2012年4月5日木曜日

菌類で見つかったテロメア特異的non-LTR retrotransposon

特定の反復配列だけに挿入される転移因子は主にnon-LTR retrotransposonで見つかっています。中でもリボソームRNA遺伝子に挿入されるものは多数知られています。また、マイクロサテライトに挿入されるものも、マイクロサテライトの種類は様々ですが多数見つかって来ています。一方、不思議な事にテロメア反復配列に挿入されるものとしては、これまでTRASとSARTの2グループが昆虫から見つかっているだけでした。ようやく今回、別のテロメア反復配列特異的non-LTR retrotransposonが菌類で報告されました。

Telomere-targeted Retrotransposons in the Rice Blast Fungus Magnaporthe oryzae: Agents of Telomere Instability.
Starnes JH, Thornbury DW, Novikova OS, Rehmeyer CJ, Farman ML.
Genetics. 2012 Mar 23. [Epub ahead of print]
PMID: 22446319 [PubMed - as supplied by publisher]

イネいもち病菌Magnaporthe oryzaeで見つかり、MoTeRと名付けられたこのnon-LTR retrotransposonは系統的にはスプライスリーダー配列に挿入されるCRE/SLACS/CZARと近縁で、制限酵素様のエンドヌクレアーゼをコードしています。これはTRASとSARTがapurinic-like endonucleaseを持っているのと異なり、全く異なる起源であることを示しています。またCnl1を含む、より近縁な菌類のnon-LTR retrotransposonは詳細に調べるとテロメア反復配列由来の配列を両側に持っている事がわかり、これらを含めたグループがテロメア反復配列への標的特異性を持っている事が示されました。

テロメア反復配列は数が多い一方で、遺伝子ではないので挿入しても問題が起こらないという、まさに理想的な標的だと思うのですが、これまでTRASとSARTしか見つかっていないのが長らく謎でした。この研究によりようやく別のグループでもテロメアを標的とするnon-LTR retrotransposonが進化して来た事がわかりました。

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