2011年12月31日土曜日

年越し蕎麦

4回目の蕎麦打ち。体調を崩してしまったのであきらめようと思っていた年越し蕎麦、何とか間に合いました。妻のつくるそばつゆも益々美味しくなってきました。NYは年を越した模様。

2011年12月30日金曜日

MacPorts, GraphViz, Xcodeインストール

GraphVizというソフトウェアをインストールしたくて、その準備として、MacPortsのインストールを行いました。以下はメモ書きです。

The MacPorts Project Official Homepage

MacPortsはUnixのFinkと同様のコンセプトで、フリーソフトウェアのインストール支援のためのフリーソフトウェア。

Index of /MacPortsから自分のMacのバージョンLeopard(MacOSX 10.5)にあったMacPorts-1.8.0-10.5-Leopard.dmgをダウンロード。すなわちバージョンは1.8.0。そのままディスクイメージをダブルクリックして、インストール。

X11を立ち上げて、
$ sudo port -v selfupdate

MacPortsはコマンドプロンプトではportという名前。
マニュアルを見たければ、
$ man port

graphvizを検索。(検索はsearchオプションで。)
$ port search graphviz

見つかったgraphvizをインストール。(インストールはinstallオプション。sudoはsuperuser権限での実行。)
$ sudo port install graphviz

エラー発生。
Xcodeのバージョンが要3.1以降なのに3.0なのが原因の一つ。

無料で入手可能なXcode3.2をダウンロードしインストールしようとしたが、Snow Leopard移行にしか対応していないため、インストールできない。
つまり、LeopardでGraphVizを動かす方法は現時点では無いらしい。OSをアップグレードする必要があるということ。

Snow Leopard以降を持っている人には有用かもしれないのでとりあえず公開しておきます。

2011年12月29日木曜日

タルウマゴヤシのゲノム

マメ科の植物タルウマゴヤシ(学名Medicago truncatula、英名はBarrel Medic)のゲノムが報告されました。

The Medicago genome provides insight into the evolution of rhizobial symbioses
Young ND, Debellé F, Oldroyd GE, Geurts R, Cannon SB, Udvardi MK, Benedito VA, Mayer KF, Gouzy J, Schoof H, Van de Peer Y, Proost S, Cook DR, Meyers BC, Spannagl M, Cheung F, De Mita S, Krishnakumar V, Gundlach H, Zhou S, Mudge J, Bharti AK, Murray JD, Naoumkina MA, Rosen B, Silverstein KA, Tang H, Rombauts S, Zhao PX, Zhou P, Barbe V, Bardou P, Bechner M, Bellec A, Berger A, Bergès H, Bidwell S, Bisseling T, Choisne N, Couloux A, Denny R, Deshpande S, Dai X, Doyle JJ, Dudez AM, Farmer AD, Fouteau S, Franken C, Gibelin C, Gish J, Goldstein S, González AJ, Green PJ, Hallab A, Hartog M, Hua A, Humphray SJ, Jeong DH, Jing Y, Jöcker A, Kenton SM, Kim DJ, Klee K, Lai H, Lang C, Lin S, Macmil SL, Magdelenat G, Matthews L, McCorrison J, Monaghan EL, Mun JH, Najar FZ, Nicholson C, Noirot C, O'Bleness M, Paule CR, Poulain J, Prion F, Qin B, Qu C, Retzel EF, Riddle C, Sallet E, Samain S, Samson N, Sanders I, Saurat O, Scarpelli C, Schiex T, Segurens B, Severin AJ, Sherrier DJ, Shi R, Sims S, Singer SR, Sinharoy S, Sterck L, Viollet A, Wang BB, Wang K, Wang M, Wang X, Warfsmann J, Weissenbach J, White DD, White JD, Wiley GB, Wincker P, Xing Y, Yang L, Yao Z, Ying F, Zhai J, Zhou L, Zuber A, Dénarié J, Dixon RA, May GD, Schwartz DC, Rogers J, Quétier F, Town CD, Roe BA.
Nature. 2011 Nov 16;480(7378):520-4. doi: 10.1038/nature10625.


