研究室の論文紹介より。
ピロリ菌は胃がんの原因となることが知られている細菌である。胃は酸性が強く他の細菌は生息していないと考えられてきたが、口腔細菌のStreptococcus mitisや乳酸菌Lactobacillus fermentumが生息していることがわかってきた。著者らはStreptococcus mitisとの共培養(直接接触はしないが膜を介して小分子は移動する環境)によりピロリ菌が螺旋状から球菌状に変化し、増殖できなくなることを明らかにした。が、培養は弱酸性条件。条件や解析にいろいろと難があり信頼性は低いか。
Streptococcus mitis Induces Conversion of Helicobacter pylori to Coccoid Cells during Co-Culture In Vitro
Khosravi Y, Dieye Y, Loke MF, Goh KL, Vadivelu J.
PLoS One. 2014 Nov 11;9(11):e112214. doi: 10.1371/journal.pone.0112214.
2015年3月20日金曜日
2015年3月12日木曜日
原核生物の新規免疫システムBREX
研究室の論文紹介で紹介した論文のまとめ。
BREX is a novel phage resistance system widespread in microbial genomes.
Goldfarb T, Sberro H, Weinstock E, Cohen O, Doron S, Charpak-Amikam Y, Afik S, Ofir G, Sorek R.
EMBO J. 2015 Jan 13;34(2):169-83. doi: 10.15252/embj.201489455. Epub 2014 Dec 1.
PMID: 25452498 [PubMed - indexed for MEDLINE]
知られていたPglシステムに似た遺伝子クラスターを発見し、BREX(bacteriophage exclusion) systemと命名した。解析したBREX systemはATPase, alkaline phosphatase, Lon-like protease, DNA methyltransferaseとRNA結合タンパク質をコードする。炭疽菌(Bacillus cereus H3081.97)の系を枯草菌(Bacillus subtilis BEST7003)に導入し、各種のファージに対する耐性を調べたところ、以下のような結果が得られた。
・多くのファージには10の5乗程度の抑制効果が見られた。
・一部のファージには効果がない。
・プラスミドに対しても弱いながらも抑制効果(10倍程度)がある。
・ファージの侵入は妨げない
・ファージの侵入した細胞を自殺させる(abortive infection)システムではない。
・BREXが効く場合には、ファージの複製増殖は起こらない。
・ファージDNAの切断は起こらない。
・BREXは宿主ゲノムを特定の配列(この場合はTAGGAG)でメチル化するが、ファージゲノムはメチル化しない。
さらにバイオインフォマティクスの結果からは、
・調べられた原核生物の内10%程度に存在する。(種単位であって株単位ではない)
・遺伝子組成により6グループに分けられる。
・ある種のグループは特定の生物群にしか見られない。
面白いのは遺伝子組成で、
・Lon proteaseはtype 2, 3, 5, 6には存在しない。type 2, 3, 5, 6では代わりにhelicaseがある。
・DNA methyltransferaseはtype 4には存在しないが、type 4には代わりにphosphoadenylyl-sulfate(PAPS) reductaseがある。PAPS reductaseはDNAのバックボーンを修飾するdnd systemの構成遺伝子にも見られる。
などの多様性が見られる。多様性はCRISPR-Cas systemほどではないが、作用機序との相関は興味深い。
おそらくは宿主のゲノムDNAを修飾し、外来の非修飾のDNAを認識して攻撃するのだろうが、制限修飾系とは異なり、DNAの切断は起こらず、もっと後のプロセスが阻害されるらしい。
BREX is a novel phage resistance system widespread in microbial genomes.
Goldfarb T, Sberro H, Weinstock E, Cohen O, Doron S, Charpak-Amikam Y, Afik S, Ofir G, Sorek R.
EMBO J. 2015 Jan 13;34(2):169-83. doi: 10.15252/embj.201489455. Epub 2014 Dec 1.
