2012年4月14日土曜日

転移因子抑制の際のpiwiの使い分け

もう半年前の話になりますが、piwiタンパク質とLINE-1(L1)の抑制に関する論文が2本同時にNatureに掲載されました。

piwiとpiRNAは雄生殖細胞で転移因子をDNAメチル化を介して抑制する機能を担っています。マウスには3種類のpiwiがあり、Miwi、Miwi2およびMiliと呼ばれています。マウスで特に活性の高い転移因子はnon-LTR retrotransposonのL1とLTR retrotransposonのIAPですので抑制の研究はこの2つが主な対象となります。

The endonuclease activity of Mili fuels piRNA amplification that silences LINE1 elements
De Fazio S, Bartonicek N, Di Giacomo M, Abreu-Goodger C, Sankar A, Funaya C, Antony C, Moreira PN, Enright AJ, O'Carroll D.
Nature. 2011 Oct 23;480(7376):259-63. doi: 10.1038/nature10547.

この論文では、Miliのエンドヌクレアーゼ活性に必須なアミノ酸を置換すると、転移因子を抑制するためのpiRNA量が低下する事を明らかにしています。このエンドヌクレアーゼに依存したpiRNAの増殖はL1の抑制には必須ですが、IAPの抑制には必要ではないことがわかりました。一方で、Miwi2の変異体ではpiRNAの量に変化は認められませんでした。

Miwi catalysis is required for piRNA amplification-independent LINE1 transposon silencing
Reuter M, Berninger P, Chuma S, Shah H, Hosokawa M, Funaya C, Antony C, Sachidanandam R, Pillai RS.
Nature. 2011 Nov 27;480(7376):264-7. doi: 10.1038/nature10672.

この論文では、残りの1つMiwiについて調べています。論文によると、Miwiのエンドヌクレアーゼ活性に必須なアミノ酸を置換した変異体マウスは不妊になり、L1の転写量が増加していました。MiwiはL1のmRNAを直接切断することが示され、この系はpiRNAの増殖を必要としないことも支持されました。

パラログの関係にあるこの3つの遺伝子はどうやら使い分けされているようですね。

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