2011年11月30日水曜日

SCANドメインの起源

論文メモ。Gypsy and the birth of the SCAN domain.
Emerson RO, Thomas JH.
J Virol. 2011 Nov;85(22):12043-52. Epub 2011 Aug 24.

哺乳類のzinc-finger タンパク質に多く見つかるSCANドメインがGypsy/Ty3タイプのLTR retrotransposonの内、Gmr1-like familyのgagタンパク質C末端領域に由来することを示した論文。

2011年11月29日火曜日

Repbase Reports 11(11)

Repbase Reportsの今年第11号が公開されました。今号は果物のパパイヤCarica papaya、街路樹のポプラPopulus trichocarpa、高価なキノコの黒トリュフTuber melanosporumの転移因子を報告しています。私はパパイヤとトリュフの転移因子を報告しています。

Repbase Reports 2011, Volume 11, Issue 11

2011年11月28日月曜日

脳でのレトロトランスポゾンの転移

論文メモ。

Somatic retrotransposition alters the genetic landscape of the human brain
Baillie JK, Barnett MW, Upton KR, Gerhardt DJ, Richmond TA, De Sapio F, Brennan PM, Rizzu P, Smith S, Fell M, Talbot RT, Gustincich S, Freeman TC, Mattick JS, Hume DA, Heutink P, Carninci P, Jeddeloh JA, Faulkner GJ.
Nature. 2011 Oct 30;479(7374):534-7. doi: 10.1038/nature10531.

この論文では、ハイスループットの解析系を用いて、生殖細胞系列でのL1、Alu、SVAの挿入に加えて、3人の海馬と尾状核から7743座位のL1、13,692のAlu、と1,350のSVAの挿入を同定している。

2011年11月26日土曜日

ハダカデバネズミのゲノム

ハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)は哺乳類で知られている唯一の真社会性動物です。そして小型哺乳類としては非常に長寿であることでも有名です。長生きで癌にならない、ハダカデバネズミのゲノムがショットガンシーケンスにより解読されました。

長寿ネズミのゲノム解明 がん研究に貢献も

原著論文はこちら↓
Genome sequencing reveals insights into physiology and longevity of the naked mole ratOPEN ACCESS
Kim EB, Fang X, Fushan AA, Huang Z, Lobanov AV, Han L, Marino SM, Sun X, Turanov AA, Yang P, Yim SH, Zhao X, Kasaikina MV, Stoletzki N, Peng C, Polak P, Xiong Z, Kiezun A, Zhu Y, Chen Y, Kryukov GV, Zhang Q, Peshkin L, Yang L, Bronson RT, Buffenstein R, Wang B, Han C, Li Q, Chen L, Zhao W, Sunyaev SR, Park TJ, Zhang G, Wang J, Gladyshev VN.
Nature. 2011 Oct 12;479(7372):223-7. doi: 10.1038/nature10533.

2011年11月25日金曜日

エウロパの湖

木星衛星に巨大な湖か、生命の可能性高まる

エウロパは木星の衛星で、ガリレオ・ガリレイが発見したことからガリレオ衛星と呼ばれる衛星の一つです。(他のガリレオ衛星はイオ、ガニメデ、カリスト)。公転周期がイオの2倍、ガニメデの半分という軌道共鳴の状態にあるため、強い潮汐力の変動に晒されており、これがエネルギーとなって、液体の海、湖が存在するのではないかという話です。
もし生命が存在するとしても細菌のような非常に小さなものでしょうが、大変興味深い話です。

2011年11月24日木曜日

diversity-generating retroelement (DGR)

論文メモ。
Conservation of the C-type lectin fold for massive sequence variation in a Treponema diversity-generating retroelement
Le Coq J, Ghosh P.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Aug 30;108(35):14649-53. Epub 2011 Aug 22.

以前ホームページでも紹介したdiversity-generating retroelement (DGR)はタンパク質の多様性を生み出すメカニズムとして機能する。DGRによって多様化することが知られているタンパク質としてMtdの結晶構造が決定され、C-type lectin foldを持ち、変異が導入されるアミノ酸がタンパク質の表面に分布している事が示されている。しかし、C-type lectin foldは非常に保存性の低いタンパク質のフォールドなので、これがどの程度普遍的であるのかはまだ定かではなかった。この論文ではDGRによって多様化する別のタンパク質TvpAの構造を報告している。TvpAはMtdと16%しかアミノ酸が一致しないが、同様にC-type lectin foldを持ち、変異が導入される位置がタンパク質表面に分布していた。また、どちらもformylglycine-generating enzymeに構造が似ている事がわかり、少なくともformylglycine-generating enzyme型のC-type lectin foldを持つタンパク質はDGRによって多様化できることがわかった。

