2011年12月23日金曜日

KRAB−ZFタンパク質とレトロエレメントの抑制

脊椎動物のゲノム中には、zinc-finger(ZF)をタンデムに持つタンパク質が多数コードされている。しかもKRAB (Kruppel-associated box) domainをも含んでいるものが多い。これらKRAB-ZFPsはZFでDNAと、KRABでKAP1 (KRAB-associated protein 1。別名tripartite motif-containing protein 23, TRIM23)と結合する。 KAP1はヘテロクロマチン化を促すHP1やヒストンメチル化酵素ESET等を呼び込み、最終的にその領域の転写を抑制する。近年の研究で、レトロウイルスや内在性レトロウイルス、LTRレトロトランスポゾンの転写を抑制するのがKRAB−ZFタンパク質の機能の一つであることが示唆されている.

Coevolution of retroelements and tandem zinc finger genes.
Thomas JH, Schneider S.
Genome Res. 2011 Nov;21(11):1800-12. Epub 2011 Jul 22.

この研究では、LTRレトロトランスポゾンの数とKRAB−ZFタンパク質遺伝子の数との間に強い相関関係があることを明らかにしている。霊長類の解析では、新しいKRAB−ZFタンパク質遺伝子の誕生(遺伝子重複)と新しい内在性レトロウイルス(霊長類では転移可能なLTRレトロトランスポゾンは存在しない)の誕生との間に強い相関関係があること、重複した遺伝子は誕生後に急速にZFに変異を蓄積し、その後負の淘汰を受けること、が示された。ここから導かれるシナリオは、新しい内在性レトロウイルスが増殖することにより、これに対抗するためにKRAB−ZFタンパク質遺伝子が重複され新しい内在性レトロウイルスを抑制できるように進化する、というものである。

最近になって、転移因子を抑制する細胞の機構が明らかになって来ています。RNAiやエピジェネティクスを含むこれらの細胞内”免疫系”の研究は転移因子の研究をする我々にとっても興味深い話です。

0 件のコメント:

コメントを投稿