2011年10月28日金曜日

竜眼

こちらでは割と普通に街路樹にも見られるリュウガン(竜眼、Dimocarpus longan)を最近初めて買って食べてみました。ライチの小型版みたいな感じで味は少し薄めな印象。ライチ(Litchi chinensis)やランブータン(Nephelium lappaceum)と同じムクロジ科に属し、果実も似た感じです。
その上のムクロジ目までのぼると、ミカン科やウルシ科なども含むのでずいぶんと見た目も違ってきます。

2011年10月27日木曜日

DNA transposonがコピー数を増やす仕組み

一般にDNA transposonはcut-and-paste機構で転移します。すなわち、自身を切り出し、別の位置に挿入する。しかしこれだと決してコピー数は増えません。何らかの形でDNA transposonは自身の数を増やしているのですが、今のところ私はその機構を知りません。以下の論文ではその機構について何らかの示唆がされているようなのですが...

Drosophila P elements preferentially transpose to replication origins.
Spradling AC, Bellen HJ, Hoskins RA.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Sep 20;108(38):15948-53. Epub 2011 Sep 6.

今回紹介する論文では、その機構の一端を明らかにしています。P因子は非常に最近(数百年前)にキイロショウジョウバエに水平伝播したDNA transposonである。P因子はorigin recognition complexに結合し複製開始点となる配列を狙って転移していることが明らかになった。

ううむ、Abstractだけでは、なぜ増える事ができるのかわかりませんね。

2011年10月26日水曜日

d09077:R1-I-EN

BLAST検索をしていて発見しましたが、
Conserved Domain Databaseにd09077:R1-I-ENが追加されました。これはEEP (exonulcease/endonuclease/phosphatase) superfamilyに属するエンドヌクレアーゼですが、特にnon-LTR retrotransposonのR1 cladeとI cladeのものをまとめたものです。

NCBI CDD cd09077

他にも、L1 cladeとTx1 cladeのものをまとめた、
NCBI CDD cd09076
ができています.

2011年10月25日火曜日

延長された表現型

マイマイガの幼虫は夜の内に餌を食べ、昼間には敵から身を隠すために落ち葉の下や樹皮の内側に潜んでいるそうです。ところが、バキュロウイルスの1種に感染すると、木の頂上付近に上ったまま停止することが知られていました。このように寄生者によって行動が制御される現象は自然界にしばしば見られます。この行動制御を司る遺伝子が同定されたそうです。

この遺伝子はEGT(UDP-glycosyltransferase)という酵素をコードする遺伝子で、宿主の脱皮ホルモンを不活性化することで行動を制御している可能性があるそうです。

幼虫を操る“ゾンビウイルス”の遺伝子

原著論文はこちら↓
A Gene for an Extended Phenotype
Hoover K, Grove M, Gardner M, Hughes DP, McNeil J, Slavicek J.
Science. 2011 Sep 9;333(6048):1401.

2011年10月24日月曜日

ページビュー

このブログがついに小島生物学御研究室のアクセス数を抜いてしまいました.とはいっても、このブログのアクセスはページビューごとに集計しており、御研究室は訪問ごととなっているので、ブログの方が数が増えやすい状態なので実際のアクセスを反映している訳ではないのですが。

で、少しいい訳ですが、御研究室のサイト、自分のSafariから見ても文字化けします.文字コードをUnicode (UTF-8)に統一し、メタデータにその旨書いてあるつもりなのですが、どうやら自動で挿入される広告がSHIFT-JISで書かれているのと相性が悪いようです。私が普段使っているCaminoだと問題なく表示される(しかもファイルをチェックしている段階ではSafariでも文字化けしない)のでなかなか気づきませんでした。
対応を検討中ですが、しばらくの間は、文字化けするという方はエンコードをUnicode (UTF-8)に直してご覧ください。

2011年10月21日金曜日

Publish or Perishインストール

"Publish or Perish"を使うためいくつかソフトウェアをインストールした。覚え書き。
説明

<環境>
MacOSX v.10.6.8 (snow leopard最新版)
Xcode & Quartz X11インストール済み。

(1) MacPorts 2.0.3をインストール。Snow Leopard版のdmgを使用。パッケージなのでとても簡単。

(2) ターミナルから、
$ sudo port install wine

(2.5) 時間がかかるので同時進行で
Publish or Perish installer for Windowsをダウンロード。
ファイル(PopSetup.exe)を自分のホームディレクトリに移動。

