2011年5月31日火曜日

American Avocet

American Avocet(学名Recurvirostra americana)はここシリコンバレーでは普通に見かける鳥です。和名はアメリカソリハシセイタカシギ。夏の羽根の色がとても鮮やかで印象的です。

下の写真は、最近購入したNikon D3100の試し撮りで妻が撮影したものです。やっぱり一眼レフは良いですねぇ。

2011/04/30撮影。

2011年5月30日月曜日

DDE transposaseの分類

2ヶ月ほど解析していた内容を先に出されてしまいました。まだ様子が見えてきたばかりでこれから総説でも書こうかという段階だったので、実害は全くないです。それよりもGeneに出すかあるいは総説として盛り込むかという程度の新規性の研究内容がPNASに出るというのは正直雑誌の質を疑う悲しい現実です。

The catalytic domain of all eukaryotic cut-and-paste transposase superfamilies.
Yuan YW, Wessler SR.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 May 10;108(19):7884-9. Epub 2011 Apr 25.

内容は転移因子のDDE-transposaseを比較して類似性を元に系統樹を書いたというもの。その類似性とは、2番目のDとEの間にC/DxxHがあるグループ(MuDR, Rehavkus, hAT, P, Kolobok)と、C-C-H-Hがあるグループ(Chapaev, EnSpm, Transib)があるということなど。これは私がMAFFTでアラインメントをしたら見えてきたくらいなのでそれほど目新しいものではないですが、論文として報告されるのは初めて。論文ではAcademやもDDE-transposaseを持っているとしていますが、アラインメントを見る限りでははっきりと活性残基が認識できる状態ではなく、相当疑わしい。この点は先入観ありき。類似性を元にした系統樹というのも信頼性が低く、上記のグループがあることだけが支持出来る内容です。

と散々こき下ろしてみましたが、PNASに出た以上は、今後もDDE-transposaseの話を書くときにはほぼ必ず引用される(or しなければいけない)ような便利な論文になるのは確かでしょう。
正直、SupplementのAlignmentは便利。

2011年5月29日日曜日

Yosemite

5月4日から5日にツアーバスを利用してYosemite National Parkに行ってきました。今年は雪が遅くまで残っていたこともあり、Glacier Pointへの道はまだ開通しておらず、Yosemite Valley内だけの観光になりましたが、春先の雪解け水で滝の水量が最も多い時期なので大小様々な滝を見ることができ、とても良い旅になりました。

幸い(残念ながら?)クマ(American black bear、学名Ursus americanus)には出会いませんでしたが、Mule deer(ミュールジカ、学名Odocoileus hemionus)には出会うことが出来ました。

2011/05/05撮影。

2011年5月28日土曜日

植物病原菌2種のゲノム

互いに近縁な植物病原菌2種のゲノムが解読されました。Open Access。
解読された種は、Puccinia graminisMelampsora larici-populinaです。Puccinia graminisは小麦の茎のサビ病の病原体、Melampsora larici-populinaはポプラの葉のサビ病の病原体です。
互いに近縁で、担子菌門サビキン目に属す絶対寄生性の真菌類です。
転移因子についても解析されているようですが、配列が全く公表されていない(公開されているはずのDatasetが見あたらない)ので不明。

Obligate biotrophy features unraveled by the genomic analysis of rust fungi
Duplessis S, Cuomo CA, Lin YC, Aerts A, Tisserant E, Veneault-Fourrey C, Joly DL, Hacquard S, Amselem J, Cantarel BL, Chiu R, Coutinho PM, Feau N, Field M, Frey P, Gelhaye E, Goldberg J, Grabherr MG, Kodira CD, Kohler A, Kües U, Lindquist EA, Lucas SM, Mago R, Mauceli E, Morin E, Murat C, Pangilinan JL, Park R, Pearson M, Quesneville H, Rouhier N, Sakthikumar S, Salamov AA, Schmutz J, Selles B, Shapiro H, Tanguay P, Tuskan GA, Henrissat B, Van de Peer Y, Rouzé P, Ellis JG, Dodds PN, Schein JE, Zhong S, Hamelin RC, Grigoriev IV, Szabo LJ, Martin F.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 May 2. [Epub ahead of print]

サビ菌の画像データベースを見つけたのでリンクしておきます。
さび菌類標本データベース

2011年5月27日金曜日

リンゴの実

3月21日のブログでリンゴの花を取り上げましたが、今は実がなっています。食べられるかどうかは知りませんが...