マメ科植物は根粒菌と共生し、窒素固定をすることができるため、肥料、飼料として有用です。同じマメ科では既に2種( ダイズGlycine maxとミヤコグサLotus japonicus)のゲノムが既に読まれています。

2011年12月28日水曜日

逆転写酵素阻害剤で癌細胞のL1が活性化する

少し古い論文ですが、最近論文検索をしていて見つけたので紹介します。

癌細胞では通常は抑制されているはずの転移因子が活性化していることがよくあります。ヒトではDNA型の転移因子は全て死滅しており、転移可能なものは、自身の逆転写酵素を利用して転移するレトロトランスポゾンのL1やHERV (human endogenous retrovirus)です。

The reverse transcription inhibitor abacavir shows anticancer activity in prostate cancer cell lines.
Carlini F, Ridolfi B, Molinari A, Parisi C, Bozzuto G, Toccacieli L, Formisano G, De Orsi D, Paradisi S, Grober OM, Ravo M, Weisz A, Arcieri R, Vella S, Gaudi S.
PLoS One. 2010 Dec 3;5(12):e14221.

この論文では、逆転写酵素阻害剤のAbacavir (ABC)が前立腺癌細胞の増殖を抑制し、癌の転移や浸潤を抑制することを示しています。ABCの投与によりL1のmRNA量は増加します。

残念ながら、L1の逆転写の阻害で転写量が増加するということに明瞭な答えは得られていませんので、今後の研究の進展を期待したいですね。

2011年12月27日火曜日

Seal Adventure Saturday

今年の正月にAno Nuevo State Parkにキタゾウアザラシを見に行きました。繁殖期の冬には、公園内は自由に入ることは出来ず、公園の主催する2.5時間のツアーに参加する必要があります。

Seal Adventure Saturday

来年1月28日のイベント"Seal Adventure Saturday"では、ツアーの時間制限無しにゾウアザラシを心ゆくまで観察することができるようです。午前(8:30-12:00)と午後(13:00-16:30)の2交代制で人数制限があります。

ツアーの参加は一人7ドルですから、このイベントの参加費一人50ドルはかなり高いです。が、写真撮影をしたい人などには魅力的でしょう。

2011 Photo Contest

去年もあったBay Area Open Spaceの写真コンテストが今年も開催されます。第4回だそうです。

2011 Photo Contest

2011年12月26日月曜日

レトロウイルスの翻訳調節

多くのレトロウイルスでは、2つの必須タンパク質GagとPolは異なるORFにコードされており、translational frameshiftingあるいはreadthroughにより、Gag単体のタンパク質とGag-Pol融合タンパク質の2種類が翻訳される。この2種類のタンパク質の量比はウイルスの効率的な複製に重要な役割を持つ。

An equilibrium-dependent retroviral mRNA switch regulates translational recoding
Houck-Loomis B, Durney MA, Salguero C, Shankar N, Nagle JM, Goff SP, D'Souza VM.
Nature. 2011 Nov 27;480(7378):561-4. doi: 10.1038/nature10657.

この論文では、核磁気共鳴法によりmurine leukaemia virusの翻訳調節領域のRNAの構造を解析し、水素イオンの結合の有無によってreadthroughの起こるRNAと起こらないRNAの構造が異なっており、生体内のpHではその量比が6%程度と、ちょうどreadthroughの起こる割合と一致している事を明らかにしている。また、frameshiftingでも同様の機構が観察された。

私もかつて、レトロウイルスの親戚であるnon-LTR retrotransposonの翻訳調節を解析した事があります。その場合には、やはりRNAの二次構造も重要でしたが、それ以上に前側のORFの終止コドンと後ろ側のORFの開始コドンがオーバーラップしていることが重要でした。これは翻訳共役と呼ばれる現象で上記の2つの機構とは異なりますが、もしかするとnon-LTR retrotransposonでも同様にpHによりRNAの二次構造の量比が変化するのが重要なのかもしれません。