(3) wineのインストールが終わったら、ターミナルで
$ wine PoPSetup.exe
汚いながらも読めるくらいの文字でインストールプログラムが立ち上がるので、適切に処理。

(4) 自分のホームディレクトリで、
$ wine /Users/${USER}/.wine/drive_c/Program\ Files/Harzing\'s\ Publish\ or\ Perish\ 3/Bin/PoP.exe &


2011年10月20日木曜日

デニソヴァ人の遺したもの

現代ユーラシア人やオセアニア人にはデニソヴァ人の持っていたMHC(HLA)アリールが受け継がれているらしい。HLA-B*73はデニソヴァ人と初期現代人との混血により現代人に伝えられた遺伝子型だそうです。

The Shaping of Modern Human Immune Systems by Multiregional Admixture with Archaic Humans
Abi-Rached L, Jobin MJ, Kulkarni S, McWhinnie A, Dalva K, Gragert L, Babrzadeh F, Gharizadeh B, Luo M, Plummer FA, Kimani J, Carrington M, Middleton D, Rajalingam R, Beksac M, Marsh SG, Maiers M, Guethlein LA, Tavoularis S, Little AM, Green RE, Norman PJ, Parham P.
Science. 2011 Oct 7;334(6052):89-94. Epub 2011 Aug 25.

2011年10月19日水曜日

Crypton

Mobile DNAから主著論文が出版されました。

Crypton transposons: identification of new diverse families and ancient domestication events
Kenji K Kojima and Jerzy Jurka
Mobile DNA 2011, 2:12 doi:10.1186/1759-8753-2-12
Published: 19 October 2011

最初にMolecular Biology and Evolutionに投稿したのが今年の1月末なので原稿を書き始めてからだと1年近くかかりました。その間に2度MBEにrejectされたりとかなり苦労した論文です。いずれもreviewerのコメントの過半は好意的なものだったので、editorの選び方の難しさを学習した論文投稿でした。MBEのインパクトファクターがあがって、編集部がかなり審査を厳しくしていたのが影響していたのは確かですが。
最終的には不本意ながら、Mobile DNAに掲載される事になりました。これは他の雑誌よりはこの分野の専門家が見る機会が多く、Genome Biology and Evolution, PLoS ONEやGeneに出すよりも、むしろ評価されやすいだろうと考えた結果です。

この論文は私の初めてのDNA transposonについての論文で、これまでretroelementの論文ばかりのところから分野を広げている事をアピールしたいとかなり気合いが入っています.無料なので是非ご一読ください。

2011年10月18日火曜日

Publish or Perish

控えめな日本人としては不本意ながら、とある事情で自分の研究成果を宣伝する必要がでてきました。ところが、私の所属は小研究所なのでWeb of Scienceが使えるような環境ではありません。Google Scholarは大変ありがたいツールですが、見やすくまとめるのはなかなか難しい。そこで、いろいろと検索して、Publish or Perishなるソフトウェアにたどり着きました。

Publish or Perish

Publish or Perishは、おおよそのイメージで言えば、Google ScholarのAdvanced searchを利用した結果を処理して見やすく出力してくれるソフトウェアです。まだ使い込んでないのでどの程度カスタマイズが効くのかどうかわかりませんが、なかなか使えそうな印象です。

2011年10月17日月曜日

Great Oxidation Event

生命史上の「大事件」23億年前に 酸素の濃度、急上昇

Osmium evidence for synchronicity between a rise in atmospheric oxygen and Palaeoproterozoic deglaciation
Sekine Y, Suzuki K, Senda R, Goto KT, Tajika E, Tada R, Goto K, Yamamoto S, Ohkouchi N, Ogawa NO, Maruoka T.
Nat Commun. 2011 Oct 11;2:502. doi: 10.1038/ncomms1507.