2011/05/23撮影。

2011年5月26日木曜日

ツノゼミ

論文メモ。
表紙になってますね。Evo-Devo系で私には難しくてよくわからないのですが、ツノゼミのヘルメットと呼ばれる器官は実は附属肢で、胸部第1体節の翅に相当する器官であることが翅の発生に関与する遺伝子の発現を調べてわかったようです。ずっと翅に相当する器官が残っていたのではなく、昔失われた機構を取り戻したという話らしいです。(Nature Podcastで聞いただけで論文を実際に読んで理解していないので伝聞情報として書いています。)

Body plan innovation in treehoppers through the evolution of an extra wing-like appendage
Prud'homme B, Minervino C, Hocine M, Cande JD, Aouane A, Dufour HD, Kassner VA, Gompel N.
Nature. 2011 May 5;473(7345):83-6.

2011年5月25日水曜日

Postdoc. Travel Award落選通知

応募していたSMBE2011の旅費のAwardの落選通知が来ました。残念。倍率は約5倍だったとのこと。

Winners of Walter Fitch Award, Postdoc. Travel Award, Graduate Student Award, and Undergraduate Mentoring and Diversity Program Award

2011年5月24日火曜日

Cliff swallow

シリコンバレーでは2種類のツバメが見られます。1種は日本でも見られるツバメ、Barn swallow(学名Hirundo rustica)。もう1種はCliff swallow(学名Petrochelidon pyrrhonota)。和名はサンショクツバメだそうです。下の写真はCliff swallow。

去年6月4日に見に来た際にはもう巣作りを終えて営巣中だったのですが、今年4月30日にはまだ巣作りを開始したところでした。

2011/04/30撮影。

2011年5月23日月曜日

カリフォルニア州立公園の閉鎖

カリフォルニア州の財政は破綻寸前で、私が来る以前からAdult Schoolが縮小されたり、University of California各校の授業料が上がったり、高校の運営費が削られたり、とさまざまな公共サービスの縮小とそれに伴う負担の増加が起こっています。

今年からは州立公園の閉鎖も計画されています。
Planned 2011 State Park Closures

シリコンバレー周辺で対象になっているのは、
Portola Redwoods State ParkとCastle Rock State Parkです。Portola RedwoodsにはSanta Cruz Mountainsで最高(300フィート=91メートル)のCoast Redwoodがあるそうです。

他にもSanta Cruzで2カ所。先日行ったばかりのMoss Landing周辺の2つのState Beach(Moss Landing, Zmudowski)も閉鎖対象です。

閉鎖されれば人間の進入が減るのですからそれはそれで良いことなのかもしれません。

2011年5月22日日曜日

ロイヤラクチン

女王バチになる「秘密」は…富山県立大が誘導成分発見

Royalactin induces queen differentiation in honeybees
Kamakura M.
Nature. 2011 Apr 24. [Epub ahead of print]

ミツバチには女王蜂と働き蜂の2種類の雌がいます。このカーストの違いは幼虫時期にローヤルゼリーを与えられるかどうかで決まりますが、その詳しい機構は不明でした。この論文では、ローヤルゼリーに含まれるRoyalactinという57kDaのタンパク質がp70 S6 kinaseに作用することで体重を増加させ、mitogen-activated protein kinaseの働きを増強することで発生速度を上げ、幼若ホルモンの量を増加させることを明らかにしています。また、この作用の中間段階にはepidermal growth factor receptorが働いています。面白いのはショウジョウバエでもRoyalactinが同様の作用を持つことです。

2011年5月21日土曜日

Going Native Garden Tour

3月22日のブログの記事で紹介したGoing Native Garden Tour 2011に参加してきました。といっても近くで気になった庭を二カ所覗いてきただけですが...

Going Native Garden Tour 2011

さすがはシリコンバレー。去年は事前に庭の特徴や継続年数などを調べるのにずいぶんとかかったのですが、今年は気に入った庭を探すのも、その庭の所在地を探すのも、Google Mapと連動したりと、とても便利に進歩していました。

庭の持ち主にとっては作品の発表会のようなものらしく、たいていは持ち主が庭に出ていて話しかけてくれます。質問すると喜んで解説してくれるのも庭への情熱がうかがえて楽しいものです。

来年は4月15日か22日に開催されるそうです。気になる方は是非参加登録してみてください。また、同様のイベントは各地で開催されているようです。

2011/04/17撮影。


2011年5月20日金曜日

Arthur M. Sackler Colloquia

去年の9月にテロメラーゼとレトロトランスポゾンのコロキウムがあったようです。

Arthur M. Sackler Colloquia of National Academy of Sciences
Telomerase and Retrotransposons: Reverse Transcriptases That Shaped Genomes
September 29-30, 2010
Beckman Center, Irvine, CA

2011年5月19日木曜日

Young Researchers Conference on Evolutionary Genomics

Young Researchers Conference on Evolutionary Genomics

National Center for Sciences(お茶の水大学から変更)で8月1日と2日に開催されるそうです。
SMBE2011のついでに参加するには良いかも?
と思うのは海外在住の私のような研究者だけかもしれませんが...