Eukaryotic translational coupling in UAAUG stop-start codons for the bicistronic RNA translation of non-LTR retrotransposon SART1
Kojima KK, Matsumoto T, and Fujiwara H.
Molecular and Cellular Biology, 2005; 25 (17): 7675-7686

2011年12月25日日曜日

アノマロカリスの複眼

アノマロカリスはバージェス動物群の中でも最大級の生物で当時最強の捕食者だったと考えられています。グールドのWonderful Lifeでは所属不明な生物とされていましたが、最近の研究では、Lobopodと呼ばれるArthropod(節足動物)の姉妹群、あるいはArthropodの初期分岐群に位置づけられることが多くなっています。

Acute vision in the giant Cambrian predator Anomalocaris and the origin of compound eyes
Paterson JR, García-Bellido DC, Lee MS, Brock GA, Jago JB, Edgecombe GD.
Nature. 2011 Dec 7;480(7376):237-40. doi: 10.1038/nature10689.

この論文ではオーストラリアで見つかったアノマロカリス類から複眼の化石を報告しています。この複眼は現在の節足動物に見られるものと同じくらい精巧にできています。

ここから導かれることは、
(1)節足動物に見られる複眼は、これまで節足動物の冠動物群の共通祖先で既に獲得されていたことがわかっていましたが、それが節足動物とアノマロカリス類の共通祖先まで遡ることができる。
(2)堅い外骨格の獲得よりも複眼の獲得の方が前に起こった。
(3)当時としては巨大なアノマロカリスが精密な複眼を備えていたことは彼らが視覚を頼りにした強力な捕食者であった。

系統、生態、いろいろなことが示唆される興味深い報告です。

Happy Holidays!


こちらアメリカ合衆国では、最近ではキリスト教徒以外の人への配慮もあって、Merry Christmasではなく、Happy Holidaysと言ったり書いたりするのが普通になっています。とはいえ、クリスマスが祝日になっているのは明らかにキリスト教の習慣ですから、宗教色を廃しているとは言えないと思いますが...

GIRIのあるオフィスビルでも、11月のThanksGivingを過ぎるとすぐにクリスマスツリーが準備されます。写真はそれです。心なしか去年よりも立派なような...

2011年12月24日土曜日

新しい逆転写酵素"遺伝子"

我々も同じものを発見していたのですが、まとめる前に先を越されました。

A widespread class of reverse transcriptase-related cellular genes
Gladyshev EA, Arkhipova IR.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Aug 29. [Epub ahead of print]

ワムシを始め、多くの真核生物の系統で、新しい逆転写酵素配列を発見した。このrvtと名付けられた逆転写酵素配列は
・イントロンを持つ
・比較的遠い種間でもシンテニーを示す
・強い負の淘汰圧を受けている
・タンパク質産生の阻害で転写量が飛躍的に増加する
・ヌクレアーゼやインテグラーゼを持たない
などの理由から利己的遺伝因子ではなく、遺伝子である。
rvtは弱いながらもRNAとDNA双方を合成可能であることがin vitroの解析から示されている。
系統上は、non-LTRレトロトランスポゾンの逆転写酵素とPrp8に近縁である。面白いのは、1種の原核生物からもrvtが見つかっていること、強い淘汰圧を受けておりながら明らかに分布は断片的であり、rvtが失われた種が多数見つかることである。

2011年12月23日金曜日

KRAB−ZFタンパク質とレトロエレメントの抑制

脊椎動物のゲノム中には、zinc-finger(ZF)をタンデムに持つタンパク質が多数コードされている。しかもKRAB (Kruppel-associated box) domainをも含んでいるものが多い。これらKRAB-ZFPsはZFでDNAと、KRABでKAP1 (KRAB-associated protein 1。別名tripartite motif-containing protein 23, TRIM23)と結合する。 KAP1はヘテロクロマチン化を促すHP1やヒストンメチル化酵素ESET等を呼び込み、最終的にその領域の転写を抑制する。近年の研究で、レトロウイルスや内在性レトロウイルス、LTRレトロトランスポゾンの転写を抑制するのがKRAB−ZFタンパク質の機能の一つであることが示唆されている.