Abstractを読んだ限りでは、朝日新聞のニュースのように「時期を特定した」のがすごいのではなく、氷河期(glaciation)と酸素濃度上昇(Great Oxidation)の時期が一致することが確認されたのがすごい、ということのようです。
ちなみにこの氷河期は動物の生まれるより遙か昔、20-25億年前のもので、マンモスなどが栄えた最近の氷河期とは全く別物です。

2011年10月16日日曜日

有史以前の抗生物質耐性

Antibiotic resistance is ancient
D'Costa VM, King CE, Kalan L, Morar M, Sung WW, Schwarz C, Froese D, Zazula G, Calmels F, Debruyne R, Golding GB, Poinar HN, Wright GD.
Nature. 2011 Aug 31;477(7365):457-61. doi: 10.1038/nature10388.

3万年前の永久凍土層からDNAを抽出しメタゲノム解析を行ったところ、βラクタム系、テトラサイクリン、グリコペプチド系の抗生物質への耐性遺伝子が見つかった。バンコマイシン耐性遺伝子VanAは現代のものとほとんど同一だった。これらの結果は、抗生物質耐性が近代に生まれたものではなく、古代から自然界に存在していたことを示している。

2011年10月15日土曜日

シロイヌナズナに近縁な荒れ地植物のゲノム

The genome of the extremophile crucifer Thellungiella parvula.
Dassanayake M, Oh DH, Haas JS, Hernandez A, Hong H, Ali S, Yun DJ, Bressan RA, Zhu JK, Bohnert HJ, Cheeseman JM.
Nat Genet. 2011 Aug 7;43(9):913-8. doi: 10.1038/ng.889.

シロイヌナズナArabidopsis thalianaに近縁で、荒れ地で育つ植物Thellungiella parvulaのゲノムを次世代シーケンサーで解読した論文。この植物は別名Eutrema parvulum, Arabidopsis parvulaなどとも呼ばれています。

2011年10月14日金曜日

RNAi系を失った方が得なわけ

論文メモ。

Compatibility with Killer Explains the Rise of RNAi-Deficient Fungi
Drinnenberg IA, Fink GR, Bartel DP.
Science. 2011 Sep 16;333(6049):1592.

出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeはRdRPやDicer、Argonauteなどの遺伝子を欠失しており、RNAi系が動かない。これは生体防御系の不備を意味し、不利なはずである。しかし、この研究では、RNAi系を失った酵母は複数回出現しており、これらの多くがkiller virusというウイルスを持っていることを。このウイルスは細胞質中で自己複製するRNAとそれに依存して複製するM RNAの2つで構成される。このM RNAは近隣の酵母がM RNAを持っていない場合にはそれを殺す作用がある。一方でこれらの酵母にRNAi系の遺伝子を導入するとこのkiller virusが失われる。従って、RNAi系の欠失は、killer RNAの獲得により有利になる場合があり、これが複数のRNAi系を失った系統が維持されている理由と考えられる。

2011年10月13日木曜日

BASセミナー

10月8日に、UCSFで開催されたJapanese San Francisco Bay Area Seminar第10回年次合同セミナーに参加してきました。今回は口頭発表が多かったため〆切りが前倒しになり、最後まで参加を逡巡していた私はポスターで発表してきました。残念ながらポスター賞受賞は逃しました。

大学所属でないためなかなか日本人研究者と会う機会は多くありませんが、去年のBASセミナーや今年5月のCPPなどに参加していると次第に知り合いが増えてくるのがうれしいものです。

2011年10月12日水曜日

グリーンアノールのゲノム

グリーンアノール(Anolis carolinensis)のゲノムが解読されました。鳥類以外の爬虫類で初のゲノム報告です。

The genome of the green anole lizard and a comparative analysis with birds and mammals
Alföldi J, Di Palma F, Grabherr M, Williams C, Kong L, Mauceli E, Russell P, Lowe CB, Glor RE, Jaffe JD, Ray DA, Boissinot S, Shedlock AM, Botka C, Castoe TA, Colbourne JK, Fujita MK, Moreno RG, Ten Hallers BF, Haussler D, Heger A, Heiman D, Janes DE, Johnson J, de Jong PJ, Koriabine MY, Lara M, Novick PA, Organ CL, Peach SE, Poe S, Pollock DD, de Queiroz K, Sanger T, Searle S, Smith JD, Smith Z, Swofford R, Turner-Maier J, Wade J, Young S, Zadissa A, Edwards SV, Glenn TC, Schneider CJ, Losos JB, Lander ES, Breen M, Ponting CP, Lindblad-Toh K.
Nature. 2011 Aug 31;477(7366):587-91. doi: 10.1038/nature10390.

