2010年12月22日水曜日

Bornavirus

もう1年近く前の論文になるが、
Endogenous non-retroviral RNA virus elements in mammalian genomes.
Horie M, Honda T, Suzuki Y, Kobayashi Y, Daito T, Oshida T, Ikuta K, Jern P, Gojobori T, Coffin JM, Tomonaga K.
Nature. 2010 Jan 7;463(7277):84-7.
を改めて読んだ。
確かに興味深い論文だが、JSTのプレスリリースを参照していていくつか誤りに気づいたのでコメントする。論文では正確に書かれているからプレスリリース作成時の誤りだろう。
この研究で見つかってきた物はRNAウイルスの断片(より厳密にはゲノムRNAを鋳型にして合成されたmRNAの逆転写産物の一部)がゲノム中に挿入されているものであって、全長が挿入されている内在性レトロウイルスとは性質が異なる。そして断片が挿入されている例は今回のBornavirusだけでなく、Caulimovirus、Flavirus、Dicistrovirus、Potyvirusなど既にいくつか報告されている。これらは昆虫と植物での報告である。だからプレスリリース中の
「レトロウイルス以外にも「ウイルス化石」がヒトのゲノム内に存在することを初めて明らかにした」
は正しいのだが、
「レトロウイルス以外のウイルスが生物のゲノムに内在化することは知られていなかった」
「レトロウイルス以外のウイルスが生物のゲノムに系統的に取り込まれ、内在化することを明らかにした初の報告」
等の文章は正しくない。

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