Coevolution of retroelements and tandem zinc finger genes.
Thomas JH, Schneider S.
Genome Res. 2011 Nov;21(11):1800-12. Epub 2011 Jul 22.

この研究では、LTRレトロトランスポゾンの数とKRAB−ZFタンパク質遺伝子の数との間に強い相関関係があることを明らかにしている。霊長類の解析では、新しいKRAB−ZFタンパク質遺伝子の誕生(遺伝子重複)と新しい内在性レトロウイルス(霊長類では転移可能なLTRレトロトランスポゾンは存在しない)の誕生との間に強い相関関係があること、重複した遺伝子は誕生後に急速にZFに変異を蓄積し、その後負の淘汰を受けること、が示された。ここから導かれるシナリオは、新しい内在性レトロウイルスが増殖することにより、これに対抗するためにKRAB−ZFタンパク質遺伝子が重複され新しい内在性レトロウイルスを抑制できるように進化する、というものである。

最近になって、転移因子を抑制する細胞の機構が明らかになって来ています。RNAiやエピジェネティクスを含むこれらの細胞内”免疫系”の研究は転移因子の研究をする我々にとっても興味深い話です。

2011年12月22日木曜日

成田ーサンノゼ便

ANAが成田サンノゼ便を就航
ANA、787をシアトル・サンノゼ線に投入
サンフランシスコ国際空港からだと東京に行くにはJALの羽田便が便利ですが、サンノゼ国際空港の方が我が家からは近いので、今後東京以外に行くときはANAという選択肢もできますね。歓迎です。

Google

我らがGIRIはGoogleのキャンパスに囲まれています。Googleは急拡大を続けていて次々と近くのビルを借りたり買ったりして規模を広げています。Highway 101の反対側のオフィスを借り上げたことが最近の新聞記事になっていたり。そして、


この9月にはGIRIのあるオフィスビルがGoogleに買収されました。Googleがこんな風に人生に関わってくるとは思いもしませんでした。

2011年12月21日水曜日

RNAiはRNA polymerase IIの放出によりヘテロクロマチンを維持する

RNAi promotes heterochromatic silencing through replication-coupled release of RNA Pol II
Zaratiegui M, Castel SE, Irvine DV, Kloc A, Ren J, Li F, de Castro E, Marín L, Chang AY, Goto D, Cande WZ, Antequera F, Arcangioli B, Martienssen RA.
Nature. 2011 Oct 16;479(7371):135-8. doi: 10.1038/nature10501.

ヘテロクロマチンを細胞分裂の前後で維持するにはRNAi系によりヒストンの修飾を制御する必要がある。この論文では、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeのヘテロクロマチン内で、複製開始点とnon-coding RNAの位置を変えると転写と複製の間の競争が起こることを示している。転写と連動したRNAiではRNA polymerase IIが放出され、リーディング鎖でのDNA polymerase によるDNA複製が完了し、一方でヒストン修飾酵素が複製フォーク周辺のヘテロクロマチンを維持するよう機能する。一方、RNAiが無い場合には停止した複製フォークは相同組み換えにより修復され、ヒストン修飾は保持されない。

生物兵器への転用の危険性

鳥インフル論文で削除要請 米政府の科学諮問委

また捏造かと思いましたが、生物兵器への転用の危険性から、鳥インフルエンザの実験室内合成法の詳細を削除するようにお願いしているようです。
科学論文の信頼性は再現可能性ですから、たとえ危険があるといってもそれだけで詳細を載せないというのは間違っていると思います。

2011年12月20日火曜日

蕎麦

最近、初蕎麦打ちをしました。
蕎麦(ソバ)は学名Fagopyrum esculentum。タデ科ソバ属。英語だとBuckweatと呼ばれ、「鹿の麦」というような意味です。