論文中では、アノールのLINEは5グループ(L1, L2, CR1, RTE, R4)とありますが、実際には、他にRTEXとVingiが存在します(いずれも報告済み)。原著は以下。

RTEX:
Non-LTR retrotransposons in tetrapods
Kojima K, Jurka J.
Repbase Reports 2010 Mar;10(3):488

Vingi:
Recent expansion of a new Ingi-related clade of Vingi non-LTR retrotransposons in hedgehogs
Kojima KK, Kapitonov VV, Jurka J.
Mol Biol Evol. 2011 Jan;28(1):17-20. Epub 2010 Aug 17.

2011年10月11日火曜日

軟体動物の系統樹

軟体動物はイカ、タコ、サザエなどを含む、無脊椎動物の大きなグループです。軟体動物は歴史的に8つの綱に分けられてきました。すなわち、
溝腹綱 Solenogastres:カセミミズなど。
尾腔綱 Caudofoveata:ケハダウミヒモなど。
多板綱 Polyplacophora:ヒザラガイ類。
単板綱 Monoplacophora:ネオピリナなど
二枚貝綱 Bivalvia:二枚貝。アサリ、ハマグリ、ホタテなど
掘足綱 Scaphopoda:ツノガイ類。
腹足綱 Gastropoda:巻き貝。アワビ、サザエ、ナメクジなど
頭足綱 Cephalopoda:イカ、タコ、オウムガイ、アンモナイトなど
の8綱です。

この論文では上記8綱の内、単板綱を除く7綱について系統解析を行っています。18系統のトランスクリプトームのデータと、公開されているEST、ゲノムのデータを合わせて、合計42種の軟体動物について系統関係を調べています。データは308遺伝子84614アミノ酸になりました。系統解析は最尤法とベイズ法。

結果をまとめると、
腹足綱と二枚貝綱が単系統:Pleistomollusca
腹足綱、二枚貝綱、掘足綱、頭足綱が単系統:Conchifera(貝殻類)
溝腹綱と尾腔綱が単系統:Aplacophora(無板類)
溝腹綱、尾腔綱、多板綱が単系統:Aculifera
が支持されました。

原著は以下。
Phylogenomics reveals deep molluscan relationships
Kocot KM, Cannon JT, Todt C, Citarella MR, Kohn AB, Meyer A, Santos SR, Schander C, Moroz LL, Lieb B, Halanych KM.
Nature. 2011 Sep 4;477(7365):452-6. doi: 10.1038/nature10382.

2011年10月10日月曜日

オポッサム

先日、車に轢かれて亡くなっている中型の哺乳類を発見しました。イヌのような顔つきですが、尻尾はネズミのよう。大きさもイヌかネコくらいなのでラットではありません。気になって調べてみるとキタオポッサムでした。しばしば交通事故の犠牲になっている姿がみられるそうです。
こんなところで有袋類が見られるとは思ってもみませんでしたが、北米では割と普通の光景のようです。

キタオポッサムDidelphis virginianaはアメリカ合衆国とカナダでは唯一の野生の有袋類です。英名Virginia opossumのとおり、東海岸にはもともと生息していましたが、西海岸のものは本来移入種だそうです。

でも実はこれが初めてではありませんでした。1年ほど前にも同じ場所でイヌのような哺乳類が死んでいました。そのときは隣家の飼い犬が車に轢かれたのだと思っていたのですが、今振り返ると、今回のものとよく似ています。おそらくオポッサムの通り道なのでしょう。

ゲノムが解読されたオポッサムはハイイロネズミオポッサム(Gray short-tailed opossum, Monodelphis domestica)。南米の小型のオポッサムですが、系統的には同科同亜科に属する、キタオポッサムと近縁のようです。

下は轢死体の写真ですので気をつけてください。



















2011年10月9日日曜日

Cascadeの構造

論文メモ。

Structures of the RNA-guided surveillance complex from a bacterial immune system
Wiedenheft B, Lander GC, Zhou K, Jore MM, Brouns SJ, van der Oost J, Doudna JA, Nogales E.
Nature. 2011 Sep 21;477(7365):486-9. doi: 10.1038/nature10402.

