2012年4月17日火曜日

毒をもって毒を制す:AID/APOBECは毒だった

今回は個人的に大好きなAravindのグループの研究を紹介します。彼らはタンパク質の配列比較のエキスパートで非常に遠縁の関係のタンパク質を見つけてきてその機能や進化を推定する研究に特徴があります。下の研究紹介のブログも面白いので時々読んでいます。
Research Highlights of the Aravind group


今回の論文はdeaminase-like foldというタンパク質グループの話です。deaminase-like foldは核酸やヌクレオチドの脱アミノ活性を持つタンパク質の構造で、 JAB domainなどのヌクレオチド代謝に関わるタンパク質を含むグループです。

Evolution of the deaminase fold and multiple origins of eukaryotic editing and mutagenic nucleic acid deaminases from bacterial toxin systems
Iyer LM, Zhang D, Rogozin IB, Aravind L.
Nucleic Acids Res. 2011 Dec;39(22):9473-97. Epub 2011 Sep 3.
PMID: 21890906 [PubMed - indexed for MEDLINE] Free PMC Article

著者らは精密な配列比較によってこのdeaminase-like foldを持つであろう多くのタンパク質を見つけました。新しく見つかってきたもののほとんどは遺伝子の並び等の解析からバクテリアのトキシン(毒)であろうと推測されました。トキシンは株間で阻害しあうために使われるもの、遠縁のバクテリアを阻害するものの2グループが見つかってきました。面白いのはトキシンがたびたび真核生物に取り込まれて、tRNAやmRNAの修飾に用いられていることが示唆されたことです。その中にはAID/APOBECも含まれています。AIDはimmunoglobulin遺伝子のhyper mutationに、APOBECはレトロウイルスやレトロトランスポゾンの転写産物に変異を加えてタンパク質が機能できないようにする経路で働いています。ある意味、APOBECもウイルスやトランスポゾンに対するトキシンだということですね。

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