PMID: 25452498 [PubMed - indexed for MEDLINE]
知られていたPglシステムに似た遺伝子クラスターを発見し、BREX(bacteriophage exclusion) systemと命名した。解析したBREX systemはATPase, alkaline phosphatase, Lon-like protease, DNA methyltransferaseとRNA結合タンパク質をコードする。炭疽菌(Bacillus cereus H3081.97)の系を枯草菌(Bacillus subtilis BEST7003)に導入し、各種のファージに対する耐性を調べたところ、以下のような結果が得られた。
・多くのファージには10の5乗程度の抑制効果が見られた。
・一部のファージには効果がない。
・プラスミドに対しても弱いながらも抑制効果(10倍程度)がある。
・ファージの侵入は妨げない
・ファージの侵入した細胞を自殺させる(abortive infection)システムではない。
・BREXが効く場合には、ファージの複製増殖は起こらない。
・ファージDNAの切断は起こらない。
・BREXは宿主ゲノムを特定の配列(この場合はTAGGAG)でメチル化するが、ファージゲノムはメチル化しない。
さらにバイオインフォマティクスの結果からは、
・調べられた原核生物の内10%程度に存在する。(種単位であって株単位ではない)
・遺伝子組成により6グループに分けられる。
・ある種のグループは特定の生物群にしか見られない。
面白いのは遺伝子組成で、
・Lon proteaseはtype 2, 3, 5, 6には存在しない。type 2, 3, 5, 6では代わりにhelicaseがある。
・DNA methyltransferaseはtype 4には存在しないが、type 4には代わりにphosphoadenylyl-sulfate(PAPS) reductaseがある。PAPS reductaseはDNAのバックボーンを修飾するdnd systemの構成遺伝子にも見られる。
などの多様性が見られる。多様性はCRISPR-Cas systemほどではないが、作用機序との相関は興味深い。
おそらくは宿主のゲノムDNAを修飾し、外来の非修飾のDNAを認識して攻撃するのだろうが、制限修飾系とは異なり、DNAの切断は起こらず、もっと後のプロセスが阻害されるらしい。
2015年2月18日水曜日
プロリン過剰環境での酸化耐性向上
研究室の論文紹介から。
Proline Metabolism Increases katG Expression and Oxidative Stress Resistance in Escherichia coli.
Zhang L, Alfano JR, Becker DF.
J Bacteriol. 2015 Feb 1;197(3):431-40. doi: 10.1128/JB.02282-14. Epub 2014 Nov 10.
PMID: 25384482 [PubMed - in process]
グラム陰性細菌においてプロリンからグルタミン酸への酸化変換はPutAにより触媒される。PutA変異株では酸化ストレスへの耐性が低下する。プロリンとPutA遺伝子がある場合には、過酸化水素の分解能が向上する。これはhydroperoxidase IをコードするkatG遺伝子の転写上昇を通して起こる。プロリン酸化分解は過酸化水素を生成するのでこの機能は適応として理解できる。
Proline Metabolism Increases katG Expression and Oxidative Stress Resistance in Escherichia coli.
Zhang L, Alfano JR, Becker DF.
J Bacteriol. 2015 Feb 1;197(3):431-40. doi: 10.1128/JB.02282-14. Epub 2014 Nov 10.
PMID: 25384482 [PubMed - in process]
グラム陰性細菌においてプロリンからグルタミン酸への酸化変換はPutAにより触媒される。PutA変異株では酸化ストレスへの耐性が低下する。プロリンとPutA遺伝子がある場合には、過酸化水素の分解能が向上する。これはhydroperoxidase IをコードするkatG遺伝子の転写上昇を通して起こる。プロリン酸化分解は過酸化水素を生成するのでこの機能は適応として理解できる。
2015年2月11日水曜日
Rich Roberts講演会
真核生物の分断構造を持つ遺伝子の発見(エクソンイントロン構造の発見)により1993年にノーベル医学生理学賞を受賞したRichard John Robertsが東京大学医科学研究所で講演をします。
「Bacterial Methylomes」
2 March 2015
11:00–12:30
Auditorium at The Institute of Medical Science, The University of Tokyo
「Bacterial Methylomes」
2 March 2015
11:00–12:30
Auditorium at The Institute of Medical Science, The University of Tokyo
2014年4月28日月曜日
Repbase Reports 14(3)
今年のRepbase Reports第3号が出版されました。この号では、ハキリアリ2種(Acromyrmex echinatior, Atta cephalotes、アカシュウカクアリPogonomyrmex barbatus)の転移因子を報告しています。また、テロメア反復配列に特異的に挿入されるレトロトランスポゾンのTRASとSARTをいくつかの節足動物から報告しています。
Repbase Reports Volume 14, Issue 3
Repbase ReportsはGIRIが発行している、真核生物の反復配列を報告するオンラインの科学雑誌です。配列、分類と簡単な特徴の報告だけですが、反復配列の一次情報源として論文でも引用されています。Repbase Reportsに掲載された配列は、反復配列データベースであるRepbase Updateに収録され、配布されます。学術研究者はユーザー登録することでどちらも無料で閲覧できます。
Repbase Reports Volume 14, Issue 3
Repbase ReportsはGIRIが発行している、真核生物の反復配列を報告するオンラインの科学雑誌です。配列、分類と簡単な特徴の報告だけですが、反復配列の一次情報源として論文でも引用されています。Repbase Reportsに掲載された配列は、反復配列データベースであるRepbase Updateに収録され、配布されます。学術研究者はユーザー登録することでどちらも無料で閲覧できます。
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