Cascadeの結晶構造をcryo-electron microscopyで決定した論文。Cascadeのタンパク質群は細長い構造をとり、それを取り巻くようにcrRNAが結合する。これによりタンパク質はcrRNAを保護しつつもcrRNAが標的RNAと対合できるようになっているらしい。

CRISPR-Cas systemの研究は飛躍的に進んできています。私がこれに絡んだ研究をしていたのは2007年前後なのでそれから5年弱でタンパク質の機能を含めて多くがわかってきました。しかし、CRISPR-Cas systemは非常に多様性の高い機構なのでまだまだ未知の部分が多く残っています。実際私の見つけた、CRISPR-Cas systemに含まれる逆転写酵素の機能は未知のままです。

2011年10月8日土曜日

フカヒレ禁止法

フカヒレ売買や所持禁止 米加州、サメ漁「残酷」

フカヒレ禁止法が通ってしまいました。これからはカリフォルニア州に住む限りはフカヒレを味わうことはできなくなるようです。
フカヒレ禁止運動を支援してきたモントレー水族館は大変自慢げなメールを会員に送ってきていました。

2011年10月7日金曜日

SINEとLTRの並行進化

論文メモ。

Convergent evolution of two mammalian neuronal enhancers by sequential exaptation of unrelated retroposons.
Franchini LF, López-Leal R, Nasif S, Beati P, Gelman DM, Low MJ, de Souza FJ, Rubinstein M.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Sep 13;108(37):15270-5. Epub 2011 Aug 29.

proopiomelanocortin gene (POMC)は海馬のニューロンで発現する遺伝子である。哺乳類のニューロン特異的なPOMCには2つの遠位エンハンサー(nPE1とnPE2)が関わっている。この内、nPE2については有胎盤類と有袋類に共通し、CORE-SINEに由来することが既に報告されている。今回、nPE1は有胎盤類特異的であり、LTRレトロトランスポゾンに由来することが明らかとなった。これはある種の並行進化と言える。

2011年10月6日木曜日

ES細胞のエンハンサーと転移因子

論文メモ。

Enhancers in embryonic stem cells are enriched for transposable elements and genetic variations associated with cancers OPEN ACCESS
Teng L, Firpi HA, Tan K.
Nucleic Acids Res. 2011 Sep 1;39(17):7371-9. Epub 2011 Jun 17.

ヒストン修飾の情報を基にエンハンサーを推測するプログラムを作成し、その予測結果を検証した論文。embryonic stem cell(ES細胞)では、T細胞やB細胞に比べて遙かに多くの転移因子由来配列が予測されたエンハンサーに含まれていることがわかった。ここでは転移因子由来配列としてBoreotheriaに共通に保存された配列を用いているので、それ以前に転移したMIR、L2などが多く見つかってきているがこれはデータセットによるバイアスの可能性が高い。著者らはこの結果をエピジェネティックな転写抑制がES細胞では解除されていることが転移因子由来配列がエンハンサーとして多く見つかる理由だと考えている。

2011年10月5日水曜日

1001系統のシロイヌナズナ

1001 Genome ProjectはシロイヌナズナArabidopsis thalianaの1001系統のゲノムを解読し、地理的多様性とそれぞれの環境への適応を調べるという壮大なプロジェクトです。その第1弾の論文がNature GeneticsとNatureから出版されました。

Whole-genome sequencing of multiple Arabidopsis thaliana populations
Cao J, Schneeberger K, Ossowski S, Günther T, Bender S, Fitz J, Koenig D, Lanz C, Stegle O, Lippert C, Wang X, Ott F, Müller J, Alonso-Blanco C, Borgwardt K, Schmid KJ, Weigel D.
Nat Genet. 2011 Aug 28;43(10):956-63. doi: 10.1038/ng.911.

