2013年1月18日金曜日

TcBusterとSPIN(ON)をヒト細胞で転移させる

トランスポゾンを使って有用な配列をゲノムに組み込む方法はいくつか実用化されています。また、トランスポゾンによって遺伝子を破壊したり、プロモーターを解析したりと言った事も行われています。これまでに実用化されているトランスポゾンとしては、Mariner/Tc1 superfamilyに属するSleeping Beauty、piggyBac superfamilyに属するpiggyBac、hAT superfamilyに属するTol2などがあります。以下の論文では別のhAT superfamilyの転移因子をヒト細胞中で転移させ、その特徴を解析しています。

A resurrected mammalian hAT transposable element and a closely related insect element are highly active in human cell culture
Li X, Ewis H, Hice RH, Malani N, Parker N, Zhou L, Feschotte C, Bushman FD, Atkinson PW, Craig NL.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Oct 22. [Epub ahead of print]
PMID: 23091042 [PubMed - as supplied by publisher] Free Article

hAT superfamilyに属する2種類のトランスポゾン、TcBusterとSPIN(ON)がヒト細胞で転移する事を確認した論文。SPINは哺乳類のいくつかの種で比較的最近転移していた事がわかっていたもので、その配列を基に再構成して転移可能にしている。どちらもトランスポゾンも転移酵素以外のタンパク質は転移に必須ではなく、今後のmutagenesisやゲノム工学に役立つ事が期待される。

さて、トランスポゾンを使ったmutagenesisやゲノム工学では、ゲノム中のどの位置、どういう配列に挿入されるかが問題となる。他に手法が確立されている3種類のトランスポゾンの内、Mariner/Tc1 superfamilyに属するSleeping BeautyはTA2塩基のtarget site duplication(TSD)を作り、piggyBac superfamilyに属するpiggyBacはTTAAの4塩基のTSDを作る事が知られている。Tol2もhAT superfamilyに属する。一般にhAT superfamilyに属するものは8塩基のTSDを作る。TcBusterとSPIN(ON)も8塩基のTSDを作り、その中央2塩基はTAである場合が非常に多い事が実験的に示された。従って、実用化されつつあるトランスポゾンは全て中央部がTAの配列を認識して挿入する事になる。これでは転移先に偏りがあるので、別の性質を持つトランスポゾンを実用化することもまだまだ大きな価値がありそうである。

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