2012年10月16日火曜日

遺伝子重複による進化

タイトルは和訳版のタイトル。大野乾の代表的な著書の1つ「Evolution by Gene Duplication」。原著の発表が1970年だからもう42年前の作品で、遺伝子重複、特に全ゲノム重複が生物進化に重要であることを唱えた論文である。2R仮説を話すときには常に引用する論文で、実際論文で引用したこともあるので、読むべきだとは思っていたのだが、古い論文はなかなか読むモチベーションがわかない(また手に入りにくい)、こともあって先延ばしにしてきた。

以降要約ではなくただの感想。
2R仮説の基となっている論文だが、この本自体で仮説提示されているのは、「爬虫類の誕生以前までに脊椎動物は1回以上の全ゲノム重複を起こしている」というもので、「脊椎動物の祖先で2回のゲノム重複が起きた」というものではない。つまり2R仮説を引用する場合にはこの論文だけを引用するのでは不十分。

もう一点気になったのは、ゲノムのDNA量の差異の原因を全て直列重複に帰そうとしている点。これは現在では、直列重複が寄与している部分はごくわずかで、実際には転移因子が関わっている事が明らかである。従って転移因子の関与は大野以降に明らかになってきた事柄だということだ。

にしても情報が少ない時点での推論はいろんな想像が膨らんで楽しそう。情報が増えた今でもこういうわくわくするテーマがあるはずで、それを見つけるのは一生モノの仕事なのだろうと思う。

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