2011年11月23日水曜日

トリケラトプス

American Museum of Natural Historyの続きです。
ここは鳥盤類恐竜の展示室です。鳥盤目(Ornithischia)は恥骨が後ろを向く骨盤の特徴が鳥類と共通するため名付けられたものです。ただし、鳥類は竜盤類(Saurischia)から進化したので、並行進化の一種と言えるでしょう。

写真はトリケラトプス(Triceratops)。

2011年11月22日火曜日

共生細菌をコントロールするためのペプチド

昆虫には細胞内に共生細菌を持つものが多く見られる。栄養の異なった食生活を送るアブラムシの仲間の共生細菌は有名で、かつて所属していた石川統研究室で友人がエンドウヒゲナガアブラムシの細胞内共生細菌Buchneraの研究をしていたので、私も馴染みがある。これらの共生細菌は、昆虫自身が合成できない栄養源を供給する働きを持つ。共生細菌は菌細胞と呼ばれる特殊化した大きな細胞に局在することが知られているが、同時に体液中にも分布する事も知られている。

以下の論文では、ゾウムシの抗菌ペプチドcoleoptericin-A (ColA)が共生細菌の分裂を制御し、菌細胞から出ないようにコントロールしていることを示している。ColAをRNAiで抑制すると巨大だった共生細菌が小さくなり(これは分裂の抑制が解除されたため)、菌細胞から拡散して昆虫の組織全体に拡散した。抗菌ペプチドは通常有害な病原細菌を排除する役割を持っているが、同時に細胞内共生にも役立っていることになる。

Antimicrobial Peptides Keep Insect Endosymbionts Under Control
Login FH, Balmand S, Vallier A, Vincent-Monégat C, Vigneron A, Weiss-Gayet M, Rochat D, Heddi A.
Science. 2011 Oct 21;334(6054):362-5.

2011年11月20日日曜日

AbiKの活性

A reverse transcriptase-related protein mediates phage resistance and polymerizes untemplated DNA in vitro OPEN ACCESS
Wang C, Villion M, Semper C, Coros C, Moineau S, Zimmerly S.
Nucleic Acids Res. 2011 Sep 1;39(17):7620-9. Epub 2011 Jun 15.

Abortive infectionに関わる遺伝子AbiKのタンパク質の機能を調べた論文。AbiKは私の以前の論文でも紹介したように、バクテリアでファージの感染抑制に働く逆転写酵素である。この論文では、そのAbiKの機能は逆転写ではなく、ランダムなDNA配列をつなげるterminal transferasedeであること、DNAはAbiKタンパク質と結合していること、活性を担う逆転写酵素の保存アミノ酸を置換するとファージに対する耐性が失われることなどを明らかにしている。

2011年11月19日土曜日

Google Scholar Citations & Microsoft Academic Search

GoogleとMicrosoftが無料で使える科学論文の評価指標ツールを提供しているというNatureダイジェストを見て、原文を探してきました.

Computing giants launch free science metrics

まだベータ版のようで、誰もが使えるという状態にはなっていないようです。

2011年11月18日金曜日

Antisense RNAと制限修飾酵素系

論文メモ。

Antisense RNA associated with biological regulation of a restriction–modification system
Mruk I, Liu Y, Ge L, Kobayashi I.
Nucleic Acids Res. 2011 Jul;39(13):5622-32. Epub 2011 Mar 31.

著者らは以前、EcoRI制限修飾酵素系で制限酵素と修飾酵素の間から転写される逆向きRNAが遺伝子発現に寄与していることを示している。この研究では、制限酵素の3'末端に相当する逆向きRNAが制限酵素の転写を抑制することを示している。このRNAの転写が失われると外来DNAを分解する機能が向上し、post-segregational killingの程度が軽減される。従って、このRNAの転写は制限酵素の発現をコントロールして制限修飾酵素系が適度な活性を維持するのに役立っている。

2011年11月17日木曜日

IS608

比較的最近見つかった新しいタイプの転移酵素Y1-transposaseの活性の詳しい解析をした論文。内容が細かいのでタイトルのみ紹介。

Reconstitution of a functional IS608 single-strand transpososome: role of non-canonical base pairing
He S, Hickman AB, Dyda F, Johnson NP, Chandler M, Ton-Hoang B.
Nucleic Acids Res. 2011 Oct 1;39(19):8503-12. Epub 2011 Jul 10.