初めてだったのでぼろぼろに崩れてしまいましたが、味の方は比較的まともでした。もちろん探せばシリコンバレーにもそば屋はあるのですが、自分で打ってみるのも面白い体験です。大晦日までにはもう少し挑戦して味も向上させたいところです。

2011年12月19日月曜日

カンガルーのゲノム

カンガルーの1種ダマヤブワラビー(Macropus eugenii)のゲノムが解読されました。
Genome sequence of an Australian kangaroo, Macropus eugenii, provides insight into the evolution of mammalian reproduction and development.
Renfree MB, Papenfuss AT, Deakin JE, Lindsay J, Heider T, Belov K, Rens W, Waters PD, Pharo EA, Shaw G, Wong ES, Lefèvre CM, Nicholas KR, Kuroki Y, Wakefield MJ, Zenger KR, Wang C, Ferguson-Smith M, Nicholas FW, Hickford D, Yu H, Short KR, Siddle HV, Frankenberg SR, Chew KY, Menzies BR, Stringer JM, Suzuki S, Hore TA, Delbridge ML, Mohammadi A, Schneider NY, Hu Y, O'Hara W, Al Nadaf S, Wu C, Feng ZP, Cocks BG, Wang J, Flicek P, Searle SM, Fairley S, Beal K, Herrero J, Carone DM, Suzuki Y, Sugano S, Toyoda A, Sakaki Y, Kondo S, Nishida Y, Tatsumoto S, Mandiou I, Hsu A, McColl KA, Lansdell B, Weinstock G, Kuczek E, McGrath A, Wilson P, Men A, Hazar-Rethinam M, Hall A, Davis J, Wood D, Williams S, Sundaravadanam Y, Muzny DM, Jhangiani SN, Lewis LR, Morgan MB, Okwuonu GO, Ruiz SJ, Santibanez J, Nazareth L, Cree A, Fowler G, Kovar CL, Dinh HH, Joshi V, Jing C, Lara F, Thornton R, Chen L, Deng J, Liu Y, Shen JY, Song XZ, Edson J, Troon C, Thomas D, Stephens A, Yapa L, Levchenko T, Gibbs RA, Cooper DW, Speed TP, Fujiyama A, M Graves JA, O'Neill RJ, Pask AJ, Forrest SM, Worley KC.
Genome Biol. 2011 Aug 29;12(8):R81.

2011年12月18日日曜日

細胞性粘菌2種のゲノム

細胞性粘菌の2種、Dictyostelium fasciculatumPolysphondylium pallidumのゲノムが解読されました。既にDictyostelium discoideumのゲノムは読まれていますから合計で3種のゲノムが読まれたことになります。

Phylogeny-wide analysis of social amoeba genomes highlights ancient origins for complex intercellular communication
Heidel AJ, Lawal HM, Felder M, Schilde C, Helps NR, Tunggal B, Rivero F, John U, Schleicher M, Eichinger L, Platzer M, Noegel AA, Schaap P, Glöckner G.
Genome Res. 2011 Nov;21(11):1882-91. Epub 2011 Jul 14.

論文では、この3種が共通祖先から分岐したのは6億年以上前と推定しています。また転移因子の数は、Dictyostelium fasciculatumPolysphondylium pallidumではDictyostelium discoideumに比べてかなり少ないそうです。

2011年12月17日土曜日

Introduction to Database感想

10月から始まったStanford UniversityのOnline courseの1つ「Introduction to Database」が最近終了したので感想を綴ってみたいと思います。

Introduction to Database

講義の期間は10月10日から12月12日まで。内容はデータベースの形式の解説とXML等も多少含まれていましたが、その大部分はSQLに割かれていました。

参考までに講義内容の一覧を記すと、
Introduction
Relational Databases
XML Data
Relational Algebra
SQL
Relational Design Theory
Querying XML
Unified Modeling Language
Indexes
Constraints and Triggers
Transactions
Views
Authorization
Recursion
On-Line Analytical Processing
NoSQL Systems


