2011年2月22日火曜日

コウモリとウツボカズラの共生

アメリカでは無料の新聞が広く普及しています。多くは地域密着型で市内の事件や政治について書かれています。私が気に入っているのは、Epoch Timesという華僑系の無料週刊新聞です。Epoch Timesは全世界的な新聞ですが私が入手出来るのは北カリフォルニア版。その文化面に面白い記事があったので今日はこれを紹介。

Bat Roosts in Pitcher Plant, Feeding It With Excrement

ウツボカズラは食虫植物の1グループで英名はpitcher plant。葉っぱが変形してピッチャー状になっており、中には虫を溶かす液体が入っています。これで虫を捕らえて貧栄養な環境で窒素などの栄養源を確保しています。

しかし、ボルネオ島で今回見つかったNepenthes rafflesiana elongataは虫を食べるのではなく、コウモリの"落とし物"を食べることで栄養源を確保しています。

このウツボカズラのピッチャーの蓋は小型のコウモリKerivoula hardwickii hardwickiiが逆さに停まるのにちょうど良い大きさで、コウモリは洞窟の代わりにこのピッチャーの中で雨露がしのぎ、昼を過ごします。コウモリは宿を提供してもらう代わりに排泄物をピッチャーの中に落としていきます。ウツボカズラは生きた虫を食べたいわけではなく、窒素などの栄養源が欲しいだけなので、排泄物で十分なのです。実際、コウモリが住んでいるウツボカズラの体はコウモリの住んでいないものよりも3割ほど窒素が多く含まれていたそうです。

ボルネオでは以前別のウツボカズラがツパイのトイレとして栄養源を確保していると報告されています。ただ、こちらは虫の少ない高地に生息するウツボカズラだったので、今回の低地での共生の発見は、ウツボカズラ類が虫に依存しないライフスタイルに進化する原動力がどのようなものだったのかを知る上で興味深いものです。

原著論文はこちら↓
A novel resource-service mutualism between bats and pitcher plants.
Grafe TU, Schöner CR, Kerth G, Junaidi A, Schöner MG.
Biol Lett. 2011 Jan 26. [Epub ahead of print]

ツパイの論文は無料で読めます。
Tree shrew lavatories: a novel nitrogen sequestration strategy in a tropical pitcher plant.
Clarke CM, Bauer U, Lee CC, Tuen AA, Rembold K, Moran JA.
Biol Lett. 2009 Oct 23;5(5):632-5. Epub 2009 Jun 10.

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