次世代シーケンサーでヒトのゲノムを解読し、新規のL1やAluの挿入を報告する論文が続いています。今回はScienceにがん細胞特異的な挿入を解析した研究が報告されています。がん細胞の由来による違いと、低メチル化との関係は興味を惹かれます。
Landscape of Somatic Retrotransposition in Human Cancers
がん細胞(脾臓、前立腺、卵巣、グリア細胞の癌、多発性骨髄腫)の患者から癌細胞と血液細胞のゲノムをいわゆる次世代シーケンサーで解読したところ、194個の体細胞でのL1/Alu挿入が見つかった。これらは全て上皮細胞の癌(脾臓、前立腺、卵巣)で見つかり、他の癌では見つからなかった。確認のために一部を選んでPCRをすると、TSDや5’末端の欠失などの特徴がわかり、ほとんどの挿入がL1の転移機構によることが確認できた。
遺伝子のタンパク質コード領域に挿入されている例は一つも見つからなかったが、UTRやイントロンに挿入されている例は多数見られ、実際にそれらは転写量を変化させていた。遺伝子と同じ向きの挿入の場合には顕著に転写量の減少が見られるが、逆向きの場合には統計上有意なほどの転写の減少は見られなかった.挿入されている遺伝子には、癌抑制遺伝子や細胞間接着に関わる遺伝子が多く見られた。挿入によりこれらの遺伝子が壊れた細胞は癌化の際に有利なため選択的に増殖するのだろう。
L1の挿入はゲノムの低メチル化領域に偏っている。生殖細胞系列でのL1の挿入は、精子形成時に特異的に起こる低メチル化領域に、がん細胞での挿入は癌特異的に起こる低メチル化の領域に偏っている事が確認できた。
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