ストリーミング形式でのビデオレクチャーは聴き取りやすく快適でした。ダウンロードして視聴することもできますが、それだと途中に挟まれるクイズが出来ないという問題がありました。(私は気づかずに半分くらいのビデオをクイズなしでやっていました。)ただし、途中で長時間止めてしまうと不具合が出ることがありました。これが1週あたり1時間から2時間の間の長さがあり、毎週続けて聴くのはかなりの負担でした。

しかしそれ以上に大変だったのが、宿題です。毎週数問から10問程度のクイズ、またはプログラミングエクササイズが課題(宿題)として出され、多いときには、課題だけで1週間で5時間程度かけたこともありました。そして中間テストと期末テストがあり、どちらも20問ほどを2時間の制限時間で解きました。どちらのテストも週末3日間で終わらせねばならないのでそれに合わせて日程を調整する必要があります。

私の成績は、307/323。登録者は91734人でしたが、最終的に合格(スコアで160以上)はその7%程度の6513人だったそうです。

もっともStanford Universityの学生向けに作られている講義内容を聴講する形ですので、かなりハードなのは事実です。今の秋学期はMachine Learningと2つを聴講していたので正直な感想としてかなり他の生活を犠牲にした印象があります。時間をじっくりとかけられる学生以外には1つだけ聴講するのが妥当でしょう。

このOnlineの講義はこれから拡大して続けられるようですので、気になる人は是非試してみることをお勧めします。1-3月には16種類の講義が予定されています。詳細は上記のリンクから。

2011年12月16日金曜日

網斑病病原体のゲノム

1年以上前の話ですが、
大麦の網斑病を引き起こす真菌Pyrenophora teres f. teresのゲノムが解読されていました。
A first genome assembly of the barley fungal pathogen Pyrenophora teres f. teres.
Ellwood SR, Liu Z, Syme RA, Lai Z, Hane JK, Keiper F, Moffat CS, Oliver RP, Friesen TL.
Genome Biol. 2010;11(11):R109. Epub 2010 Nov 10.

共感

気になったのでリンクだけでも。

ネズミは仲間見捨てない…米大学チーム確認

2011年12月15日木曜日

ゲノム解読論文

研究の中心が真核生物の転移因子(反復配列)の解析なので、ゲノム解読の論文は全てフォローするようにしてきました。しかし、最近のいわゆる次世代シーケンサーの登場でゲノム解読の論文の数が爆発的に増殖してきて、フォロー出来なくなってきています。先日久しぶりにGenome Biologyの記事を見たら、大量にゲノム解読の論文が出ていて驚きました。
新規生物種の解読だけではなく、近縁種、近縁株など細かい分野に入ってきたり、次世代シーケンサーでの粗い解析、ゲノム解読の論文のインパクトも大きなばらつきがあり、特に近縁種の解読などは私の興味からは外れている場合も多い現状です。
これからは気になったものだけ記事にすることにしたいと思います。

2011年12月14日水曜日

A new horizon of retroposon research

Fujihara Seminar 2012 A new horizon of retroposon research
暫定ホームページが立ち上がっていたのに気づいたのでリンクを貼っておきます。私のかつての上司の岡田先生に今の上司のJerzy Jurkaが招待されています。

マリモ

阿寒湖のマリモ、アイスランドに分家…鳥が運ぶ

といっても鳥が阿寒湖からアイスランドまで1世代で運んでいったわけではなさそうです。

2011年12月13日火曜日

日本の科学行政

新薬開発「日本は無力」…国の推進役、米大学へ
中村祐輔・東京大学教授がシカゴ大学へ移籍するそうです。

日本はどうなってしまうのか、心配です。

水虫ゲノム

高温多湿の日本の風土病とも言うべき水虫、タムシの病原体の仲間、白癬菌2種(Arthroderma benhamiaeTrichophyton mentagrophytes)、Trichophyton verrucosum)のゲノムが解読されました。

Comparative and functional genomics provide insights into the pathogenicity of dermatophytic fungi.
Burmester A, Shelest E, Glöckner G, Heddergott C, Schindler S, Staib P, Heidel A, Felder M, Petzold A, Szafranski K, Feuermann M, Pedruzzi I, Priebe S, Groth M, Winkler R, Li W, Kniemeyer O, Schroeckh V, Hertweck C, Hube B, White TC, Platzer M, Guthke R, Heitman J, Wöstemeyer J, Zipfel PF, Monod M, Brakhage AA.
Genome Biol. 2011;12(1):R7. Epub 2011 Jan 19.

