2011年8月29日月曜日

顎口類の初期進化

論文メモ。
Initial radiation of jaws demonstrated stability despite faunal and environmental change
Anderson PS, Friedman M, Brazeau MD, Rayfield EJ.
Nature. 2011 Jul 6;476(7359):206-9. doi: 10.1038/nature10207.

脊椎動物は顎口類(gnathostomes)と無顎類に分けられますが、現生の99%は顎口類です。顎口類はシルル紀(4.44〜4.16億年前)には既に誕生しており、デボン紀末(3.59億年前)には陸上に進出しています。この研究では無顎類が衰退し顎口類が取って代わるエムシアン(約4億年前)よりも以前に顎の形態的な異種性(disparity)はピークに達しており、顎の獲得により無顎類を駆逐した、あるいは無顎類が持っていたニッチに取って代わることで多様化を果たしたわけではないことを示しています。

この研究によると、これによると顎の異種性はデボン紀初期には最大になり、その後はほとんど変化しない状態が続きます。以下の顎口類の5つのグループについて個別に解析を行うと、

・Acanthodii, spiny sharks, 棘魚類(顎口類の初期分岐の1つ)
・Actinopterygii, ray-finned fishes, 条鰭類(ほとんどの硬骨魚を含むグループ)
・Chondrichthyes, cartilaginous fishes, 軟骨魚類(サメ、エイ、ギンザメなどを含むグループ)
・Placodermi, armoured stem gnathostomes, 板皮類(顎口類の初期分岐の1つ)
・Sarcopterygii, lobe-finned fishes, 肉鰭類(シーラカンス、肺魚、四足動物を含むグループ)
以上の相互関係は、
((((肉鰭類、条鰭類)、棘魚類)、軟骨魚類)、板皮類)が有力であるらしい。

デボン紀に異種性が大きかったのは肉鰭類と板皮類の2群で他のグループでは異種性に乏しいという結果が得られました。肉鰭類内部では、四足動物の顎の形態は祖先の魚と大きな変化は見られない一方で、肺魚類では著しい変化が認められました。板皮類はデボン紀を通じて優占的な地位を保ち、形態的にも異種性が大きく、デボン紀ー石炭紀の絶滅の直前まで異種性を保っていました。棘魚類はシルル紀には非常に異種的でしたが、デボン紀には異種性を減らしています。

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