この論文は8カ所から80系統のシロイヌナズナを報告しています。

Multiple reference genomes and transcriptomes for Arabidopsis thaliana OPEN ACCESS
Gan X, Stegle O, Behr J, Steffen JG, Drewe P, Hildebrand KL, Lyngsoe R, Schultheiss SJ, Osborne EJ, Sreedharan VT, Kahles A, Bohnert R, Jean G, Derwent P, Kersey P, Belfield EJ, Harberd NP, Kemen E, Toomajian C, Kover PX, Clark RM, Rätsch G, Mott R.
Nature. 2011 Aug 28;477(7365):419-23. doi: 10.1038/nature10414.

こちらは18の株のゲノムとトランスクリプトームを報告しています。3分の1のタンパク質コード配列はリファレンスゲノムを基準に考えると18の数のいずれかで"壊れている"ことがわかりました。しかし、別の遺伝子予測モデルを使うと実際には壊れていないと予想されました。すなわち、単一の株の配列を正常な遺伝子と考えるのは間違いで、実際には複数の異なる配列がそれぞれ正常な種内多型として存在しているということでしょう。

2011年10月3日月曜日

2011年ノーベル医学生理学賞

2011年のノーベル医学生理学賞は、免疫学に貢献のあった3氏(Bruce A. Beutler, Jules A. Hoffmann, Ralph M. Steinman)に贈られると発表されました。
The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2011
受賞理由は、
Bruce A. Beutler, Jules A. Hoffmannの両氏が
"for their discoveries concerning the activation of innate immunity"
「自然免疫の活性化についての発見」、
Ralph M. Steinman氏が
"for his discovery of the dendritic cell and its role in adaptive immunity"
「樹状細胞とその獲得免疫での働きの発見」
です。
自然免疫系については
大阪大学の審良静男氏もノーベル賞の候補に挙がっていましたが、残念ながら、同分野でのノーベル賞の発表で、授与の可能性はほとんどなくなりました。

ところが、発表10月3日の数日前9月30日に、受賞を発表されたSteinman氏が亡くなっていたそうです。
ノーベル賞受賞のスタインマン氏、死去していた
受賞は取り消されないという話ですが、さぞ無念なことでしょう。

京大の山中伸弥氏も有力候補とされていましたが、去年の賞が体外受精についてのものだったので、iPS細胞での再生医学とは多少分野が似通っています。今年はバランスを考えて見送られたのでしょう。

2011年10月2日日曜日

2011 Click Off

図書館で読んだAudubonかBay Natureの広告で見つけた写真コンテストです。
もう締め切られてしまっているけれど、10月23日に結果発表されるそうです。
2011 Click Off

これまでの受賞作もリンクから見ることができます。
2010 Click Off
2009 Click Off

2011年10月1日土曜日

TRE5-A

論文メモ。

Genetically tagged TRE5-A retrotransposons reveal high amplification rates and authentic target site preference in the Dictyostelium discoideum genome OPEN ACCESS
Siol O, Spaller T, Schiefner J, Winckler T.
Nucleic Acids Res. 2011 Aug;39(15):6608-19. Epub 2011 Apr 27.

細胞性粘菌のモデル生物Dictyostelium discoideumにあるnon-LTR retrotransposon TRE5-AはtRNAの5’側上流50塩基程度のところに挿入される特徴を持つ.これは遺伝子密度が高いDictyostelium discoideumにおいて遺伝子を壊さない生存戦略として有効なのだろう。この特異性はtranscription factor (TF) IIIC/IIIB との結合によって担われている。この論文では、TRE5-Aにblasticidin耐性遺伝子を組み込んだコンストラクトを作成し、TRE5-Aの転移を再現することに成功している。5’側のRNAは転移に必要でなく、3’側は必要というのは一般的なnon-LTR retrotransposonの特徴であり、これは再現された。また、リボソームRNA遺伝子をコードする染色体外DNAの遺伝子上流への挿入も確認された。