2011年12月12日月曜日

モノ湖

4月1日のブログで紹介したヒ素をリンの代わりにDNAに取り込む生物ですが、それ以降反論が相次いでいます。どちらが正しいのかは、専門外の実験手法なので私にはわかりませんが、その生物が見つかったモノ湖を、ニューヨークからの帰りに空撮した写真が以下です。

2011年12月11日日曜日

大腸癌のリスクと肉食

今の日本だと肉食女子の記事になってしまうのですね...

肉食女子、がんリスク1.5倍 8万人を10年調査

アメリカに住んでいると肉100グラムはあっという間なので、ほとんど実感がわかないのですが、本当に有意な差があるのでしょうか?実際のところは、アメリカの食生活は、肉の量よりも気にしなければいけないことがたくさんあります。そもそもエネルギー総量とか...

2011年12月10日土曜日

L1Tcのリボザイム

今年の頭にVingiというnon-LTR retrotransposonを報告しました。Vingiは睡眠病の病原体Trypanosoma bruceiのIngiというretrotransposonに近縁です。一方近縁種でシャガース病の病原体Trypanosoma cruziのL1Tcは名前こそL1とついているが実際にはIngiと非常に近縁です。L1Tcは比較的初期に見つかったnon-LTR retrotransposonで、当時知られているretrotransposonの中では哺乳類で見られるL1と近縁であったので、こう名付けられました。

Identification of an hepatitis delta virus-like ribozyme at the mRNA 5'-end of the L1Tc retrotransposon from Trypanosoma cruzi OPEN ACCESS
Sánchez-Luque FJ, López MC, Macias F, Alonso C, Thomas MC.
Nucleic Acids Res. 2011 Oct;39(18):8065-77. Epub 2011 Jun 30.

このグループは長らくL1Tcの研究を続けていて、逆転写酵素、エンドヌクレアーゼ、甚句フィンガー、転写制御など、それぞれのパーツの機能を解析した論文を連続的に発表しています。この論文は、L1Tcの5'末端近くにhepatitis delta virus-like ribozymeが存在する事を示した論文。hepatitis delta virus-like ribozymeはL1Tcの5'末端を切断する活性を持っていることが示されています。

2011年12月9日金曜日

ジオラマ

American Museum of Natural Historyはとても面白い博物館でしたが、残念ながら時間が全然足りず、あまり見て回れませんでした。なので写真もこれが最後です。
こちらはジオラマの展示。映画ナイトミュージアムでは走り回っていたゾウのジオラマです。かなり精巧に作られていて迫力がありました。

Wikipedia : Spaciation

Wikipediaの英語版のSpeciationの項に我々の論文が引用されているのを発見しました。引用33です。

Speciation

2011年12月8日木曜日

Monarch Genome

渡りをする蝶として有名なMonarch butterfly(Danaus plexippus)のゲノムが解読されました。私の住むシリコンバレーの周辺では、MontereyやSanta Cruzに大きな越冬地があります。10月から2月頃までそこで寒さをしのいだ後繁殖し、春から秋にかけて数世代をかけて北上してカナダにまで達するそうです。そして秋には1世代で南下し、カナダやアメリカ合衆国北部から南部まで一気に戻ってきます。
蝶そのものはよく見かけるマダラチョウの仲間とほとんど変わりませんが、そのダイナミックな行動が多くの人々の興味を惹き、これまでも生態学や生理学を中心に多くの研究がされてきました。
ゲノムはと言うと、やはり同じ鱗翅目に属すカイコ(Bombyx mori)と非常によく似ているようです。

The monarch butterfly genome yields insights into long-distance migration.
Zhan S, Merlin C, Boore JL, Reppert SM.
Cell. 2011 Nov 23;147(5):1171-85.