2011年11月16日水曜日

American Museum of Natural History

先日たまったマイルを利用してNew Yorkに旅行に行ってきました。美術館や歴史的建造物を多く巡ったのですが、ここでは省略して、American Museum of Natural History(アメリカ自然史博物館)の感想をいくつか記したいと思います。
時間が押していたので実際に見ることが出来たのは展示の内ほんの一部でした。ハロウィンパーティーのために仮装した親子(と職員)でごった返す中を、目玉の化石展示を中心に見てきました。
下はロビーのAllosaurusから我が子を守ろうとして後ろ足で立つBarosaurusの骨格標本。サイズが大きいので同じフレームには収まりませんでした。



2011年11月15日火曜日

DNA複製酵素とウイルスゲノムサイズ

Computational analysis of DNA replicases in double-stranded DNA viruses: relationship with the genome size
Kazlauskas D, Venclovas C.
Nucleic Acids Res. 2011 Oct 1;39(19):8291-305. Epub 2011 Jul 8.

DNA polymeraseと二本鎖DNAウイルスのゲノムサイズとの関係を調べた論文。ゲノムサイズが大きくなるほど自身でDNA polymeraseをコードしている確率が高まり、DNA sliding clampをコードする割合も上昇した。ゲノムサイズの大きいウイルスでclampを持たない場合にはDNA polymeraseに特殊な特徴が見られた。

2011年11月14日月曜日

L1 ORF1タンパク質の三量体の構造

論文メモ。

Trimeric structure and flexibility of the L1ORF1 protein in human L1 retrotransposition.
Khazina E, Truffault V, Büttner R, Schmidt S, Coles M, Weichenrieder O.
Nat Struct Mol Biol. 2011 Aug 7;18(9):1006-14. doi: 10.1038/nsmb.2097.

L1 ORF1タンパク質の三量体の構造を結晶構造解析とNMRで示した論文。三量体化はN末側のコイルドコイルドメインで維持され、中央部のRRMとC末側のCTDドメインが自由に動くことが出来る様になっている。この構造は1本鎖RNAとの特異的な結合を説明でき、変異解析からはこの可動性が転移に必須であることがわかった。

2011年11月13日日曜日

SVAによる筋ジストロフィー

論文メモ。

福山型筋ジストロフィーは日本では普遍的な型の疾患で、レトロトランスポゾンSVAの挿入が原因となっていることが最初に発見された病気です。患者では遺伝子fukutinの3'UTRにSVAが挿入されていることが知られていました。しかし3'UTRへの挿入はタンパク質コード領域を破壊するわけではないため、どのようにして症状に結びついているのかは不明でした。

Pathogenic exon-trapping by SVA retrotransposon and rescue in Fukuyama muscular dystrophy
Taniguchi-Ikeda M, Kobayashi K, Kanagawa M, Yu CC, Mori K, Oda T, Kuga A, Kurahashi H, Akman HO, DiMauro S, Kaji R, Yokota T, Takeda S, Toda T.
Nature. 2011 Oct 5;478(7367):127-31. doi: 10.1038/nature10456.

この研究ではこのSVAの挿入がスプライシングの異常を引き起こし、SVAを含むmRNAが形成されることを示しています。このスプライシングによりタンパク質の必須領域が失われます。この異常なスプライシングの阻害するオリゴヌクレオチドを導入することでこの異常なスプライシングを抑制し、症状も抑制できることが示されました。これはこれまで治療方法が無かった福山型筋ジストロフィーの治療に向けた重要な一歩です。

2011年11月12日土曜日

修士論文不要

大学院、来年度から修士論文不要に 試験などで審査

大学の自由度を上げるという意味では、法律で縛ることを廃止するのは良い傾向だと思います。ただ、個人的な意見としては、修士で就職する学生たちにこそ、修士論文を不要にすべきだと思います。修士卒の時点で求められる能力は与えられた研究を遂行する能力であって、立案からまとめまでする総合的な研究能力ではないでしょう。逆に博士まで進む学生には修士論文は研究をまとめる大切な練習です。博士課程は自立した研究者として即戦力になる人材を育てる場であるべきです。
記事には「専門分野には詳しいが応用が利かず、使いにくい」と評価されてきた、とありますがその理由は、知識偏重の詰め込み型の教育の結果であり、応用が利かないというのは、研究を自立的にできないということでしょう。

ただ、アメリカに来て感じたこととして、主専攻と違う分野もある程度学ぶという副専攻が非常に効率的に働いているということがあります。例えば、ここシリコンバレーでは医者がそこそこ(流ちょうに話せるわけではなく、本当にそこそこ)外国語を話せることが患者を獲得する上でのアドバンテージになっています。一つの分野で頂点を極めることはとても難しいが、複数の組み合わせであれば強みを活かすのはかなり容易になります。そういう点では、最初から専門を決めて自分の可能性を狭めてしまうのはもったいない選択ですし、そのような選択を強制するような教育システムにはすべきではないでしょう。

2011年11月11日金曜日

白亜紀の南米の哺乳類化石

論文メモ。

Highly specialized mammalian skulls from the Late Cretaceous of South America
Rougier GW, Apesteguía S, Gaetano LC.
Nature. 2011 Nov 2;479(7371):98-102. doi: 10.1038/nature10591.

