小島生物学御研究室でも「80. 脊椎動物ゲノムの中のRNAウイルス化石」として紹介したように、ここ1、2年の間に、ゲノムに挿入されたRNAウイルス配列が次々に見つかってきました。以下の論文もその1つで、節足動物の核ゲノム中にラブドウイルスの配列が挿入されている事を示しています。ラブドウイルスは狂犬病ウイルスを含む一本鎖RNAウイルスの仲間です。
Fossil rhabdoviral sequences integrated into arthropod genomes: ontogeny, evolution and potential functionality.
Fort P, Albertini A, Van-Hua A, Berthomieu A, Roche S, Delsuc F, Pasteur N, Capy P, Gaudin Y, Weill M.
Mol Biol Evol. 2012 Jan;29(1):381-90. Epub 2011 Sep 13.
PMID: 21917725 [PubMed - in process]
著者らはラブドウイルスの配列が節足動物のゲノムにだけ挿入されている事を報告し、その配列の詳細を解析している。そのほとんどは、Aedes aegyptiとIxodes scapularisのゲノムから見つかり、一部の配列では負の淘汰圧が認められた。つまり、一部のラブドウイルス由来の配列は宿主の生存に有利に働いている可能性がある。
Aedes aegyptiは大量の転移因子を蓄積している事がわかっています。我々の仮説に従えば、このラブドウイルス由来の配列の挿入は集団サイズの縮小に伴って遺伝的浮動により蓄積された可能性があります。ただ、この論文のデータの場合には、逆転写酵素の活性が必須なので、レトロトランスポゾンの活性化に伴ってRNAウイルスの逆転写が頻繁に起こった可能性は否定できません。
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