2011年12月7日水曜日

Geron

先日ニュースを見て知ったジェロンという会社ですが、本社がメンロパークにあることを無料日本語新聞のベイスポで知りました。

ES細胞の臨床試験、米社が撤退 経営上の問題で

Geron

医療系ベンチャー企業にとっては収益を得るまでの臨床試験の段階というのは財政的に非常に厳しい時期らしいですね。ベンチャーとしては撤退もやむなしということなのでしょうが、一方で患者側の不満も理解できます。

2011年12月5日月曜日

グリプトドン

恐竜はとっても魅力的ですが、我々ヒトは哺乳類ですから、やはり哺乳類のブースも気になります。
下の写真は絶滅したグリプトドン。アルマジロの仲間です。南米大陸は新生代に長期間「島大陸」(他の大陸との接続がない大陸)だったので、独特な哺乳類が進化しました。異節類と呼ばれるグループは現存する哺乳類の4大系統群の1つです。アルマジロ、アリクイ、ナマケモノを含むこのグループはかつては巨大なナマケモノ(オオナマケモノ)や巨大なアルマジロ(グリプトドン)を生み出しました。パナマ陸橋によって北米大陸と接続してからは北米産の哺乳類が進入した結果、多くが絶滅し、現存するものもほとんどが中南米に限られていますが、唯一ココノオビアルマジロ(Dasypus novemcinctus)は現在北米を北上中だそうです。このココノオビアルマジロは異節類の代表としてゲノムが読まれています。

2011年12月4日日曜日

第67回LSJセミナー

LSJの公式ページに情報が載っていないので紹介して良いのかどうかとは思ったのですが、手短に。

Life Science in Japanese / Research @ Stanford

今回の講演者はNASA・AMES研究所の藤島皓介博士。

演題:遺伝子の原型とはなにか? -RNA world仮説に挑む-
2011年12月7日(水)17 時 45 分からStanford University Clark Center S360にて。

最近忙しいので行けるかどうかわかりませんが、出来たら聴いてみたい話です。

2011年12月3日土曜日

ディアトリマ

久しぶりにAmerican Museum of Natural Historyの話です。
ここは竜盤類恐竜の部屋。

と言いつつ写真はディアトリマ(Diatryma gigantea)。恐鳥類と呼ばれる鳥類の一種です。恐竜絶滅後の新生代初期に栄えた巨大な鳥類で、翼は退化して飛べません。

2011年12月2日金曜日

好適環境水

アジとコイ、仲良く泳ぐ水槽完成…岡山理科大

以前からニュースで紹介されていて、気になっていました。少しググって調べたところでは、電解質の量を調整する事で海水でも無い淡水でも無い水を作り、海水魚と淡水魚が両方生育できるようにしているそうです。これを好適環境水と呼んでいるようです。詳細は特許申請中のため機密だとか。

2011年12月1日木曜日

豚回虫のゲノム

日本など先進国ではほとんど見られませんが、線虫類(回虫、蟯虫、フィラリア等)による感染症はいまだ発展途上国では非常に大きな健康問題となっています。また、家畜の線虫感染症は生産性の減少をもたらすため、これらの撲滅に関心が持たれています。これら線虫による感染症のモデルとして、豚回虫(Ascaris suum)のゲノムが解読されました。ゲノムにおける反復配列の比率は4.4%と少ないそうです。

Ascaris suum draft genome
Jex AR, Liu S, Li B, Young ND, Hall RS, Li Y, Yang L, Zeng N, Xu X, Xiong Z, Chen F, Wu X, Zhang G, Fang X, Kang Y, Anderson GA, Harris TW, Campbell BE, Vlaminck J, Wang T, Cantacessi C, Schwarz EM, Ranganathan S, Geldhof P, Nejsum P, Sternberg PW, Yang H, Wang J, Wang J, Gasser RB.
Nature. 2011 Oct 26;479(7374):529-33. doi: 10.1038/nature10553.