Dryolestoidsは絶滅した哺乳類のグループで、現生の有胎盤類と有袋類の祖先と考えられている。Dryolestoidsはジュラ紀から北米とヨーロッパで化石が見つかっているが、南米では新生代初期まで生息していた。
この論文では、後期白亜紀の南米の地層から見つかったDryolestoidsの頭骨の一部と顎骨を報告している。この化石により中生代の哺乳類では初めて歯の特徴がわかった。この化石はDryolestoidsの派生的な特徴をジュラ紀のローラシア大陸の化石と共有する一方で白亜紀の南米に特異的な特徴も持っている。

2011年11月9日水曜日

CTCFとalternative splicing

論文メモ。

CTCF-promoted RNA polymerase II pausing links DNA methylation to splicing
Shukla S, Kavak E, Gregory M, Imashimizu M, Shutinoski B, Kashlev M, Oberdoerffer P, Sandberg R, Oberdoerffer S.
Nature. 2011 Oct 2;479(7371):74-79. doi: 10.1038/nature10442. [Epub ahead of print]

alternative splicingはtranscriptomeの多様化の一因である。スプライソソームの形成は転写と共役して起こり、DNA上の構造が影響することが示唆されている。最近ではエクソンはイントロンとは異なったヒストンメチル化パターンを持ち、ヌクレオソームの占める割合が多く、DNAメチル化の程度も多いことなどが観察されている。この論文では、CCCTC-binding factor (CTCF)がRNA polymerase IIを一時停止させることで上流側の弱いエクソンをmRNAに取り込むよう誘導することを報告している。

2011年11月8日火曜日

Cryptonの論文

Mobile DNAから出版されたCryptonの論文の印刷版PDFファイルが出来ました。以下からダウンロードして是非読んでみてください。もちろん無料です。

Crypton transposons: identification of new diverse families and ancient domestication events

2011年11月7日月曜日

Repbase Reports 11(10)

Repbase Reportsの今年第10号が公開されました。今号はジャガイモSolanum tuberosumのトランスポゾンを報告しています。

Repbase Reports 2011, Volume 11, Issue 10

2011年11月5日土曜日

制限修飾系の競争

論文メモ。

Evidence for an evolutionary antagonism between Mrr and Type III modification systems OPEN ACCESS
Tesfazgi Mebrhatu M, Wywial E, Ghosh A, Michiels CW, Lindner AB, Taddei F, Bujnicki JM, Van Melderen L, Aertsen A.
Nucleic Acids Res. 2011 Aug 1;39(14):5991-6001. Epub 2011 Apr 19.

Mrrは4型制限酵素でメチル化されたDNA配列を切断する。Mrrは高圧により誘導されるが自然宿主の大腸菌では有害ではない。しかし、Salmonella typhimurium LT2では有害となることがわかった。これは3型制限修飾系であるStyLTIの存在とリンクしていた。StyLTIの修飾酵素の発現はMrrの活性化を促す。また、Mrr遺伝子を導入するとStyLTIの修飾酵素の機能が失われ、Mrr遺伝子とStyLTIの修飾酵素遺伝子とは、近縁種内で排他的に分布していた。すなわち、MrrはStyLTIをゲノムから排除する。

2011年11月4日金曜日

L1 ORF1の役割

論文メモ。

Paired mutations abolish and restore the balanced annealing and melting activities of ORF1p that are required for LINE-1 retrotransposition
Evans JD, Peddigari S, Chaurasiya KR, Williams MC, Martin SL.
Nucleic Acids Res. 2011 Jul;39(13):5611-21. Epub 2011 Mar 26.

L1のORF1タンパク質の3つの保存アミノ酸R238, R284, Y318をアラニン置換してその影響を調べた論文。置換によりどれも転移できなくなった。この内、R238はリジンに置換しても活性を失う。R238を置換したものはRNAとの結合能が低下していた。他はDNA結合能が低下しているらしい。

2011年11月1日火曜日

シーラカンス

友人の研究成果なので紹介。リンクのみ.

シーラカンス繁殖域、タンザニア沖にも 遺伝子を解析

Genetically distinct coelacanth population off the northern Tanzanian coast
Nikaido M, Sasaki T, Emerson JJ, Aibara M, Mzighani SI, Budeba YL, Ngatunga BP, Iwata M, Abe Y, Li WH, Okada N.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Oct 24. [Epub ahead of print]