolution

5種の脊椎動物のゲノム配列比較から高度に保存されていながら転写されていない配列conserved nonexonic elements (CNEEs)を同定し、これを調節領域と見なした。これが進化上のどの時期に強い淘汰圧を受けているのかを解析したところ、3つの段階が特徴づけられた。まず、脊椎動物の初期進化では転写因子や発生関連遺伝子の周辺のCNEEが淘汰を受けており、次は細胞外シグナル伝達系の遺伝子の周辺のCNEE、最後が翻訳後タンパク質修飾因子の周辺のCNEEであった。

Santa Cruzにザトウクジラ

最近、Santa Cruzのボードウォークのそばまでザトウクジラが接近してくるそうです。浅瀬にクジラが来ることが決して珍しくないのが、今回のクジラは浅瀬に長い間とどまっているところが珍しいのだそうです。

サンタクルーズのビーチの浅瀬にザトウクジラ
Humpback hangs out off Santa Cruz shoreline