ということで先日参加申込みしました。

ところでNational Center for Sciencesで検索しても何も出てこないんですよね?国立情報研究所(National Institute of Informatics)がヒットするだけで...
これは国際学会を開く会場としては適切とは言えないのではないかと思います。国立機関ももう少しネットの重要性を理解すべきではないかなぁ?

2011年5月18日水曜日

Sea otters at Moss Landing

ラッコが近くで見られることで有名なMoss Landing State Beachに行ってきました。モントレーでがんばって遠くのラッコを覗いていたのがばからしくなるくらいに近くにラッコが漂っていました。我々が行ったときで30-40頭くらい。湾になっていて波がほとんどないためかラッコも大変くつろいでいました。
ただ、ボートで近づくのはお勧めできません。ラッコが逃げてしまうし、写真も撮れないので多分悲しいです。

2011/04/10撮影。




2011年5月17日火曜日

イヌカタヒバのゲノム

The Selaginella Genome Identifies Genetic Changes Associated with the Evolution of Vascular Plants.
Banks JA, Nishiyama T, Hasebe M, Bowman JL, Gribskov M, Depamphilis C, Albert VA, Aono N, Aoyama T, Ambrose BA, Ashton NW, Axtell MJ, Barker E, Barker MS, Bennetzen JL, Bonawitz ND, Chapple C, Cheng C, Correa LG, Dacre M, Debarry J, Dreyer I, Elias M, Engstrom EM, Estelle M, Feng L, Finet C, Floyd SK, Frommer WB, Fujita T, Gramzow L, Gutensohn M, Harholt J, Hattori M, Heyl A, Hirai T, Hiwatashi Y, Ishikawa M, Iwata M, Karol KG, Koehler B, Kolukisaoglu U, Kubo M, Kurata T, Lalonde S, Li K, Li Y, Litt A, Lyons E, Manning G, Maruyama T, Michael TP, Mikami K, Miyazaki S, Morinaga SI, Murata T, Mueller-Roeber B, Nelson DR, Obara M, Oguri Y, Olmstead RG, Onodera N, Petersen BL, Pils B, Prigge M, Rensing SA, Riaño-Pachón DM, Roberts AW, Sato Y, Scheller HV, Schulz B, Schulz C, Shakirov EV, Shibagaki N, Shinohara N, Shippen DE, Sørensen I, Sotooka R, Sugimoto N, Sugita M, Sumikawa N, Tanurdzic M, Theißen G, Ulvskov P, Wakazuki S, Weng JK, Willats WW, Wipf D, Wolf PG, Yang L, Zimmer AD, Zhu Q, Mitros T, Hellsten U, Loqué D, Otillar R, Salamov A, Schmutz J, Shapiro H, Lindquist E, Lucas S, Rokhsar D, Grigoriev IV.
Science. 2011 May 5. [Epub ahead of print]

ヒカゲノカズラ植物の初のゲノム解読。維管束植物は大きく真葉植物(種子植物+大葉シダ類)と小葉植物(小葉シダ類)の二つの系統からなるが、後者がヒカゲノカズラ植物門である。

2011年5月16日月曜日

Repbase Reports 11(4)

しばらく前になりますが、Repbase Reportsの今年第4号が公開されました。今号は黄熱病を媒介するネッタイシマカAedes aegyptiのnon-LTR retrotransposonを主に報告しています。
Repbase Reports 2011, Volume 11, Issue 4

2011年5月15日日曜日

第63回LSJ/第51回JBC ジョイント・フォーラム

先先週の金曜日にタイトルにあるミッキー・グレースさんの論文の書き方講座を聴いてきました。内容は、タイトルに「Study of ~」は使わない方が良いとか、いわゆる良く聞く内容が多かったのですが、いろいろと新しい発見もありました。その後はPalo Altoのピザ屋で二次会に参加。Japan Bio CommunityはLife Science in Japanese/Research at Stanfordと違って研究者以外も多く、二次会も興味深い話が聞けました。

Life Science in Japanese
Japan Bio Community

2011年5月10日火曜日

植物の進化とゲノム倍化

論文メモ。メモはほとんど要約だけ読んで書いています。

Ancestral polyploidy in seed plants and angiosperms
Jiao Y, Wickett NJ, Ayyampalayam S, Chanderbali AS, Landherr L, Ralph PE, Tomsho LP, Hu Y, Liang H, Soltis PS, Soltis DE, Clifton SW, Schlarbaum SE, Schuster SC, Ma H, Leebens-Mack J, Depamphilis CW.
Nature. 2011 May 5;473(7345):97-100. Epub 2011 Apr 10.

