2011年12月26日月曜日

レトロウイルスの翻訳調節

多くのレトロウイルスでは、2つの必須タンパク質GagとPolは異なるORFにコードされており、translational frameshiftingあるいはreadthroughにより、Gag単体のタンパク質とGag-Pol融合タンパク質の2種類が翻訳される。この2種類のタンパク質の量比はウイルスの効率的な複製に重要な役割を持つ。

An equilibrium-dependent retroviral mRNA switch regulates translational recoding
Houck-Loomis B, Durney MA, Salguero C, Shankar N, Nagle JM, Goff SP, D'Souza VM.
Nature. 2011 Nov 27;480(7378):561-4. doi: 10.1038/nature10657.

この論文では、核磁気共鳴法によりmurine leukaemia virusの翻訳調節領域のRNAの構造を解析し、水素イオンの結合の有無によってreadthroughの起こるRNAと起こらないRNAの構造が異なっており、生体内のpHではその量比が6%程度と、ちょうどreadthroughの起こる割合と一致している事を明らかにしている。また、frameshiftingでも同様の機構が観察された。

私もかつて、レトロウイルスの親戚であるnon-LTR retrotransposonの翻訳調節を解析した事があります。その場合には、やはりRNAの二次構造も重要でしたが、それ以上に前側のORFの終止コドンと後ろ側のORFの開始コドンがオーバーラップしていることが重要でした。これは翻訳共役と呼ばれる現象で上記の2つの機構とは異なりますが、もしかするとnon-LTR retrotransposonでも同様にpHによりRNAの二次構造の量比が変化するのが重要なのかもしれません。

Eukaryotic translational coupling in UAAUG stop-start codons for the bicistronic RNA translation of non-LTR retrotransposon SART1
Kojima KK, Matsumoto T, and Fujiwara H.
Molecular and Cellular Biology, 2005; 25 (17): 7675-7686

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