植物はゲノム倍加によって多様な性質を進化させることが知られている。著者らは解読された植物ゲノム中の遺伝子の並び順を解析することで2回のゲノム倍加が起こっていることを示す結果を得た。一つは被子植物の共通祖先、もう一つは種子植物の共通祖先である。遺伝子重複は3億1900万年前と1億9200万年前に集中しており、ゲノム重複がこの時期に起こったことを示唆している。これらのゲノム重複により種子の発生と花の発生に重要な調節因子が多様化した。

2011年5月9日月曜日

Mirale Planet EPISODE 5 Survival of the Fittest

さて、最終巻です。サブタイトルの訳語はもちろん適者生存です。

この巻は正直目新しいものはほとんどないです。唯一、喉頭の下降の話が興味深い話でした。最近はネアンデルタール人との交雑の可能性が取りざたされているので、もし遺伝子レベルまでこのような話が落とせるのだとすると面白いのですが...
私には、いまいち、ネアンデルタール人やデニソバ人のゲノム配列の信頼性のレベルがよくわからないです。遺伝子の流入がどの程度なのかという以前に、その話が統計学的な話なのかしっかりと配列まで落とせるものなのか?

2011年5月8日日曜日

尻尾の長いトカゲ

先日San JoseのAlum Rock Parkに行った際に見かけた尻尾の長〜いトカゲ。我々を追い越していったご婦人方が先で立ち止まっていたので何かと思ったらこのトカゲを観察していたのでした。

2011年5月7日土曜日

ヒトが失ったもの

論文メモ。

Human-specific loss of regulatory DNA and the evolution of human-specific traits.
McLean CY, Reno PL, Pollen AA, Bassan AI, Capellini TD, Guenther C, Indjeian VB, Lim X, Menke DB, Schaar BT, Wenger AM, Bejerano G, Kingsley DM.
Nature. 2011 Mar 10;471(7337):216-9.

チンパンジーや他の霊長類が共有する配列をヒトが失ったことによって得たものを解析した論文。著者らは510個のそのような配列を見つけ、ほとんどが非コード領域にあること、神経やステロイドホルモンと関係する遺伝子の近傍に集まっている傾向があることを明らかにした。失われた配列の一つは、感覚毛(ヒゲ)とペニスのとげでの男性ホルモン受容体のエンハンサーに相当し、ヒトでヒゲやペニスのとげが失われた原因らしい。また別の欠失はGADD45G遺伝子近傍のforebrain subventricular zoneのエンハンサーに相当し、失われたことで前脳がヒトで肥大する原因になったと考えられる。

2011年5月6日金曜日

リボザイムを作るリボザイム

論文メモ。
RNAワールドは興味をそそる話題です。

Ribozyme-catalyzed transcription of an active ribozyme
Wochner A, Attwater J, Coulson A, Holliger P.
Science. 2011 Apr 8;332(6026):209-12.

生命の誕生の過程では、RNAを作るRNAの存在を仮定しなければならない。著者らはRNAポリメラーゼとして働くリボザイムを作り、95塩基まで鎖を伸ばすことに成功した。しかし、自己複製するリボザイムだけでは他のリボザイムを複製することができない。そこで部分組み換えにより幅広いRNA配列を複製可能なリボザイムを作り、実際にハンマーヘッド型エンドヌクレアーゼとして働くリボザイムを、機能を保持したまま複製することに成功した。

2011年5月1日日曜日

植物の世代を越えたレトロトランスポジションとsiRNA

An siRNA pathway prevents transgenerational retrotransposition in plants subjected to stress
Ito H, Gaubert H, Bucher E, Mirouze M, Vaillant I, Paszkowski J.
Nature. 2011 Apr 7;472(7341):115-9. Epub 2011 Mar 13.

ヒートショックで転写活性化するCopia型LTR retrotransposonをONSEN('温泉')と命名し解析しています。siRNAの作られないArabidopsis thaliana株では、ヒートショック後にONSENは転写活性化し、複製中間体の環状染色体外DNAを形成します。しかし、これは親個体ではゲノムに挿入されず、その代わりに次世代で挿入されていました。挿入は花の形成中に配偶子形成の前に起こっていました。面白いことにONSENが転移した一部の個体では熱応答性が変化したそうです。ストレスにより転移因子が活性化することはよく知られていますが、この結果はそれにより新しい環境に適応した個体が進化するというモデルに合致する興味深い結果です。